「公的年金と私的年金の新たな役割分担のあり方として、就労延長(Work longer)、私的年金等(Private pensions)、公的年金(Public pensions)の三者による継投で備える『WPPモデル』を提唱しました。」と述べている本があります。
本日紹介するのは、1973年北海道生まれ、明治大学政治経済学部卒業後、厚生年金基金連合会(現・企業年金連合会)入職、約10年にわたり記録管理・数理・資産運用等の業務に従事、りそな銀行等を経て、第一生命入社、日本年金学会副代表幹事、埼玉学園大学経済経営学部非常勤講師、第一生命経済研究所主席研究員および社会保障審議会臨時委員(企業年金・個人年金部会)を兼任する谷内陽一さんが書いた、こちらの書籍です。
谷内陽一『WPP シン・年金受給戦略』(中央経済社)
この本は、WPPモデルを個人の老後生活設計にどう活用するかを解説するとともに、そのために必要な基礎知識である、公的年金・私的年金等の受取方法および税制などの「出口戦略」に焦点を当てて解説している書です。
本書は以下の6部構成から成っています。
1.就労・私的年金・公的年金の継投策「WPP」とは何か~理論編
2.公的年金・私的年金のキホンの「キ」~年金制度・受け取り方・税制を知ろう
3.シン・就労延長Plan~失われた「野生」を取り戻す!
4.シン・公的年金の受給Plan~「繰り下げ受給」で終身給付の厚みを増す
5.シン・私的年金等の受給Plan~「年金」か「一時金」か
6.就労・私的年金・公的年金の継投策「WPP」とは何か~実践編
この本の冒頭で著者は、「人生100年時代という、いつ終わるか分からない試合に万全の状態で臨むためには、エースや4番打者のみに頼るのではなく、ベンチ入りしているすべての選手(制度)を総動員するという発想の転換が求められます。」と述べています。
本書の前半では、「就労・私的年金・公的年金の継投策「WPP」とは何か~理論編」について、以下のポイントを説明しています。
◆ 老後に不安を感じる理由は、①誰も経験したことがない、②メディアや専門家は悪いニュースしか取り上げない、③年金をめぐる社会・経済環境が大きく変わったの3点
◆ 老後生活は完投型から「WPP(継投型)」へ
◆ 先発(スターター): 就労延長(Work longer)
◆ 中継ぎ(セットアップ): 私的年金等(Private pensions)
◆ 抑え(クローザー): 公的年金(Public pensions)
◆ WPP(継投型)モデルは老後生活を盤石にする4つの効果がある
◆ 効果➀: 就労延長で老後収入の増加
◆ 効果②: 公的年金の終身給付
◆ 効果③: 私的年金等で自助努力の目標が明確に
◆ 効果④: 柔軟かつ多種多様な「継投」が可能
◆ WPPモデルの課題は、①働き口と年齢の壁、②投資や資産運用、③公的年金の信頼性、④手元資金を減らす「合理的判断」
◆ 老後生活も野球と同様、完投型から継投型(WPP)へ
◆「老後2000万円問題」の数字は唯一絶対の基準とは言えない
◆ 勤労高齢者世帯(2人以上の世帯)の家計収支はどの年代でも黒字
この本の中盤では、「公的年金・私的年金のキホンのキ~年金制度・受け取り方・税制を知ろう」および「シン・就労延長Plan~失われた野生を取り戻す!」について考察しています。主なポイントは次の通りです。
◆ 公的年金は社会保険という「保険」
◆ 企業年金は「給与・退職金」が形を変えたもの
◆ 個人年金は自助努力で備える「貯蓄」
◆ 私的年金等には、税制優遇措置あり
◆「受け取り方」によって変わる年金の税制
◆ 働くことは「野生を取り戻す」ことで、資産運用よりも確実な収入源
◆「働くこと」は老後の家計収支を劇的に改善する
◆ 働く高齢者は実際に増えている
◆ 高齢者の働き方はさまざまで、それぞれメリット・デメリットあり
本書の後半では、「シン・公的年金の受給Plan~ 繰り下げ受給で終身給付の厚みを増す」「シン・私的年金等の受給Plan~ 年金か一時金か」および「就労・私的年金・公的年金の継投策WPPとは何か~実践編」について解説しています。主なポイントは以下の通り。
◆ 公的年金は頼りにされている
◆ 公的年金を増額する最後の一手は「繰り下げ受給」
◆ 繰り下げ受給の名目額における総受給額逆転時期は、11年11カ月後
◆ 繰り下げ受給の総受給額逆転時期は手取りで見るとさらに1~2年後にシフト
◆ 繰り下げて後悔するのは「あの世」、繰り上げて後悔するのは「この世」
◆ 私的年金等は千差万別、受け取り方法を併せて確認する
◆ WPPプランでは、さまざまな「継投」バリエーションがある
◆ WPPの継投では、複数の中継ぎを同時に投入できる
◆ WPPモデルは効果絶大!
本書のテーマである「WPPモデル」は、私の老後資金づくりの基本戦略になっている考え方で、拙著『定年ひとり起業』および『定年ひとり起業マネー編』(ともに自由国民社)でも紹介しています。現在の高齢化が加速する日本社会において、極めて効果的な老後資金における考え方だと心から共感しています。
この本の締めくくりとして著者は、「WPPモデルを知ることで、老後生活への備えが『何ともならない』ではなく『何とかなりそう』とポジティブに捉えることが可能になります。」と述べています。
あなたも本書を読んで、WPPモデルを理解し、老後資金を考える柱に据えて、準備をしていきませんか。
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では、今日もハッピーな1日を!【3003日目】