書評ブログ

『私は看取り士。 わがままな最期を支えます』

「きちんと看取り、魂のリレーができたとき、人はその死をつらい思い出として思い返すのではなく、その人の魂(いのち)が自分の中に宿っているように感じるのです。『看取り』というのは、これほどまでにパワフルで大切なことなのです。」と述べて、「看取り士」として看取りの文化を伝える活動について解説している本があります。

 

 

本日紹介するのは、1952年島根県出雲市生まれ、老人福祉施設に勤務後、離島で看取りの家を創設して、現在は活動の場を本土に移し、一般社団法人「日本看取り士会」を設立、「看取り士」として旅立つ人に寄り添うかたわら、看取りの文化を伝える活動をしている、一般社団法人「なごみの里」代表理事、一般社団法人「日本看取り士会」会長柴田久美子さんが書いた、こちらの書籍です。

 

柴田久美子『私は看取り士。 わがままな最期を支えます』(佼成出版社)

 

 

この本は、著者が「看取り士」として実際に出会った幸齢者さま(人生で大切なことを教えてくださる方という意味で高齢者を「幸齢者」と呼ぶ)、余命を宣告された方々とそのご家族とのふれ合いを中心に紹介している書で、映画「みとりし」として映画化され、ロサンゼルス日本映画祭にて特別賞など3つの賞を受賞した原作本です。

 

 

本書は以下の7部構成から成っています。

 

1.まえがき 看取りはいのちのバトンの受け渡し

2.抱いて「看取る」ということ

3.看取りはグレーフケア

4.「最期」は本人が自分でプロデュースする

5.最期くらいはわがままでいい

6.対談 柴田久美子 × 鎌田 實

7.あとがき 尊厳ある最期が守られる社会を目指して

 

 

この本の冒頭で著者は、敬愛するマザーテレサから受けた言葉「人生の99パーセントが不幸であったとしても、最期の時が幸せなら、その人の人生は幸せなものに変わる」を紹介し、「まさに死の介在する現場において幸せが溢れているのです。」と述べています。

 

 

続いて、幸せな最期(旅立ち)の条件として、次の3つを挙げています。

 

◆ 夢があること

◆ 支えてくれる人がいること

◆ 自分で決める自由があること

 

今の日本では、半数以上の人が「自宅で最期を」と望みながらも、10人中8人が病院で最期を迎えている、と著者は紹介しています。

 

 

本書の前半では、「看取りはいのちのバトンの受け渡し」および抱いて看取るということ」について、以下のポイントを解説しています。

 

◆ 死を前にして感じる四つの苦しみ(①身体的な苦しみ、②精神的な苦しみ、③社会的な苦しみ、④スピリチュアルな苦しみ)

◆ 幸齢者さまの孤独を理解する

◆ 看取りの作法で大切なのは、「傾聴」「反復」「沈黙」「ふれ合い」

◆ 必要なのは言葉ではなく、相手の呼吸のリズムに合わせる「呼吸合わせ」

◆ 看取り士が入るだけで看取りの現場は落ち着く

 

◆ 看取り士とともに最期の時をサポートするボランティアの「エンゼルチーム」

◆ 看取りの際の四つの質問(①どこで最期を迎えたいか?、②に看取られたいか?、③どういう医療を希望するか?、④今、何かお困りのことは?)

◆ 大丈夫と声をかける(①お迎えが来る、②神仏と同じ力が与えられる)

◆ 看取り学の「臨命終時(りんみょうしゅうじ)」(=臨終:命の終わりの時に臨む)

◆ 看取りの姿勢(抱いて看取る)

 

 

この本の中盤では、「看取りはグレーフケア」および「最期は本人が自分でプロデュースする」をテーマに、著者の経験・考え方を紹介・説明しています。主なポイントは以下の通りです。

 

◆ 最期の瞬間に間に合わなかったと悔やむ「臨終コンプレックス」

◆「看取り直し」で気持ちを整理する

◆ 看取りは「許し」を生む

◆ 祈りの力を理解する、信じるものがある人は強い

◆ 逝く人は待ってくれる

 

 

本書の後半では、「最期くらいはわがままでいい」についての説明および対談 柴田久美子 × 鎌田 實」が掲載されています。主なポイントは次の通り。

 

◆ エンディングノートは家族とのすり合わせが大事

◆ 希望はいのちを支える

◆ 増える「おひとりさま」の死

◆ 看取りの新しい役割「メンタルサポート」

 

◆ 胎内体感は、内観法から派生したもので、「自分が母親の胎内にいたときに遡って振り返ってもらう」プログラム

◆ 一人ひとりが自分の「死の哲学」を持つ

◆「最期の呼吸を腕の中で」というスタイルで、抱いて送る「いのちのバトン」

◆ 医療の現場では「死は敗北」と学び、日本は「死の質」が先進国14位と低い

◆ 空き家の活用で「看取りの家」を含む地域包括ケアを

 

 

この本の締めくくりとして著者は、「私の夢は、すべての人が最期の瞬間に、愛されていると感じて旅立てる社会創りです。」「すべての方の尊厳ある最期が守られることを願ってやみません。」と述べています。

 

 

あなたも本書を読んで、「旅立ちはいのちのバトンを渡す尊いときだ」という信念で活動する看取り士の役割を学び、自らの死生観を見つめ直してみませんか。

 

 

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では、今日もハッピーな1日を!【2789日目】