『教養としての空き家』
「今、日本には『誰も住んでいない家』が900万戸ある。」― 住宅全体の7軒に1軒という空き家の増加は、もはや地方だけの問題ではありません。地方で家が余る一方、東京などの都市部では住宅価格や家賃が上昇する。この一見矛盾した現象を「住まい」という共通テーマから捉え、日本社会が抱える構造問題と解決への可能性を考える一冊があります。
本日紹介するのは、1983年茨城県生まれ、高校卒業後に大手電力会社で約10年間勤務した後、不動産業界へ転じ、投資用不動産販売などを経験、2019年に株式会社ネクスウィルを創業し、再建築不可物件や権利関係が複雑な「訳あり不動産」の再生・流通を手掛ける一方、空き家を個人間で売買できるオンラインプラットフォーム「空き家のURI・KAI」を立ち上げ、自治体や企業などとの連携による空き家問題解決に取り組んでいる丸岡智幸(まるおか・ともゆき)さんが著した、こちらの書籍です。
丸岡智幸『教養としての空き家』(ブックダム)
日本では、人口減少と高齢化が進む中で、空き家が急速に増えています。地方では人口が減り、商店がなくなり、学校が廃校になる地域も増えています。
その一方で、東京をはじめとする都市部には人や投資マネーが集中し、住宅価格や家賃が上昇しています。
つまり、「地方では家が余り、都市では家が足りない」という二つの問題が同時進行しているのです。著者は、この二つを別々の現象ではなく、日本の人口移動や住宅政策、経済構造から生まれているとしています。
本書は以下の7部構成から成っています。
1.空き家が映し出す社会の現実
2.「所有」へのこだわりが、日本を縛る
3.何もしない未来
4.「売りたくても売れない」不動産
5.空き家は、次の時代の資源になる
6.ステークホルダー連携による地域再生モデル
7.空き家は、こうして蘇る
本書の前半では、空き家が増え続ける日本社会の構造について、以下のポイントを説明しています。
◆ 日本の空き家は900万戸に達し、住宅全体のおよそ7軒に1軒を占めている
◆ 地方の空き家増加と都市部の住宅価格・家賃上昇は、表裏一体の問題である
◆ 背景には人口減少だけでなく、戦後から続く「新築至上主義」がある
◆ 不動産を「所有し続ける」ことへの意識が、空き家の流通を妨げる一因になっている
◆ 空き家を放置すれば、地域の生活基盤そのものが失われていく可能性がある
この本の中盤では、「売りたくても売れない」空き家の実態と、その活用について紹介・解説しています。主なポイントは次の通り。
◆ 再建築不可や共有持分など、一般市場では売却しにくい「訳あり不動産」が存在する
◆ 相続や複雑な権利関係が、空き家を長期間放置する原因になることがある
◆ 空き家対策は自治体だけでは、人員や専門知識などのリソースが不足しやすい
◆ 民間事業者にとっても採算を取りにくく、単純な市場原理だけでは解決が難しい
◆ 見方を変えれば、空き家は地域再生や新しい事業を生み出す「資源」になり得る
本書の後半では、空き家を再生し、地域の未来につなげる方法について考察・提言しています。主なポイントは以下の通りです。
◆ 空き家問題の解決には、自治体、企業、住民など複数の関係者の連携が必要になる
◆ 官民が役割を分担することで、地域に合った空き家再生の仕組みをつくることができる
◆ テクノロジーを活用すれば、従来流通しなかった物件にも買い手を見つける可能性
◆ 空き家は住宅だけでなく、店舗、交流拠点、事業など多様な用途へ再生できる
◆ 一つひとつの再生事例を積み重ねることが、地域全体の価値向上につながっていく
本書を読んで改めて感じるのは、空き家問題は「家」の問題ではなく、「人口」「地域」「経済」「相続」を含む日本社会全体の問題であるということです。
だからこそ、相続が発生してから慌てるのではなく、親が元気なうちから「実家を将来どうするのか」を家族で話し合っておくことが重要です。
もう一つ興味深いのが、地方の空き家と都市部の住宅高騰を一つの問題として捉える視点です。
つまり問題は、単純な「住宅の数」ではなく、人が住みたい場所と住宅が存在する場所のミスマッチでもあります。さらに本書は、空き家を「負債」だけではなく「資源」として捉え直します。
価格が安い空き家を再生し、移住者向け住宅、店舗、宿泊施設、地域コミュニティの拠点などに活用できれば、新しい人や仕事を地域へ呼び込むきっかけになります。
そのためには、所有者だけでなく、不動産会社、自治体、金融機関、地域住民などが協力する仕組みが必要でしょう。
空き家問題は、人口減少社会に入った日本が、「これからどこに住み、どんな地域を残していくのか」を問うテーマでもあります。
新しい家を建て続ける社会から、今ある住宅を上手に使い、必要な人へ循環させる社会へ。
「所有する」ことを中心にした住宅観から、「活用する」ことを中心にした住宅観へ転換する。
それが、空き家900万戸という巨大な社会課題を、新しい地域づくりの可能性へ変える第一歩になるのではないでしょうか。
親の実家を将来どうするか考えている人、不動産や相続に関心がある人、地方創生や地域ビジネスに携わる人、そして人口減少時代の日本がどんな「住む場所」をつくっていくべきかを考えたい人に、ぜひ読んでほしい一冊です。
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では、今日もハッピーな1日を!【4216日目】








