書評ブログ

岩崎夏海『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』(ダイヤモンド社)

P.F.ドラッカー経営学の父と呼ばれ、その代表作『マネジメント』はぜひ読んでいただきたい名著だが、これは難解だ。そこで、まずは入門書として本書にてドラッカー理論のエッセンスを理解してから古典に挑戦してほしいと考えて採り上げた。

 

本書は発売間もなくベストセラーとなって一世を風靡したので、題名を聞いたことがある人は多いだろう。いわゆる 『もしドラ』 だ。しかし、中味を読んだことがないという人も、これまた多い。ドラッカーの『マネジメント』は難解で近寄り難いが、『もしドラ』は軽すぎてマンガのようでイヤだという思いが強いからだ。

 

そういう人には、まず本書を読んでみよと薦めたい。岩崎氏はなかなかのアイデアマンで、女子高校生の野球部マネジャーがドラッカー理論に基づいて、万年予選敗退の弱小の高校野球チームを甲子園へと導くストーリーだが、上手くドラッカー『マネジメント』のエッセンスを散りばめている。

 

普通ならまず読むことのなかった普通の主婦やサラリーマンに、ドラッカーの『マネジメント』を知らしめた岩崎氏の功績は大きい。どんなに優れた古典でも人に読まれることなく埋もれていては、その価値も半減してしまう。

 

中には本書から、ドラッカーの『マネジメント[エッセンシャル版]』の読解に進んだ人も多いという。経営幹部を目指すビジネスパーソンとしても、まずは本書から入ることは有効だと思う。

 

ドラッカーの経営理論で最初に出てくるのが、「事業とは、顧客の創造である。」という大原則だ。顧客に新しい価値を提供し続けない限り、企業には存在価値がない。社会的な存在として企業が成長し続けるためには、つねに変化し続ける顧客ニーズに対応していくことが不可欠なのだ。

 

セブンイレブン(セブン&アイ・ホールディングス)の鈴木敏文会長も、ユニクロ (ファースト・リテイリング)の柳井正社長兼会長も、ドラッカーの説く「顧客創造」をいつも念頭に置いて事業を展開している。

 

経営学の神髄に近づくキッカケとして、まずは本書を読まれたい。