「死を見つめることは、生を考えること。」― 老いや死は、誰にとっても避けられないテーマです。しかし、わからないままにしておくほど、不安は大きくなります。本書は、現役看護師の視点から、老いのプロセス、介護、終末期医療、延命治療、死の迎え方までを具体的に解説し、「自分らしい最期」を考えるための一冊です。

本日紹介するのは、1987年神奈川県生まれ、2010年に東邦大学医学部看護学科を卒業後、同大学病院に勤務し、現在は都内の病院で看護師・保健師として働きながら、noteやSNSでも情報発信を続けている高島亜沙美さんが書き、2005年北海道大学卒業後、家庭医療、総合内科、緩和ケア、腫瘍内科を専門に研鑽を積み、現在は川崎市立井田病院腫瘍内科部長、一般社団法人プラスケア代表理事として、抗がん剤治療、緩和ケア、在宅診療に携わる西智弘さんが監修した、こちらの書籍です。

高島亜沙美 著・西智弘 監修『人生の終わり方を考えよう 現役看護師が伝える老いと死のプロセス』(KADOKAWA)

本書は、「死について考えること」を暗い話題として避けるのではなく、元気なうちから老いや死のプロセスを知り、どのような医療や介護を望むのかを考えておくことが、自分らしい人生につながると説いています。

 

本書は以下の11部構成から成っています。

1.老いていく、そのプロセスとは?

2.老いのプロセスを経て、起こりうること

3.介護保険の仕組みと実情

4.終末期医療と緩和ケア

5.死の事前準備と終活の話

6.延命治療とDNAR(積極的な延命治療を差し控える)の実情

7.死にゆくパターンと実際の経過

8.死の確認とエンゼルケア

9.死のケアと周辺の話

10.自分らしい最期を迎えるためのポイント4つ

11.正しい人生ではなく、自分らしい人生を

 

本書の前半では、老いのプロセスと、介護が必要になるまでに何が起こるのかについて、以下のポイントを中心に解説しています。

◆ 老化はある日突然始まるのではなく、身体機能や認知機能が少しずつ変化していくプロセスである

◆ 筋力、食欲、移動能力、認知機能などの低下が重なり、生活の中で少しずつ支援が必要になっていく

◆ 「できなくなったこと」だけを見るのではなく、残っている能力をどう活かして暮らすかが重要になる

◆ 介護保険制度は、要介護認定を受けた後の生活を支える重要な仕組みであり、早めに情報を知っておくことで選択肢が広がる

◆ 老いや介護について家族で話すことは難しいものの、元気なうちだからこそ本人の希望を確認しておく必要がある

 

この本の中盤では、終末期医療、緩和ケア、延命治療など、人生の最終段階で直面する重要な選択について解説されています。主なポイントは次の通り。

◆ 緩和ケアは「治療をあきらめた人のための医療」ではなく、痛みや苦しさ、不安を和らげながら生活の質を支える医療である

◆ 人生の最終段階では、どこまで積極的な治療を受けるのかを本人・家族・医療者で考える必要がある

◆ 延命治療にはさまざまな方法があり、それぞれ身体への負担や期待できる効果が異なる

◆ DNARについても言葉だけで判断せず、「どのような状況で、どの治療を望むのか」を具体的に話し合うことが大切である

◆ 元気なときから、自分が大切にしたい価値観や望む医療について家族と共有する「事前準備」が重要になる

 

本書の後半では、実際に人が死に向かうときに身体にどのような変化が起きるのか、そして自分らしい最期を迎えるために何が必要なのかが紹介されています。主なポイントは以下の通りです。

◆ 人が亡くなるまでにはいくつかの経過パターンがあり、病気や身体状態によって最期までの時間の流れは異なる

◆ 死が近づくにつれて食事量や水分量が減り、眠っている時間が増えるなど、身体には自然な変化が起こる

◆ 死後には医療者による確認やエンゼルケアが行われ、遺族が大切な人との別れを受け止める時間も重要になる

◆ 「どこで最期を迎えたいか」「誰と過ごしたいか」「どのような医療を望むか」を考えておくことが、自分らしい最期につながる

◆ 他人から見た「正しい人生」ではなく、自分自身が納得できる生き方と終わり方を選ぶことが何より大切である

 

本書で最も印象的なのは、「老いや死にも準備が必要」という考え方です。私たちは、旅行や仕事、住宅購入、老後資金については事前に計画を立てます。ところが、人生で必ず訪れる「死」については、縁起でもない、まだ早い、と考えて話題を避けがちです。

しかし、本人が意思表示できなくなってからでは、家族が「本人ならどうしてほしいと思うだろう」と悩みながら判断することになります。元気なうちに自分の希望を伝えておけば、家族の負担も軽くなります。

だからこそ、「正しい最期」を探すのではなく、「自分にとって納得できる最期」を考える必要があります。

また、本書では、死に向かう身体の変化についても具体的に説明されています。この知識は、本人だけでなく家族にとって非常に大切です。

そうした変化を「何かしてあげなければ」と焦るのではなく、自然なプロセスとして理解していれば、本人に必要以上の負担をかけず、穏やかに寄り添うことができます。

私は、人生100年時代の「幸せな人生設計」を考えるうえで、人生の前半や中盤だけでなく、最終章をどう生きるかも重要なテーマだと考えています。

健康寿命を延ばす努力はもちろん大切です。しかし、どれだけ健康に気をつけても、老いと死を完全に避けることはできません。

だからこそ、「元気で長生きすること」と同時に、「弱ってきたときにどう暮らすか」「最期をどう迎えたいか」を考えておくことが必要なのでしょう。大切なのは、家族と話す習慣をつくり、自分の価値観を少しずつ共有しておくことです。

本書のタイトル通り、「人生の終わり方を考える」ことは、「今をどう生きるか」を考えることにつながります。

老後や介護について考え始めた方、親の最期について準備したい方、延命治療や緩和ケアについて知りたい方、そして人生の最終章まで自分らしく生きたいすべての方に、ぜひ読んでほしい一冊です。

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では、今日もハッピーな1日を!【4180日目】