書評ブログ

『絶対悲観主義』

「こと仕事に関していえば、そもそも自分の思い通りになることなんてほとんどありません。この身も蓋もない真実を直視さえしておけば、戦争や病気のような余程のことがない限り、困難も逆境もありません。逆境がなければ挫折もない。」と述べている本があります。

 

 

本日紹介するのは、1964年生まれ、一橋大学大学院商学研究科修士課程修了、一橋大学イノベーション研究センター助教授、ボッコーニ大学経営大学院(イタリア・ミラノ)客員教授、一橋大学大学院国際企業戦略研究科准教授などを経て、2010年より一橋ビジネススクール教授の楠木建さんが書いた、こちらの書籍です。

 

楠木建『絶対悲観主義』(講談社+α新書)

 

 

この本は、絶対悲観主義者の著者が仕事や生活の断片について書いたものをまとめたもので、日立製作所のオウンドメディア「Executive Foresight Online」の連載記事を再構成して、全面的に書き直した書です。

 

 

本書は以下の14部構成から成っています。

 

1.絶対悲観主義

2.幸福の条件

3.健康と平和

4.お金と時間

5.自己認識

 

6.チーム力

7.友達

8.オーラの正体

9.「なり」と「ふり」

10.リモートワーク

 

11.失敗

12.痺れる名言

13.発表

14.初老の老後

 

 

この本の冒頭で著者は、「仕事である以上、絶対に自分の思い通りにはならないと僕は割り切っています。」と述べています。

 

「世の中は甘くない」「物事は自分に都合のいいようにはならない」、もっと言えば「うまくいくことなんてひとつもない」ー これが絶対悲観主義です、と定義しています。

 

ただの悲観主義ではなく「絶対」がつくところがポイントです。仕事の種類や性質、状況にかかわらず、あらゆることについてうまくいかないという前提を持っておく。

 

何事においても「うまくいかないだろうな」と構えておいて、「ま、ちょっとやってみるか・・・」、これが絶対悲観主義者の思考と行動だ、と著者者言います。

 

成功の呪縛から自由になれば、目の前の仕事に気楽に取り組み、淡々とやり続けることができるのです。GRIT不要、レジリエンス不要ーこれが絶対悲観主義の構えです。

 

 

本書の前半では、「絶対悲観主義」「幸福の条件」「健康と平和」および「お金と時間」について、以下のポイントを解説しています。

 

◆ 出力八割作戦で「余裕綽綽感」を出す

◆ 絶対補完主義の利点は、➀実行がシンプルで簡単、②仕事に取り掛かるのが速くなる、③リスク耐性が高い、④失敗した時の耐性も強くなる、⑤顧客志向になる、⑥自分の固有の能力や才能が明らかになる

◆ 成功体験に復讐されないこと

◆ 幸福になることと、不幸を解消することは違う

 

◆ 幸福に対する構えで「微分派」と「積分派」に分かれる

◆ 変化の大きさに幸せを感じる微分派と幸せを蓄積した総量に幸せを感じる積分派

◆ ベストセラーよりロングセラーが積分派

◆ ブランドとは、一時点の顧客認知の大きさではなく、顧客の中に積もり積もった価値の総体

 

◆ ブランディングは「人気」を志向、ブランテッドは「信用」を志向

◆ 他人との比較(嫉妬)は幸福の敵

◆ 絶対悲観主義者でも対処できない人間社会の二大問題「病気」と「戦争」

◆ 自律神経のバランスで、副交感神経を再活性化させるのが健康のポイント

 

◆ 呼吸を深くする、ゆっくりリズミカルに歩く、ゆとりをもって行動する

◆ 高齢化問題の最終解は「教養」、70~80代で人間のレベルに差が出る

◆ ハードウェアが故障した時、ソフトの力がものを言う

◆ 戦争に向かう社会状況を歴史に学ぶ

 

◆ 人間にとっての二大資源は「お金」と「時間」

◆ お金の三大特徴は、➀一元的な量、②汎用交換性、③貯蔵性

◆ 時間は誰にでも平等な資源で貯蔵性がない

◆ ルーティンの構成とトレードオフ(何をやらないか)の組み立てが大事

 

◆ 教育事業部、研究事業部、会社の仕事事業部の3種類の仕事を家内制手工業で

◆ 同じ種目をまとめてやる方が生産性が高い

◆ 時間は目に見えず、流れて行ってしまうから管理が難しい

◆ 締め切りに間に合わない仕事を受けないのも大事な仕事

 

 

この本の中盤では、「自己認識」「チーム力」「友達」「オーラの正体」および「なりとふり」について、著者の経験・知見を紹介・説明しています。主なポイントは次の通り。

 

◆ 自分のためにするのが「趣味」、人のためにするのが「仕事」

◆ 自己認識に近道なし、回り道もなし

◆ 組織力からチーム力へは3つの理由(①情報技術、②ソフトがメイン、③変化のスピード)

◆ 友達とは、偶然性・反利害性・超経済性を備えた人間関係

 

◆ オーラも圧もこちらが感じるだけのもの

◆ 情報や選択肢が多すぎると特定な要素以外が捨象されてしまう

◆ 欲望に対する速度が遅く執着しないのが上品な人

◆ 何かを取るために捨てる潔さが大切

 

 

本書の後半では、「リモートワーク」「失敗」「痺れる名言」「発表」および初老の老後」について考察しています。主なポイントは以下の通りです。

 

◆ リモートワークで仕事や生活がデジタル化

◆ 情報技術は人間のスキルをコモディティ化する

◆「頭」の仕事から、AI時代には「手」や「心」の仕事を重視するトレンドに

◆ コミュニケーション能力、協調性、対人適応力を重視するように

 

◆ 失敗でエネルギーが抜けているときはジタバタしない

◆ 脱力感は必要

◆ 美しい景色を探すな、景色の中に美しいものを見つける

◆ 伝えたいことが自分の中にあるかが大切

 

 

また、著者が理想とする先輩のひとりであるテリー伊藤さんの次の書籍を紹介・推薦しています。

 

 

 

この本の締めくくりとして著者は、「なるようにしかならないが、なるようにはなる」と述べています。つまり、自分なりの価値基準で、こういう仕事をしていきたい、こういう仕事はしたくない、これさえ決めておけば十分だということです。

 

 

あなたも本書を読んで、GRIT無用、レジリエンス不要の「絶対悲観主義」という生き方を学び、人生で実践してみませんか。

 

 

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では、今日もハッピーな1日を!【2864日目】