「インターネットの30年の歴史など、これから本格的に始まる『AI物語』の序章にすぎなかったのではないか。」

かつて「いかがわしい」と見られていたインターネットが巨大産業へ成長し、異端視されていた若者たちが社会の中心へ躍り出た30年。その激変の最前線に立ち続けた経営者が、検索、SNS、動画、通販、広告、文化、起業という「7つの激変」から歴史を振り返り、これから始まるAI時代へのヒントを提示する一冊があります。

本日紹介するのは、1974年生まれ、青山学院大学法学部在学中の1995年に電脳隊(後のP.I.M.)を設立して学生起業家となり、2000年にP.I.M.とヤフー株式会社との合併に伴ってヤフーへ入社、Yahoo!モバイル、Yahoo!ニュース、GYAO!などの主力サービスを牽引し、2018年に代表取締役社長CEO、2023年からLINEヤフー代表取締役会長を務め、2026年6月の退任後は「AIと起業」の分野で新たな挑戦を予定している川邊健太郎(かわべ・けんたろう)さんが著した、こちらの書籍です。

川邊健太郎『7つの激変:いかがわしい者たちが主役の「インターネット産業」30年史』(東洋経済新報社)

 

インターネットが一般社会へ広がり始めた1990年代半ば、その世界は決して現在のような巨大産業ではありませんでした。検索もSNSも動画配信もネット通販も、「本当にビジネスになるのか」と疑われていた時代があったのです。

その後の30年間で、私たちの情報収集、人間関係、娯楽、買い物、広告、働き方は大きく変わりました。著者自身も1995年に学生起業家としてインターネットの世界へ飛び込み、その変化を当事者として経験してきました。

本書が興味深いのは、単なる「インターネット懐古史」ではないところです。著者は、本格的なAI時代が始まろうとしている現在を、インターネット黎明期の「あの頃」と重ね合わせています。かつてインターネットを「いかがわしい」と感じたように、現在のAIにも未知への不安と巨大な可能性が同居している。だからこそインターネット30年の歴史を知ることが、これから起こるAI革命を考えるヒントになる、というのが本書を貫く問題意識です。

本書は以下の7部構成から成っています。

1.検索 ― 誰もカネになると思わなかった「検索」が、生成AIを生み出すまで

2.SNS ― 友達の昼飯を見るだけだった「SNS」が、私たちの可処分時間社会を支配するまで

3.動画 ― 無法地帯だった「動画プラットフォーム」が、新たな職業をつくり出すまで

4.通販 ― 割に合わないはずだった「ネット通販」が、生活インフラに変貌を遂げるまで

5.広告 ― センスと勘だよりだった「WEB広告」が、データと数学に取って代わるまで

6.文化 ― 世界一になり損ねたネット敗戦国の日本で、「世界一のユーザー」が生まれるまで

7.起業 ― いかがわしい若者たちが、「世界のあり方」を変えるようになるまで

 

本書の前半では、検索、SNS、動画という情報・コミュニケーションの激変について、以下のポイントを説明しています。

◆ 収益化が疑問視されていた検索は、インターネット産業の巨大市場へ成長した

◆ 検索技術とデータの蓄積は、その先にある生成AIの発展にもつながっていく

◆ SNSは友人同士の交流から、人々の「可処分時間」を奪い合う巨大産業へ変化した

◆ 動画プラットフォームは、混沌とした黎明期を経て新しいメディアへ成長した

◆ YouTuberなど、インターネット以前には存在しなかった新しい職業も生み出した

 

この本の中盤では、通販、広告、そして日本独自のネット文化について解説しています。主なポイントは次の通り。

◆ ネット通販は「割に合わない」と見られた時代から、生活に欠かせないインフラへ成長

◆ インターネットは、消費者の購買行動そのものを大きく変えた

◆ WEB広告は、経験や勘に依存する世界からデータと数学を駆使する産業へ進化

◆ 日本は世界的なネット企業を十分に育てられなかった一方、独自のユーザー文化を形成

◆ 技術そのものだけでなく、それを使う人々の行動変化が巨大市場をつくってきた

 

本書の後半では、「起業」とAI時代への示唆について考察・提言しています。主なポイントは以下の通りです。

◆ 新しい技術は、最初は怪しく「いかがわしい」ものとして見られやすい

◆ 既存の常識に縛られない若者や起業家が、新市場を切り拓いてきた

◆ 小さなサービスが、社会の仕組みそのものを変える可能性を持っている

◆ インターネット黎明期と現在のAI黎明期には、多くの共通点がある

◆ 過去30年を学ぶことが、これからのAI時代を考える手掛かりになる

 

本書を読んで最も興味深いのは、インターネット30年史を「過去の成功物語」ではなく、AI時代を考えるためのケーススタディとして描いていることです。

検索、SNS、動画、通販のいずれも、最初から将来の巨大市場が見えていたわけではありません。むしろ「そんなものが何の役に立つのか」と疑われたサービスが、人々の行動を変え、社会インフラになっていきました。

いま生成AIをめぐって起きている熱狂と混沌も、これと重なる部分があります。重要なのは、現在のAIサービスがそのまま残るかどうかではなく、AIによって仕事や生活、人間の行動がどう変わるかを見ることでしょう。

また、「いかがわしい者たち」というタイトルも象徴的です。大きな変化は、既存産業の中心からではなく、周辺にいる異端の人々から始まることがある。

これからAIによってどんな新しい産業や働き方が生まれるのか。その未来を考えるためにも、インターネット革命の30年を知っておく価値があります。インターネット30年史は、これから始まる「AI物語」を読み解くための予習でもあるのです。

AI時代のビジネスや働き方を考えたい人、インターネット産業の歴史を当事者の視点から知りたい人、そしてこれから新しい事業に挑戦したい人に、ぜひ読んでほしい一冊です。

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では、今日もハッピーな1日を!【4226日目】