書評ブログ

『60歳からのマンション学』

「誰もが迎える老後、誰もが必要な住まい。ここを通過しなければ、安心できる老後を迎えることはできない。」と述べて、人と建物の「二つの老い」に立ち向かう様々な事例を挙げて、「事例からわかること」を解説している本があります。

 

 

本日紹介するのは、マンショントレンド評論家日下部理絵さんが書いた、こちらの書籍です。

 

日下部理絵『60歳からのマンション学』(講談社+α新書)

 

 

この本は、人生の終焉に向けて、所有しているマンションとどう向き合うのが正解なのか、マンションはいつまで住めるのか、維持費はいくらかかるのか、そもそもマンションはいったい誰のものなのか、について、実際さまざまな人々の老後で起こった事例から正解を読み説いている書です。

 

 

本書は以下の8つの事例から構成されています。

 

1.一人暮らしになって分譲マンションから賃貸へ

2.夫婦浸りになり、駅近マンションに買い替え

3.あわや負動産。バリアフリーマンションへの引っ越し

4.買い替えよりもフルリノベーションを選択

 

5.終の棲家として買ったはずの住居で思わぬトラブル

6.空き駐車場問題に理事長として奮闘

7.戸建てを売りタワマンを購入したものの・・・

8.大規模修繕のお金がない!?

 

 

この本の冒頭で著者は、「土地神話が崩壊した現在、かつての住宅すごろくの途中である分譲マンションを『終の棲家にしたい』という永住志向が高まっている。また、戸建てから分譲マンションに買い替える人も多い。」と述べています。

 

 

本書の前半では、「一人暮らしになって分譲マンションから賃貸へ」「夫婦浸りになり、駅近マンションに買い替え」およびあわや負動産。バリアフリーマンションへの引っ越し」という事例について、著者自らの買い替え体験も交えて、以下の教訓になるポイントを解説しています。

 

◆ ペット飼育は、生活音(騒音)、違法駐車・駐輪に次いで、「マンション3大トラブル」

◆ マンション管理規約の制定・変更は、総会の特別決議で承認が必要(3/4以上の賛成)

◆ ホームステージングした空室の方が売れやすい

◆ UR賃貸は高齢者の賃貸審査が通りやすい

 

◆ 大規模修繕は1回目より2回目、2回目より3回目の方が費用がかかる

◆ 中古マンションの価格は築15年までの下落が大きく、築30年で下げ止まる

◆ マンション買い替えを考えるなら駅から徒歩7分以内は必須、5分以内が理想

◆ 長期修繕計画作成ガイドラインでは12~15年に1度の周期

◆ 買い替えは資金に余裕があれば「買い先行」がいい、「売り先行」は計画を慎重に

 

◆ エレベーターがないマンションは「負動産」になりやすい

◆ 将来はバリアフリーのニーズが出てくる

◆ 住宅ローン減税の条件「50m2以上」の条件は登記簿上なので注意

◆ マンション空き部屋問題は深刻

 

 

この本の中盤では、「買い替えよりもフルリノベーションを選択」「終の棲家として買ったはずの住居で思わぬトラブル」および空き駐車場問題に理事長として奮闘」の3事例について、概要と留意点を説明しています。主なポイントは次の通り。

 

◆ リフォームは元の状態に戻す機能回復

◆ リノベーションはスケルトンリフォームとも言い、新築状態より価値を高める

◆ 14階建は「二重天井・二重床」で戻り変更も問題ないが、15階建は「直床」で厳しい

◆ リフォームで所得控除が受けられる場合がある

 

◆ 長期化しやすい騒音トラブル

◆ 抵当権の抹消登記は自分で行ってもいい

◆ 60歳以上対象のリバースモーゲージは慎重に

◆ 売却したマンションを賃貸で借りるリースバック

 

◆ 車離れと空き駐車場問題

◆ バイク置き場不足の問題

◆ ゲリラ豪雨対策の必要性

◆ マンションのインターネット接続問題

 

 

本書の後半では、「戸建てを売りタワマンを購入したものの・・・」および大規模修繕のお金がない!?」の事例について考察しています。主なポイントは以下の通りです。

 

◆ 日本初のタワマンは1976年に建設された地上21階建ての「与野ハウス」

◆ タワマンのメリットはゴミ出しがいつでもできる、公開空地や眺望の良さ

◆ タワマンのデメリットはエレベーターの待ち時間、オール電化の不便さ(停電や制限)

◆ タワマンの大規模修繕は困難、住民の合意形成が難しい

 

◆ 修繕積立金不足の赤字マンションに注意

◆ 修繕一時金が一戸当たり450万円の例も

◆ 築40年超の借金マンションもある

◆ 大規模修繕は回数が増えるほど費用がかかる

 

 

この本の締めくくりとして著者は、事例に書ききれなかった「マンションを終の棲家にする時の正解」について考察しています。たいへん興味深い内容で、自らの「終の棲家」選びに重ね合わせて読みました。参考になるポイントは以下の通り。

 

◆ UR分譲マンションを貸し出してUR賃貸マンションへ移る方法もある

◆ 駅近、スーパーなど生活利便施設、複数のバス路線

◆ 二重天井・二重床、内廊下、生活音がしない気密性高い部屋

◆ 買い替えや相続など出口を考えた購入

◆ 終の棲家に求める条件は3つ程度に絞る

 

 

本書は、60代になって「終の棲家」としてマンションを考えている人にはぜひお薦めの必読書です。私自身がその対象で、新刊の拙著『定年ひとり起業マネー編』(自由国民社)の第4章で取り上げた内容と共通するポイントも多く、強く共感しました。

 

 

なお、拙著の第4章コラムには著者の日下部理絵さんのインタビュー記事も掲載されています。併せてお読みいただければ、さらに理解が深まります。

 

 

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では、今日もハッピーな1日を!【2745日目】