「体が弱ってきた」「この先が不安だ」――そう感じるのは、決して特別なことではありません。人生100年時代を迎えたいま、多くの人が心の奥で抱えている問いに、静かに寄り添ってくれる一冊があります。
本日紹介するのは、1971年大阪府生まれ。京都府立医科大学卒業後、病院勤務を経て、2015年に京都市内で在宅療養支援診療所「おかやま在宅クリニック」を開設。約30年にわたり、在宅医療・緩和医療・認知症医療の現場で、多くのシニアとその家族に向き合ってきた医師であり、2020年には僧侶資格も取得。現在は「医師」と「僧侶」という二つの立場から、生と死、老いと向き合うメッセージを発信し続けている岡山容子さんが書いた、こちらの書籍です。
岡山容子『老後を心おだやかに生きる』(明日香出版社)
この本は、「老後をどう備えるか」ではなく、「老いをどう受けとめ、どう心おだやかに生きるか」に焦点を当てた、読むほどに呼吸が深くなるような一冊です。
本書は以下の8部構成から成っています。
1.体が弱ってきたなと感じたら
2.体の弱りを受け入れる
3.体の弱りについて
4.自分らしく生きる
5.心おだやかに生きる
6.僧侶として生きる
7.大切な人との別れ
8.いのちと向き合い生きる
本書の前半では、「体の弱り」をどう受け止めるかが、医師としての視点から語られます。
不安を否定せず、現実から目を背けず、それでも必要以上に怖がらない――そんな姿勢が印象的です。主なポイントは以下の通りです。
◆「弱ること」は失敗でも敗北でもない
◆ 不安を感じる自分を、まず否定しない
◆ できなくなることより、今できていることを見る
◆ 老いは突然ではなく、ゆっくり進むプロセス
◆ 医療は「治す」だけでなく「支える」もの
この本の中盤では、「自分らしく生きる」「心おだやかに生きる」ための考え方が、僧侶としての視点も交えながら語られます。ここが本書の核心部分で、主なポイントは次の通り。
◆ 他人と比べないことが、心を守る第一歩
◆「こうあるべき」を手放すと、呼吸が楽になる
◆ 役に立たなくても、人は存在していい
◆ 日常の小さな喜びに気づく力を取り戻す
◆ 心の穏やかさは、環境よりも受け取り方で決まる
本書の後半では、「別れ」や「死」といった避けがたいテーマに、真正面から向き合います。ただし、決して重苦しくはありません。静かで、あたたかい言葉が続きます。主なポイントは以下の通りです。
◆ 別れは悲しみだけでなく、感謝を育てる時間
◆ 看取りは「最期」ではなく「最終章」
◆ 死を考えることは、生を大切にすること
◆ いのちは、思い出と共に周囲に残っていく
◆ 最後まで「自分の人生」を生き切るという視点
老後を「不安な期間」としてではなく、「これまでの人生を静かに味わい直す時間」として捉え直す。本書は、そんな視点の転換を、そっと差し出してくれます。
医療の現場で数え切れない人生に向き合ってきたからこそ書ける言葉、そして僧侶として「いのち」を見つめてきたからこそ滲み出る静けさ。老後に不安を感じている方だけでなく、親の老いと向き合っている世代にも、ぜひ手に取ってほしい一冊です。
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では、今日もハッピーな1日を!【3942日目】