「アンダークラスを生み出す社会のしくみは、すでに日本の社会に深く根を下ろしてしまっている。これを現状のまま放置するなら、日本社会は間違いなく危機的な状況を迎える。」と警鐘を鳴らしている本があります。
本日紹介するのは、1959年生まれ、東京大学教育学部を卒業し、東京大学大学院博士課程を修了、静岡大学教員などを経て、現在は早稲田大学人間科学学術院教授の橋本健二さんが書いた、こちらの書籍です。
橋本健二『アンダークラス~新たな下層階級の出現』(ちくま新書)
この本は、現代日本社会に存在する928万人のアンダークラスについて、その発生の経緯、分類や特徴、今後の課題などについて分析している書です。
本書は以下の10部構成から成っています。
1.アンダークラスの登場
2.新しい階級社会の誕生
3.アンダークラスとは何か
4.現代日本のアンダークラス
5.絶望の国の絶望する若者たち
6.アンダークラスの女たち
7.「下流老人」が増えていく
8.「失業者・無業者」という隣人たち
9.アンダークラスと日本の未来
10.「下」から日本は崩れていく
この本の冒頭で著者は、2015年の日本の貧困率は15.6%とOECD加盟国の平均10.4%を大きく上回り、メキシコ、米国、トルコ、アイルランドに次いで第5位、主要先進国では米国についで2番目に高いと指摘しています。
ただ私たちにその実感がないのは、貧困に陥るリスクは、学歴、年齢、性別、職業、企業規模、居住地などによって大きく異なるからだ、と説明しています。
また、「アンダークラス」という言葉が世界に登場したのは、1962年にミュルダールがカリフォルニア大学で行った講演をもとに『豊かさへの挑戦』(竹内書店)という本を出版したのに始まる、と著者は紹介しています。
その後、米国のニュース雑誌『タイム』が1977年8月29日号にて、カバーストーリーと表紙に「マイノリティのなかのマイノリティー アメリカのアンダークラス」と書かれた、ということです。
ミュルダールは「アンダークタス」を、技術革新とこれによって引き起こされた労働市場の変化の犠牲者として描いています。
それに対して『タイム』誌は、犠牲者としての側面に言及しながらも、アンダークラスの文化的な異質性を強調し、逸脱や犯罪の源泉となったり、社会支出負担を増加させる原因になるといった側面を、あまりに強調し過ぎています。
さらに「アンダークラス」を自己責任とする論調に大きな役割を果たしたのが、英国の保守派政治学者チャールズ・マレーです。
マレーの影響力の大きさを本書では強調していて、次のような書籍も紹介しています。
そして、米国の経済学者ガルブレイスは、アメリカ社会を「満ち足りた多数派」が支配する社会としています。
現代の社会は、従来の4階級から、「労働者階級」が2つに分かれて、以下の5階級になっています。
◆ 資本家階級
◆ 新中間階級
◆ 労働者階級
◆ アンダークラス
◆ 旧中間階級
本書の後半では、アンダークラスを性別と年齢によって四つに分けて、それぞれの特徴を分析しています。
詳細についてはぜひ、直接この本を読んで確認してください。
また、著者の橋本健二さんが昨年書いた『新・日本の階級社会』(講談社現代新書)を併せて読めば、より理解が深まります。
あなたも本書を読んで、労働者階級が二つに分断されて「アンダークラス」が誕生した背景について、改めて学んでみませんか。
2020年3月10日に、YouTubeチャンネル『大杉潤のyoutubeビジネススクール』【第29回】アンダークラスの出現、にて紹介しています。
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では、今日もハッピーな1日を!