カルロス・ゴーンのもとでV字回復を果たした日産自動車のダイバーシティを活かすコーチングや人財開発について書かれた本があります。
本日紹介するのは、早稲田大学政治経済学部を卒業し、日産自動車に入社、人事部門に配属されて欧州日産ジェネラルマネージャー、日産人財開発センター株式会社社長などを歴任し、現在は株式会社バンテック副社長の西澤正昭さんが書いた、こちらの書籍です。
西澤正昭『コーチングが組織(ダイバーシティー)を活かす』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
この本は、2000年度から「リバイバルプラン」というカルロス・ゴーン社長が陣頭指揮を執った三カ年計画やその後の「日産180(ワンエイティ)」、「日産バリューアップ」という中期計画によって蘇った日産自動車のマネジメントや人財育成、とくにダイバーシティ(多様性)組織におけるコーチングの実践、その後の人財開発戦略の展望について述べた書です。
本書は以下の5部構成から成っています。
1.日産の改革
2.日産のダイバーシティとリーダーシップ
3.日産の人財開発戦略
4.私のコーチング体験
5.ラーニングカンパニーを目指して
この本の冒頭で著者は、日産流マネジメントや人財開発戦略は、「リバイバルプラン」や「日産180」といった中期計画が遂行される中で築いてきたものだ、と解説しています。
そして、カルロス・ゴーンによる日産流マネジメントを理解する「4つのファクター」を以下の通り紹介しています。
1.クロス・ファンクション
2.三輪マトリクス組織
3.ヘルシー・コンフリクト
4.トランスペアレンシー
日産の管理職はもともとコミュニケーションが苦手という弱点があったが、カルロス・ゴーンが着任した時に、当時の日産自動車の状況を診断し、次の5つのウィークポイントを指摘しました。
◆ 利益追求の不徹底
◆ 顧客指向性の不足
◆ 機能・地域・職位横断型業務の不足
◆ 危機意識の欠如
◆ 全社員が共有したビジョンや中長期計画の欠如
これは、英語ではすべて「lack of ~」という形で表現され、これを打破するために、若手の精鋭から成るクロス・ファンクショナル・チーム(CFT)という組織を立ち上げました。
そして、利害対立を歓迎すべきものとしてポジティブに受け止め、「ヘルシーコンフリクト」として、お互いの利害について、両立できるような解決策を見い出せないかを追求しました。
さらに、明確な危機意識を持って、経営会議での意思決定が、カスケードダウン・ミーティング(滝のように、組織の上から下に情報を流す、という意味)を行って、実行されるようにしています。
ゴーンは、ことあるごとにトランスペアレンシーを強調し、経営としての意思決定をきちんと伝えることを求めました。
そうした日産の改革の中で「何が変わったのか、ひと言で言え」と問われたら、「ダイバーシティと答える」と著者は述べています。
日産のダイバーシティという組織の中で、コミュニケーションをとるための努力が重要だと著者は言います。
そこでリーダーとして求められるのは、次の3つであると、カルロス・ゴーンは述べています。
◆ ストラテジー(戦略)を立てること(ビジョンに則ったもの)
◆ それを誰にでも分かるようにシンプルに伝えること
◆ その戦略を実行するために、人をアサインして組織をつくり、そのメンバーをモチベートしながら最大のアウトプットを出すこと
また日産では、エグゼクティブに求められるリーダーシップ・コンピテンシーを定め、ゴーンは以下の7つがマネジメント・プロセスで重要だと述べています。
◆ 戦略的方向性の設定
◆ ビジョンの売り込み
◆ 影響力のあるコミュニケーション
◆ 変革のリーダーシップ
◆ 異文化対人関係能力
◆ コーチングと指導
◆ 権原委譲
この後、本書の中盤では、上位性(上司に進言する力)と通意性(部下に伝える力)が他社に比べて低いと診断された日産の管理職の弱点をどう克服してきたかが書かれています。
とくに、コーチング研修導入の背景や、実際に実施してきた評価を記していて参考になります。
さらにこの本の最後では、「日産ウェイ」について解説しています。コアメッセージは、「すべては一人ひとりの意欲から始まる」です。
そして、GEのクロトンビルやIBMの研修所に負けない「日産ラーニングセンター・マネジメント・インスティテュート」が2005年4月、箱根・仙石原にオープンしました。
これが2002年から始まった日産の人財開発戦略の総仕上げになるもの、ということです。
日産流マネジメントや人材開発戦略、とくにダイバーシティの中でのコーチングの有効性について、実際のリアルな経験に基づいたノウハウや手法が分かる本として、ぜひお薦めしたい一冊です。
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では、今日もハッピーな1日を