「アルツハイマー型認知症の多くは、年単位で緩やかに進行する。検査や治療に取りかかるのが遅れても致し方ないと考える人もいるが、僕について言えば、致し方ないでは済まされない。」と述べて、医師である著者や家族と認知症になった母親との23年間の苦闘を記した本があります。
本日紹介するのは、1963年東京都台東区生まれ、秋田大学医学部、東京大学大学院医学系研究科を修了、米国ハーバード大学専任講師等を歴任、現役医師として医業に従事し、テレビ朝日系『ドクターX ~外科医・大門未知子~』の医療監修を行うなど、種々のメディアや講演等で幅広く活躍している森田豊さんが書いた、こちらの書籍です。
森田豊『医者の僕が認知症の母と過ごす23年間のこと』(自由国民社)
この本は、母親がどのように認知症を発症し、医師である著者や家族がどう対処し向き合ってきたかを詳述した、23年におよぶ一認知症患者とその家族の記録です。
本書は以下の8部構成から成っています。
1.それは振り込め詐欺から始まった
2.忘れる、怒る、無頓着になる。我が家を襲った認知症という嵐
3.検査は絶対、「いたしません!」
4.なぜ、しっかり者で社交的な母は認知症になったのか
5.母、「人」によってよみがえる
6.僕なりに考える、認知症の予防と対策
7.医師として考えること、息子として思うこと
8.たとえ血のつながった母親じゃなくても
この本の冒頭で著者は、「医師としての経験や知識、母のケースから僕なりに得た認知症に関する知見をもとに、認知症の予防や改善に役立ちそうな内容を、できるだけ盛り込むように努力した。」と述べています。
本書の前半では、「それは振り込め詐欺から始まった」「忘れる、怒る、無頓着になる。我が家を襲った認知症という嵐」および「検査は絶対、いたしません!」について、以下のポイントを紹介・説明しています。
◆ 振り込め詐欺に遭っても、騙されたと理解できない母
◆ 口が痛い、胸が痛い、忘れる、だらしない格好へと母が変化
◆ 出かけない、外食しない、何度もバナナを買う事件
◆ 介護のキーパーソンである姉をサポートできず
◆ 認知症の検査を徹底的に拒む
◆ 認知症は、病識がない、命の危険がない
◆「医者である前に息子」という意識が検査を遅らせた
◆ 医師の力量は「不安を抱える患者をいかに説得し、いかに医療というレールにうまく乗せるか」ということに懸かっている
◆ 認知症もインフォームドコンセントが大切
この本の中盤では、「なぜ、しっかり者で社交的な母は認知症になったのか」および「母、人によってよみがえる」について、著者の経験を紹介・解説しています。主なポイントは次の通りです。
◆「人生は100%努力!」という母の教育哲学
◆ 念願だった息子の渡米が認知症の引き金に
◆ ショートステイをきっかけに介護施設への入所を検討
◆ 大事なのは対人接触と適度なストレス
本書の後半では、「僕なりに考える、認知症の予防と対策」「医師として考えること、息子として思うこと」および「たとえ血のつながった母親じゃなくても」について考察しています。主なポイントは以下の通り。
◆ 認知症の一歩手前の「認知機能障害」(MCI)で食い止める
◆ 認知症には遺伝より生活習慣が影響する
◆ セカンドオピニオンを積極的に求めてみる
◆ 認知症検査を制度化する
◆「つながり」や趣味、好きなことを見つける
◆ 怒りのトリガーをなくす
◆ 認知症によって、思考に代わって感性が活発になる可能性も
◆ 認知症になっても個性は残る
◆ 死について考えてみる
◆ タブー視できない「安楽死」という選択
◆ 介護につきまとうお金と不安
◆ 認知症になって分からなくなる前に、「自分の命の終わり方」を考える
この本の締めくくりとして著者は、「世の中にある数えきれない病気の中で、認知症は異色な病のように思う。」「認知症になると病識がなくなり、自分が異常ではないと考えるようになる。」と述べています。
あなたも本書を読んで、家族と自分のために、「認知症への備え」について学び、考えてみませんか。
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では、今日もハッピーな1日を!【2848日目】