「きょうだいは他人の始まり」か?――そんな問いに向き合い、日本の“介護と相続”の深刻な現実を浮き彫りにするルポがあります。
本日紹介するのは、1952年京都市生まれ、大阪市立大学法学部卒業後、高校社会科教員として教壇に立ちつつ推理小説作家としても活躍、91年に第11回横溝正史賞を受賞、2008年に親の介護を機に教職を退職、その後自らの経験と当事者インタビューに基づく現場取材で社会的発言を続ける姉小路祐さんが著した、こちらの書籍です。
姉小路祐『介護と相続、これでもめる! 不公平・逃げ得を防ぐには』(光文社新書)
この本は、高校教員と推理小説作家いう「二刀流」の生活を続けながら、親の介護とその後の相続争いを「自分ごと」として体験した著者が、その実態を赤裸々に綴りつつ、現代日本の社会構造に潜む介護・相続トラブルの構図と「転ばぬ先の杖」としての備えを提示する実践的ガイドです。
本書は以下の9部構成から成っています。
1.「きょうだいは他人の始まり」か?
2.相続争いの現実
3.親孝行をした者が受けた現実 ― 実例を踏まえて
4.法律や裁判所はどう考えているか ― 親孝行はボランティアなのか
5.調停と裁判の現実
6.社会問題としての介護
7.もし自分が要介護者の立場となったなら
8.介護からの逃げ得を防ぐために
9.立法・司法への提言
この本の冒頭では、「まえがき」として、「二刀流の生活」「親の介護問題」「相続トラブル」の三重苦に直面した著者ご自身が語られています。特に、「介護と相続の現場は、法律や社会の常識では片づけられない泥沼だ」と強い問題意識を示しています。
本書の前半では、1~4部を通じて、「相続争いの現実」と「法律や裁判所の視点」を丁寧に解説しています。以下のポイントが示唆に富んでいます。
◆ きょうだい間の関係性が「他人化」していく構造
◆ 親孝行した人ほど、予期せぬ代償を払う複雑な事態
◆「ありがとうでは済まされない」のが相続トラブル
◆ 法制度は「親孝行」をボランティア扱いせざるを得ない現実
◆ 裁判官は「形式的平等」による相続を結論する傾向が強い
中盤の5~7部では、「調停や裁判の過酷な現実」と、「要介護者/家族」としての立場の変化について実体験を交えて詳述されます。主なポイントは次の通りです。
◆ 裁判は書面主義で進む
◆ 介護のマンパワー不足と介護難民の増加
◆ 親思いの子供に報いるのは遺言書
◆ 介護の過程で失われる尊厳と家族間の溝
◆ “要介護者としてのリスク”を想像しておくことの必要性
後半の8~9部では、制度・立法・司法に対する提言が展開され、著者が強く訴えるのは、「このままでは、介護と相続トラブルは増え続ける」「逃げ得を防ぎ、備える仕組みと教育が急務だ」という点です。主なポイントは以下の通り。
◆ 介護からの逃げ得を防ぐ介護と費用の記録
◆ 兄弟とのやり取りはメールで残す
◆ 係争が長引いても相続税申告は忘れずに
◆「家族の介護から逃げた者は相続人になれないことがある」という欠落事項の追加を
本書の締めくくりとして、姉小路さんは「立法・司法は現場の声に遅れている。被介護者も介護者も相続に関わるすべての人が“どうすべきか”を知る必要がある」と述べています。
あなたも本書を通じて、「介護と相続、これでもめる!」現実を知り、家族に起こり得る問題への備えと知恵を、今のうちに身につけてみませんか?
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では、今日もハッピーな1日を!【3756日目】