「現在800万戸の空き家が15年後には2100万戸を超え、3戸に1戸が空き家になる」と予測し、警鐘を鳴らしている書があります。
本日紹介するのは、東洋大学教授の野澤千絵さんが書いた、こちらの新刊書籍です。
野澤千絵『老いる家 崩れる街 住宅過剰社会の末路』(講談社現代新書)
この本は、人口減少社会なのに「住宅過剰社会」という不思議な国である日本の、将来世代が背負うことになる課題について、分析・予測し提言をしている書です。
「住宅過剰社会」とは、世帯数を大幅に超えた住宅がすでにあり、空き家が右肩上がりに増えているにもかかわらず、将来世代への深刻な影響を見過ごし、居住地を焼き畑的に広げながら、住宅を大量に作り続ける社会のことです。
今から45年後の2060年には、日本の人口は8700万人と、ピークだった2010年の1億2800万人の約7割にまで減少します。
また日本の世帯総数は、5245万世帯ですが、2013年度の住宅総数は6063万戸と、住宅ストックではすでに16%も過剰なのです。
このまま住宅が作られ続け、人口が減少していくと、空き家総数は2013年度の820万戸から、10年後に1400万戸(空き家率21%)、20年後(2033年)には2150万戸(空き家率30.2%)にもなると予測されています。
そうした中でも現在、新築住宅が野放図に作られ続けており、居住地の拡大が止まらないことに、本書では深刻な危機感を訴えています。
本書は以下の4部構成からなっています。
1.人口減少社会でも止まらぬ住宅の建築
2.「老いる」住宅と住環境
3.住宅の立地を誘導できない都市計画・住宅政策
4.住宅過剰社会から脱却するための7つの方策
本書の冒頭で著者は、都心部や湾岸エリアにつくり続けられる超高層マンションの悲哀について指摘しています。
東京湾岸エリアに乱立する超高層マンションは、眺望の陣取り合戦が行われ、小学校や住宅関連施設の整備が追い付かずに、居住地としての機能が不十分なままになっています。
さらに東京オリンピックを見込んだ投資による所有者も多いことから、将来の住宅としての資産価値維持がどうなるのか不安な面もあり、すでに値崩れも始まっている、と言われています。
次に本書では、「住宅の終末期問題」を取り上げていて、団塊世代の死亡が急増する20年後の2035年には、住民の寿命が尽きた後の「老いた住宅」をどうするかが大きな問題になる、と指摘しています。
さらにこの本の後半では、新築住宅の立地を誘導できない都市計画・住宅政策の問題を分析しています。
非線引区域の問題や市街化調整区域での規制緩和によって、新築住宅の開発が無計画に進められる「住宅のバラ建ち」が止まらない状況になっています。
こうした「スプロール現象」という流れは今、多くの自治体で問題とされ、ようやく「コンパクトシティ」へと舵を切り始めています。
以上のような危機的な状況に対して、本書の最後に著者は以下の7つの方策を提言しています。
1.自分たちのまちへの無関心・無意識をやめる
2.住宅総量と居住地面積をこれ以上増やさない
3.「それなりの」暮らしが成り立つ「まちのまとまり」をつくる
4.住宅の立地誘導のための実効性ある仕組みをつくる
5.今ある住宅・住居地の再生や更新を重視する
6.住宅の終末期への対応を早急に構築する
7.もう一歩先の将来リスクを見極める
あなたも本書を読んで、あなたの住む街の都市計画や住宅政策に関心をもって、人口減少が続く中での「住宅過剰社会」の課題について考えてみませんか。
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では、今日もハッピーな1日を