書評ブログ

『ウソが勝者となる時代』

「ウソが事実を圧倒し、正論が“無力”に見える時代になった。」――そんな現代社会の恐ろしい構造を、歴史と現実の両面から鮮やかに解き明かす一冊があります。

本日紹介するのは、1967年大阪府生まれ。戦史・紛争史研究家として、第二次世界大戦以降の国際政治・ナショナリズム・情報戦などを精緻に分析し、『戦前回帰』『歴史戦と思想戦』などの著作で注目を集めてきた山崎雅弘(やまざき・まさひろ)さんが書いたこちらの書籍です。

山崎雅弘『ウソが勝者となる時代』(祥伝社新書)


この本は、SNSや動画プラットフォームが大衆化した現代において、「ウソ」が権力者や扇動者の“武器”となり、真実をねじ曲げ、社会を破壊する構造を徹底検証したものです。
著者は、トランプ前米大統領から日本の政治運動、歴史戦、戦争の開戦理由までを俯瞰し、「ウソと言いがかり」がどのようにして“現実を支配する力”になったのかを浮き彫りにしています。


本書は以下の5部構成から成っています。

1.ウソと言いがかりの帝王 ドナルド・トランプ

2.日本国内でも跋扈し始めたウソと言いがかりの使い手たち

3.ウソと言いがかりが引き起こした戦争の数々

4.歴史歪曲と差別の正当化にも使われるウソと言いがかり

5.「ウソと言いがかりが勝つ時代」に社会はどう対処すべきか


本書の前半では、「ウソと言いがかりの帝王」としてドナルド・トランプを取り上げ、ポスト真実の時代における情報操作のメカニズムを描いています。主なポイントは以下の通りです。

◆ トランプの「虚言」は就任前から問題視されていたが、ファクトチェックを超えて拡散した

◆ “ウソを根拠にした言いがかり” が政治的支持を生む逆転現象

◆ SNSがウソを増幅し、反論を「敵視」する群衆心理を形成

◆ 大統領選敗北後の議事堂襲撃事件は “言葉の暴力” が現実の暴力に転化した象徴

◆ 破壊的なウソが「野蛮な王国」を作り出すという警告


この本の中盤では、日本国内で同様の構造が進行している現実を明らかにします。主なポイントは次の通りです。

◆ 動画配信やSNSを使った「言いがかり攻撃」の拡散構造

◆ 虚偽情報をもとにした“集団的攻撃”が人を死に追い込む危険性

◆ “興味がない”という無関心がウソの温床を広げる

◆ 群衆心理が倫理を麻痺させ、攻撃が “正義” に変わる瞬間

◆ 日本社会でも「ウソが武器化される」時代に突入している


本書の後半では、「ウソと言いがかり」が国家規模の破壊を招いた歴史的事例を通して、人間社会の根源的問題を掘り下げています。主なポイントは以下の通りです。

◆ 「リメンバー・ザ・メイン!」――米西戦争を正当化した虚報の力

◆ 「トンキン湾事件」や「大量破壊兵器」――戦争を起こすための作られた口実

◆ プーチンの「特別軍事作戦」――現代における最も危険な “言いがかり戦争”

◆ 関東大震災後の「朝鮮人デマ」やホロコーストも “虚構から始まった”

◆ 歴史の歪曲と差別の正当化に「ウソ」が使われ続けてきた


そして最終章では、「ウソが勝つ時代」を生きる私たちがどう対処すべきかが論じられます。主なポイントは次の通りです。

◆ 世界で進む「ウソと言いがかりのビジネス化」――再生回数が憎悪を生む

◆ 常習的なウソつきに共通する“歪んだ全能感”と支配欲

◆ 「国を守る」という大義名分のもとで行われる差別や排除

◆ 人はなぜ“勝ち負け思考”に支配されるのか――心理的背景を解く

◆ 「真実を共有し、対話をあきらめないこと」こそ最大の抵抗


本書の魅力は、著者の冷静な史観と深い倫理意識にあります。
「ウソを武器にした支配」は、政治やメディアだけでなく、SNS上の私たち一人ひとりの行動からも生まれる――この視点が強烈です。

山崎雅弘氏はこう語ります。
「正論が届かない時代でも、ウソを許さない姿勢を持ち続けること。それが “民主主義の最前線” に立つということだ。」

歴史、政治、社会のあらゆる分野に通じる必読の警告書です。
“ポスト真実の時代” を生き抜くために、今こそ読むべき一冊といえるでしょう。


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では、今日もハッピーな1日を!【3905日目】