書評ブログ

『AERA(アエラ) 2014年12/8号 特集:自分の市場価値を知る』

雑誌 『AERA』 は、朝日新聞社が週刊で発行する若者向けメディアで、その時々の時代の世相や世論をリードし、世の中の潮流を作り出していく伝統がある。

もともと 『朝日ジャーナル』 が前身で、学生運動が盛んだった時代には若者の考え方に大きな影響を与えていた。TBSキャスターだった故・筑紫哲也氏が編集長を務めていたことでも知られる。

時代の変化に対応するように 『AERA』 に衣替えしてからも、多くの若者から支持されている。本号は、「あと20年働くためのキャリアの教科書」 というサブ・タイトルが付いていて、キャリア形成がテーマだ。

2008年のリーマンショック以降、大学生の就職状況は厳しい環境が続き、「ブラック企業」 による新入社員の退職や、非正規社員の急増など、若者の 「働き方」 は大きな社会問題になっている。

そうした中で、2014年はアベノミクスによる円安、株価上昇、大手企業の業績回復に伴って、若者の就職環境が大きく変化した転換期だ。

2015年卒業の大学生からは、就職先をある程度、選択できる状況が到来しつつある。そうした中で本書は、極めてタイムリーに発行された。特集の構成は以下の通りだ。

1.あと20年働くために、自分の市場価値を高める (50歳前後5名の職務経歴書を誌上診断)
2.45歳行員に 「黄昏研修」
3.ぶら下がらずに70歳まで働く
4.ハケン第一世代女子の不安と根拠なき自信
5.動悸・ほてりに重責ストレス、部下にイラッ
6.ダブルメジャーで生涯現役
7.40代の今こそスタート地点

本書は、平均寿命の伸びや年金財政の不安から70歳まで働く時代と言われる変化の中で、40歳以降のキャリアを作っていくのか、というテーマに向き合った特集だ。

多くの企業で、役職定年制により50歳前後での年収ダウン、さらに60歳定年再雇用制度で、さらに年収大幅ダウンの人事・賃金制度を導入している。

役員になる一握りのエリートを除いて、多くの中高年サラリーマンは、50歳と60歳という2つの節目を迎えて大幅な生活設計の変更を余儀なくされている。

本書の事例は、どのようにしてそうした年収ダウンを回避し、自らキャリアを切り拓いていくか、について大いに参考になる。とくに上記1の職務経歴書の誌上診断はリアルな実例で、自分に近い人の事例は身につまされる。

上記6および7は、今後のビジネスパーソンの働き方、生き方の指針を示す、ひとつのモデルになる、と私は受け止め、感銘を受けた。

「自分が主役の人生」 をめざしていく全ての人々にとって、本雑誌はまさに 「今後20年働くためのキャリアの教科書」 と言っていいだろう。ぜひ、一読を薦めたい。