書評ブログ

『アメリカを動かす「ホワイト・ワーキング・クラス」という人々』

「トランプ大統領誕生の原動力になったのは、ホワイト・ワーキング・クラス。かつてアメリカの製造業を支えたブルーワーカーだ。」と指摘している本があります。

 

 

本日紹介するのは、カリフォルニア大学ヘイスティングス校法科大学院労働生活法センター初代所長ジョーン・C・ウィリアムズが書いた、こちらの書籍です。

 

 

ジョーン・C・ウィリアムズ『アメリカを動かす「ホワイト・ワーキング・クラス」という人々』(集英社)

 

 

この本は、トランプ大統領のコアな支持者となり、大統領選でトランプ勝利の原動力になった、アメリカの「白人労働者」に焦点を当てて、その「真・中間層」としての実態を描いた書です。

 

 

彼ら「白人労働者」は米国では、「プア・ホワイト(貧しい白人)」「ホワイト・トラッシュ(白人のゴミ)」「レッドネック(野外労働者)」「ヒルビリー(田舎者)」といった蔑称とともに語られてきました。

 

 

そして彼らは、日本からの駐在員や留学生、観光客にとっては接点の乏しい米国人で、実は米国のエリート層にとってもそれは同じだ、と著者は言います。

 

 

 

本書は以下の14部構成から成っています。

 

 

1.なぜ、階級の話をするのか?

 

2.ワーキング・クラスとは、どんな人々なのか?

 

3.なぜ、ワーキング・クラスは貧困層に反感を抱くのか?

 

4.なぜ、ワーキング・クラスは専門職に反感を抱き、富裕層を高く評価するのか?

 

5.なぜ、ワーキング・クラスは仕事がある場所に引っ越さないのか?

 

 

6.なぜ、ワーキング・クラスは大学に行こうとしないのか?

 

7.なぜ、ワーキング・クラスは子供の教育に熱心に取り組まないのか?

 

8.なぜ、ワーキング・クラスは人種差別者なのか?

 

9.なぜ、ワーキング・クラスは性差別者なのか?

 

10.ワーキング・クラスは製造業の仕事が戻ってこないことを理解していないのか

 

 

11.なぜ、ワーキング・クラスの男性は「ピンクカラー」の仕事に就こうとしないのか?

 

12.なぜ、国からもっとも恩恵を受けているはずの人たちが感謝しないのか?

 

13.リベラル派はこれまで重要な価値観や支持者を捨てることなく、ワーキング・クラスを受け入れることができるのか?

 

14.なぜ、民主党は共和党に比べて、ワーキング・クラスの扱いが下手なのか?

 

 

 

この本では、アメリカで格差社会が拡大するなか、大企業、先端企業、メディア、大学、シンクタンクなどで働く高学歴・高収入の米国人にとって、同僚や友人として、「白人労働者」と交わる機会はほとんどない、と指摘しています。

 

 

したがって今回、中西部のラストベルト(錆びれた工業地帯)を中心に、それまで政治に冷笑的だった白人労働者が大挙して投票所に足を運び、民主党優位の下馬評を覆したことは、エリート層にとって大きな衝撃だった、と著者は言います。

 

 

従来の白人至上主義黒人やユダヤ教徒などの異分子を排除したのに対し、今日の白人至上主義は、「自分たち白人こそ社会の犠牲者である」という被害者意識に立って、アイデンティティや尊厳の復権を訴えている、と本書では分析しています。

 

 

一般的にミドルクラスが縮小すると、社会全体の余裕がなくなることから、国内的には排外主義傾向、対外的には孤立主義(自国第一主義)的傾向が強まるとされ、トランプ大統領の政策はまさにこうした風潮に合致します。

 

 

人口構成だけでなく、経済的にも周縁に追いやられ、「忘れられた人々」となりつつある「白人労働者」にとって、トランプ大統領救世主と映ったのです。

 

 

ホワイト・ワーキング・クラスにとって、黒人やヒスパニックなどのマイノリティは、人種差別撤廃の名のもとに優遇策(一流大学への優先入学枠、大企業への優先採用枠など)が施される一方、「白人労働者」はそうした優遇策は一切なく、貧困の中で逆差別を受け、「忘れられた存在」になっていった、ということです。

 

 

この本は、同じ「白人労働者」を描いた、ベストセラーのJ・D・ヴァンス著『ヒルビリー・エレジー』(光文社)に通じるものがあります。それだけ、トランプ大統領の熱烈な支持者への関心が高まっている、ということでしょう。

 

 

現代のアメリカ社会を動かす原動力になった「ホワイト・ワークング・クラス」の実体を知ることができる本書を強く推薦します。

 

 

 

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では、今日もハッピーな1日を

 

 

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