コリン・ジョイス氏は、1970年イギリス生まれで、オクスフォード大学で古代史と近代史を専攻して、『ニューズウィーク日本版』 の記者になった。
その後、英紙 『デイリーテレグラフ』 東京特派員を経てフリーのジャーナリストとなり、現在はイギリスに在住。日本には記者として14年間、居住した経験を持ち、本書は英国人記者から見た 「ニッポン社会」 のレポートだ。
日本を礼賛するわけでも批判するわけでもない。本書は、ありのままの 「ニッポン社会」 の姿を、絶妙なバランスとユーモアをもって鮮やかに描写している。
ジョイス氏は、イギリスでは日本に関する情報は極めて少なく、皆バラバラな知識をいくつか持っているだけという状態だ。回転寿司、退屈な政治家、利口なロボット、山で元気にスキーをするお年寄りなどだ。「エキゾチックな国」 という印象だ。
あるオーストラリア人作家は、日本を 「不可知の国」 と呼んだが、ジョイス氏の見方によれば、日本は理解できないわけではなく、理解するのに他の国より時間がかかり、且つ、探していた答えが予期していたものと違うことが多い、ということだ。
本書は以下の17テーマのレポートから成っていて、2006年に初版が発行されてからロングセラーを続けている。今もまったく古びたところがなく、読み継がれている名著だ。
1.プールに日本社会を見た
2.日本語、恐るるに足らず
3.イライラ、しくしく、ずんぐりむっくり
4.サムライ・サラリーマンなんていなかった
5.日本以外では 「決して」 見られない光景
6.英国紳士とジャパニーズ・ジェントルマン
7.日本人はすぐれた発明家だ
8.日本の 「失われなかった」 十年
9.日本人になりそうだ
10.イギリス人をからかおう
11.わが町、東京を弁護する
12.イギリスと日本は似ている?!
13.イギリスに持ち帰るべきお土産
14.イギリス人が読みたがる日本のニュース
15.日本社会の 「和」 を乱せますか?
16.鰻の漬物、アリマス
17.ぼくの架空の後任者への手紙
18.著者あとがき
19.訳者あとがき
イギリスなど欧州から見たら、日本は極東の端の遠い国であり、日本に対してあまりに貧弱なイメージしかイギリス人は持っていない。著者は、にほんで暮らしてみて、そのことに驚くと同時に、母国の人々にユーモアを交えて日本を伝えて楽しんでいるようだ。
「作家」 と 「サッカー」 の発音を区別することが最も難しいとか、「おニュー」 という和製英語(?)が声を出して笑うほど可笑しいなど、日本人の感覚からしたら思いもかけない感想が、ジョイスのレポートからは出てきて興味深い。
まさに、日本人自身が気づかない 「ニッポン社会」 入門になっていて面白い。 『ローマ人の物語』 の著者でベストセラー作家の塩野七生さんも絶賛する本書を、ぜひ多くの日本人に読んでもらいたい。
国際的な視野で見た時に、日本社会はどのような特徴を持ち、世界からどう見られているのか、新しい発見があるだろう。心から本書を薦めたい。