書評ブログ

『コロナショック・サバイバル 日本経済復興計画』

「コロナショックがやって来た。」「まさに破壊的な危機が私たちの生命と経済の両方に対して襲いかかっているのだ。」と述べている本があります。

 

 

本日紹介するのは、1960年生まれ、東京大学法学部卒、在学中に司法試験合格スタンフォード大学経営学修士(MBA)ボストンコンサルティンググループ、コーポレイトディレクション代表取締役を経て、産業再生機構COOに就任、カネボウの再建にかかわり、現在は、経営共創基盤(IGPI)CEO冨山和彦さんが書いた、こちらの書籍です。

 

 

冨山和彦『コロナショック・サバイバル 日本経済復興計画』(文藝春秋社)

 

 

この本は、コロナショックという破壊的危機の時代を生き残る修羅場の経営術を、喫緊に共有すべきであるとの使命感から書かれた書です。

 

 

 

本書は以下の6部構成から成っています。

 

 

1.はじめに 破壊的危機に、どう対処すべきか

 

2.L→G→F 経済は3段階で重篤化する

 

3.企業が、個人が、政府が生き残る鍵はこれだ

 

4.危機で会社の「基礎疾患」があらわに

 

5.ポストコロナショックを見すえて

 

6.おわりに 日はまた昇る、今は200%経営の時

 

 

 

この本の冒頭で著者は、「今回のコロナショックは、その広さと深さと長さにおいて、過去の危機を上回る破壊性を持っている。」と述べています。

 

 

 

その一方で、グローバル化とデジタル革命による破壊的イノベーション、産業アーキテクチャー(構造)の大転換も進行している、と解説しています。

 

 

 

そこでは大きな産業やビジネスモデルが数年で消滅するような破壊的変化も起きていて、「破壊の時代」を私たちは生きている、と著者は言います。

 

 

 

著者の結論は、コーポレートトランスフォーメーション(CX)、すなわち、破壊的イノベーションによる産業アーキテクチャーの転換が続く時代に、日本企業会社の基本的な形、まさに自らのコーポレートアーキテクチャーを転換し、組織能力を根こそぎ変換することが、生き残りの最大のカギになるということです。

 

 

 

続いて、コロナ経済危機は、次の「3つのステップ」重篤化すると本書では解説しています。

 

 

1.L型産業(ローカル): 飲食・観光・小売りなどGDPの7割、雇用の8割を占めるローカル産業が壊滅

 

2.G型産業(グローバル): 自動車・住宅関連・電機などグローバル大企業で「需要が消える」

 

3.F(金融危機): 流動性(資金繰り)問題から「ソルベンシー問題」へ

 

 

 

この中で、ダメージが長引くリスクがあるのはG(耐久消費財・国際線エアライン)とF(耐久消費財)、そして外需依存型のL(インバウンド向けのホテル・観光業)だ、と著者は分析しています。

 

 

 

いずれも世界的に感染が終息しないと需要が回復しないためです。

 

 

 

また、金融危機の段階まで行くと、パンデミックが終わっても民間の金融機関が十分な信用創造機能が果たせず、経済回復の足を大きく引っ張る可能性がある、ということです。

 

 

 

そうした中で、企業や個人が生き残る鍵として、この本では以下の提言をしています。

 

 

◆ 危機の経営では「想像力」が重要、その基盤は「歴史から学ぶ」

 

◆ 危機の時は、①手元流動性(現預金)の潤沢さ、②金融機関との信頼関係、③平時における稼ぐ力(営業キャッシュフロー)と自己資本の厚みが重要

 

◆ Cash is King(現金が王様)

 

 

 

そして、バブル崩壊後の日本の金融危機とリーマンショックの歴史が示唆する学び(=「修羅場の心得」)として、以下の8点を挙げています。

 

 

1.想像力-最悪の想定を置き、最善の準備をせよ

 

2.透明性-Bad News をあからさまにせよ、信用毀損をおそれるな

 

3.現金残高-短期的なPL目標は捨てろ、日繰りのキャッシュ管理がすべてだ

 

4.捨てる覚悟-何を本当に残すか、迅速果断な「あれか、これか」の「トリアージ」経営を行え

 

 

 

5.独断即決-独断即決ができるトップ、真の「プロ」を集めて即断即決、朝令暮改

 

6.タフネス-手段に聖域を作るな、法的整理でさえ手段にすぎない

 

7.資本の名人-2種類の「お金」を用意せよ

 

8.ネアカ-危機は新たなビジネスチャンス!「国民感情」に流されず投資や買収に売って出よ

 

 

 

本書の後半では、危機で会社の「基礎疾患」があらわになる、として、基礎疾患である「古い日本的経営」を挙げています。中小企業の代表的な基礎疾患「封建的経営」だと著者は指摘しています。

 

 

 

この本の最後で著者は、「ポストコロナショックをみすえて」として、以下の提言を行っています。

 

 

◆ 真の淘汰と洗濯は危機時に始まる

 

◆ DX(デジタルトランスフォーメーション)、破壊的イノベーションは加速する

 

◆ モノからコトへの流れは加速

 

◆ 危機に強いのは「リモートな方法でソリューションサービスをリカリング(繰り返し利用)型で提供するビジネスモデル

 

 

 

◆ GからLへの流れ、LDX(ローカルデジタルトランスフォーメーション)が起動する

 

◆ 株式会社、市場経済、資本主義の基調が変わり、SDGs(持続可能な開発目標)やESG(環境・社会・ガバナンス)重視に

 

◆ コアコンピタンス(企業の中核的な強み)に磨きをかけ、イノベーション領域の新しい事業を探索する「両利き経営力」

 

◆ TA(事業再生)はCX(企業の大変容)の大チャンス

 

 

 

あなたも本書を読んで、コロナショックをどう乗り越え、日本経済を復興させるかを考察してみませんか。

 

 

 

2020年6月30日に、YouTubeチャンネル『大杉潤のyoutubeビジネススクール』【第141回】産業再生のプロが説く日本経済復興計画「コロナショック・サバイバル」にて紹介しています。

 

 

 

 

 

毎日1冊、ビジネス書の紹介・活用法を配信しているYouTubeチャンネル『大杉潤のyoutubeビジネススクール』の「紹介動画」はこちらです。ぜひ、チャンネル登録をしてみてください。

 

 

 

 

では、今日もハッピーな1日を!【2398日目】