「“いつか円高に戻る” という経験則は、もう通用しない。」と述べている本があります。円安が進み、インフレがじわじわと生活を直撃する中で、私たちは何を拠り所に資産を守ればいいのか。

本日紹介するのは、日本銀行、JPモルガン・チェース銀行為替市場分析の第一線に立ち、現在はふくおかフィナンシャルグループのチーフ・ストラテジストを務める佐々木融さんの一冊です。

佐々木融『インフレ・円安・バラマキ・国富流出』(日経プレミアシリーズ)

為替のプロが、円安の「構造的な原因」を解き明かし、今後起こり得るシナリオと個人の防衛策を提示する、こちらのの経済分析書です。

本書は、以下の6部構成から成っています。

1.お金、投資、マーケットのそもそも

2.なぜ円はこれほどまでに弱くなったのか

3.日本政府の借金はなにが問題なのか

4.マイナスの実質金利から抜け出せない円

5.止められない日本からの資金流出

6.失われた30年はなぜ失われたのか——取り戻すために必要なこと

 

本書の前半では、「円安の本質」が丁寧に整理されます。著者は、「円という紙切れが信用を失いかねない瀬戸際にある」と警鐘を鳴らします。過去の円高局面を前提にした楽観論は危ういと指摘します。主なポイントは以下の通りです。

◆ 為替は金利差だけでは説明できない

◆ 実質金利のマイナス構造

◆ 円の信用力の低下

◆ 「いつか戻る」という思い込み

◆ 構造変化という視点の重要性

 

この本の中盤では、政府債務と金融政策に踏み込みます。とくに印象的なのは、「日本からの資金流出は止められない」という分析。国内投資の魅力が低下すれば、資金はより高いリターンを求めて海外へ向かうのは自然な流れです。主なポイントは次の通り。

◆ 政府債務の持続可能性

◆ マイナス実質金利の長期化

◆ 金融緩和の副作用

◆ バラマキ政策の帰結

◆ 国内資金の海外流出

 

本書の後半では、「失われた30年」をどう捉えるかが語られます。私自身、人口動態やGDP予測などマクロ分析を続けていますが、本書は為替という切り口から日本経済の “地殻変動” を浮き彫りにします。主なポイントは以下の通りです。

◆ 生産性停滞の構造

◆ 人口減少と経済規模

◆ 政策の優先順位

◆ 信認回復への道筋

◆ 個人が取るべき防衛策

 

印象的なのは、著者が決して感情的に煽らないこと。冷静なデータ分析の積み重ねの先に、「備えるべきだ」というメッセージがある。

では、個人はどうするべきか。資産を円建てだけに置かない。実質金利を意識する。インフレを前提に設計する。円安は一時的な現象ではなく、構造的な問題かもしれない。その前提で、資産戦略を再設計する必要があります。

経済・為替・資産防衛を本気で考えたい方に、ぜひ読んでいただきたい一冊です。

マクロ経済や資産形成戦略については、YouTubeチャンネル「大杉潤のYouTubeビジネススクール」でも発信しています。ぜひチャンネル登録もお願いします。

では、今日もハッピーな1日を!【4017日目】