書評ブログ

『安いニッポン 「価格」が示す停滞』

「失われた30年とまで言われるほど日本が立ち止まっていた間に、世界はどんどん成長し、日本のポジションも大きく変わってしまったのだ。」と述べている本があります。

 

 

本日紹介するのは、1987年生まれ、早稲田大学政治経済学部卒、米ポートランド州立大学留学、2010年愛媛新聞社入社の後、2013年日本経済新聞社入社、編集局企業報道部などで食品、電機、自動車、通信業界やM&A、働き方などを担当してきた中藤玲さんが書いた、こちらの書籍です。

 

中藤玲『安いニッポン 「価格」が示す停滞』(日経プレミアシリーズ)

 

 

この本は、個々の企業にとっては最適解でも、「安さ」はまさしく、日本の停滞と結びついているという問題意識のもと、日本経済新聞や日経電子版に掲載した「安いニッポン」などの記事をベースに、当時書き切れなかったこと新しい取材で得た話、読者の疑問点への回答などを盛り込んで書き下ろした書です。

 

 

本書は以下の6部構成から成っています。

 

1.はじめに 日本の「安さ」を直視する

2.ディズニーもダイソーも世界最安値水準【物価の安い国】

3.年収1400万円は「低所得」?【人材の安い国】

4.「買われる」ニッポン【外資マネー流入の先に】

5.安いニッポンの未来【コロナ後の世界はどうなるか】

6.あとがき

 

 

この本の冒頭で著者は、「新型コロナウイルスの感染拡大で人々が外出自粛を迫られ、経済活動も大きく制限される中、『安いニッポン』はどうなっていくのか。世界と日本のギャップを認識した今、日本は、企業は、個人はいったい何をすべきなのか。」と問いかけ、明日を生きるてがかりを得てもらうために本書を活用してほしいとしています。

 

 

本書の前半では、テーマパーク「ディズニーランド」の入場料100円ショップの「ダイソー」における商品販売価格回転寿司の価格を世界で比較して、日本が世界最安値であると具体的な数字を挙げて紹介しています。

 

 

続いて、日本の価格がなぜこれほど安いのかという原因として、以下の点を挙げています。

 

◆ 日本の購買力はアメリカの7割以下

◆ 日本の消費者に近い川下(スーパーなど小売)でのデフレ

◆ メーカーが値上げできず、量を減らす実質値上げのみを行う

◆ 日本で最も安いのは給料(コンビニ店員、介護士、保育士、外国人労働者など

 

 

この本の中盤では、「年収1400万円は低所得?」と題して、日本の「人材の安さ」について考察しています。主な論点は次の通り。

 

◆ 米サンブランシスコでは1日3食の外食で優に1万円を超え、家賃も高い

◆ 日本は30年間、賃金が伸びていない

◆ 日本の賃金が上がらない原因は、➀労働生産性が停滞している、②多様な賃金交渉メカニズムがない、の2点

◆ ドイツの生産性が高いのは、効率が鵜いいのではなくブランド価値で売値が高いから

 

◆ 人で不足で年功序列が崩壊し、中高年男性は冬の時代

◆ インドなど外国のIT人材は日本の賃金制度では採用できない

◆ 日本の賃金制度は硬直的で、労働者は賃上げを求めない

◆ ジョブ型雇用への移行が必要

 

 

本書の後半では、外資マネーにより「買われるニッポン」の実態と、コロナ後の「安いニッポン」の未来について、以下のポイントを提示しています。

 

◆ ニセコは日本トップクラスの地価上昇

◆ コロナ禍でも衰えない海外からの投資

◆ M&Aでアジア国籍になる技術を持つ日本の町工場

◆ 日本人アニメーターが中国に囲い込まれる

 

◆ 日本のホテルは海外富裕層向けと国内向けの「二重価格」

◆ 供給過多で値崩れする京都のホテル

◆ 海外需要の急増で水産物を買い負ける日本

◆「安いこと」の弊害(➀個人、②人材流出、③人材育成、④国際人材)

 

 

この本の締めくくりで著者は、取材を通じて「安いニッポン」を考えることは、「ニッポンの豊かさとは何か」を考えることでもあった、と述べています。

 

 

あなたも本書を読んで、世界的に見た「安いニッポン」の実態と、「豊かさとは何か」について、改めて考えてみませんか。

 

 

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では、今日もハッピーな1日を!【2528日目】