「絵を描くということが、すべてのクリエイティブ(創造)の源になっている」と提唱している本があります。
本日紹介するのは、学習院大学経済学部を卒業後、リクルートに入社し、マーケティング、営業を経て、映画、音楽の制作および出版事業を経験、その後音楽配信事業やコンテンツ開発事業などを行う、増村岳史さんが書いた、こちらの書籍です。
増村岳史『ビジネスの限界はアートで超えろ!』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
この本は、直感やセンスとロジックが融合した「アート・シンキング」の重要性を述べている書です。
本書は以下の7部構成から成っています。
1.ビジネスとアートの意外なつながり
2.アートの位置づけーその意味と役割
3.アート・デザイン・クリエイティビティ
4.アートのベースにはロジックがある
5.アートに見るイノベーションの要素
6.アートシンキング
7.実践!デッサンで思考をアップデート
この本の冒頭で著者は、ここ最近、MBA(経営学修士)以上にMFA(美術学修士:Master of Fine Arts)ホルダーが注目されつつある、と述べています。
不景気になってもモノだけはあふれ続ける世の中で、魅力的な商品を生み出せるか、商品を買いたくさせられるかには、デザイン性・アート性が鍵となる、ということです。
英国のロイヤルカレッジオブアート(RCA)が、世界で唯一、MFAを授与できる美術系大学院大学で、世界のエリートが学びに行っているそうです。
この後、本書ではアートがどうしてビジネスや経営に重要なのか、具体的な事例や考え方が示されていて参考になります。私がとくに感銘を受けたことを以下に紹介します。
◆ データビジュアリゼーション(膨大なデータの可視化)にはデッサンの力が重要
◆ デッサンを描き上げるコツは「俯瞰」と「主観」、この2つの力がデータの可視化に大きく寄与
◆ マネジメントは「クラフト」(経験)、「アート」(直観)、「サイエンス」(分析)の3つの融合によるもの
◆ ビジネスの出発点は、真っ白なキャンバスに作品を制作していくプロセスに近い
◆ アートを学ぶことで、経営者としての新たな知覚と気づきを手に入れる
「クラフト」「アート」「サイエンス」の3つの融合と説いているのは、経営学者・ミンツバーグですが、こちらの書籍で提唱しています。
また、経営とアートの関係について、経営学者のピーター・ドラッカーが日本画に魅了され、蒐集していた事実も併せて考えると、次の共通項がある、と著者は言います。
1.新しい価値の創造
2.調和とバランス
3.時代を読み取る
とくに近年、ロジカルシンキングのみでは天井にぶつかってしまい、新たな価値創造ができなくなってしまっているそうです。
次にこの本では、縦軸に「問題提起・価値の創造」と「課題解決」を、横軸に「ロジック」と「感性」をとって、アート、サイエンス、テクノロジー、デザインをそれぞれの役割に応じて、4つの象限に分けています。分類は以下の通り。
1.テクノロジー:ロジックで課題解決
2.サイエンス:ロジックで問題提起を行い、新たな価値を創造
3.デザイン:感性で課題解決
4.アート:感性で問題提起を行い、新たな価値を創造
そして、私たちの思考は、「表層的な思考」と「深層的な思考」に分かれますが、前者は短期的な課題や目標を達成するためのもので、KPIが代表的な指標です。
一方、後者の「深層的な思考」は、長期的な目標達成やビジョン実現のためのもので、例えば人生100年時代の30年後の自分の人生設計をする、などのことを指します。
著者の増村さんが主宰している「アート・アンド・ロジック」講座は、「右脳と左脳のバランスを活かした全体的な思考能力」と「新しいものを発想していく能力」そして「物事を俯瞰してとらえ、調和のとれた思考能力」を高めることを目指した講座だそうです。
本書の後半では、アート、デザイン、クリエイティビティの関係や、アートシンキング、デザインで思考をアップデートする実践などが書かれています。
興味のある方はぜひ、この本を手に取ってお読みください。
もう1冊、著者が紹介しているこちらの書籍も、アートの力を知るうえで興味深いので、併せてお薦めします。
また先日、本ブログでも紹介した、経営コンサルタント・山口周さんのこちらの書籍もお読みいただくとさらに理解が深まります。
ビジネスが伸びずに、行き詰ってる経営者や経営幹部の方に、上記の2冊の本も併せて、本書をお薦めします。
あなたも本書を読んで、ビジネスの限界はアートで超えることができることを学んでみませんか。
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では、今日もハッピーな1日を!