書評ブログ

『アンダークラス化する若者たちー生活保障をどう立て直すか』

「新型コロナ禍による人々の貧困化を成り行きにまかせ、有効な手立てを講じなければ、より多くの若者が、将来の展望をもつことをあきらめてアンダークラスに滞留することになるだろう。」と予測している本があります。

 

 

本日紹介するのは、宮本みち子さん、佐藤洋作さん、宮本太郎さんの編著による、こちらの書籍です。

 

宮本みち子・佐藤洋作・宮本太郎 編著『アンダークラス化する若者たちー生活保障をどう立て直すか』(明石書店)

 

 

この本は、アンダークラスに落ち込む若者たちの実態を明らかにし、若者施策の前提となっている「親頼み」のメカニズムと限界をえぐり出し、アンダークラス化を防止するためにどのような社会編成が必要なのかを明らかにする書です。

 

 

本書は以下の12部構成から成っています。

 

1.若者問題とは何か

2.若者世界の分断と高校教育の変容

3.リスクを抱えた若者のキャリア形成支援

4.若者施策としての就労支援

5.アンダークラスを支える

6.社会的連帯経済と若者支援

 

7.若者支援と中間的な働く場づくりの可能性

8.家族扶養・正規雇用の相対化から見える若者への社会保障

9.日本の若者政策における「若者問題」

10.困難を有する若者支援の法制度と自治体法政策

11.若者支援の政策理念

12.本書をふりかえる

 

 

この本の冒頭で著者は、「親の援助に頼れない若者は若者支援のネットにもかからない。親の援助がなくとも若者が安定した生活基盤を築くことができるような社会保障制度の強化を図らなければ、将来的に貧困に陥る中高年人口が今よりもっと拡大するだろう。」と述べています。

 

 

本書の前半では、「若者問題とは何か」「若者世界の分断と高校教育の変容」およびリスクを抱えた若者のキャリア形成支援」について、以下のポイントを提示・説明しています。

 

◆ 不安定な雇用、低賃金、結婚・家族形成の困難という特徴を持つ若者の一群

◆ ライフチャンスを限定・剥奪された状態にある若者

◆ 若者期は社会保障制度における陥没地帯

◆ 格差の拡大がアンダークラスを生み出す

 

◆ 高等教育を十分に受けられなかった若者が非正規雇用の中で貧困化

◆ 教育に多額の個人負担が必要な日本

◆ 高等教育の「教育から仕事へ」の移行支援の機能が働かない若者は社会とつながらない

◆ 階層化による社会的格差の再生産へ

 

◆ 不登校の若者を受け入れる通信制高校がセーフティネットになっていない

◆ 伴走型継続支援による若者の社会的自立とキャリア教育

◆ サポステ(地域若者サポートステーション)に流入する若者たち

◆ コロナ禍をきっかけに学び方、働き方、生き方の選択肢が広がる

 

 

この本の中盤では、「若者施策としての就労支援」「アンダークラスを支える」「社会的連帯経済と若者支援」「若者支援と中間的な働く場づくりの可能性」および家族扶養・正規雇用の相対化から見える若者への社会保障」について考察しています。主なポイントは次の通り。

 

◆ キャリアの模索・形成を目指す人36~70万人が就労支援の対象

◆ 求職準備者支援の基盤づくりから

◆ 弱者の技法として個別の若者の就労支援から出発した静岡方式

◆ 生活困窮者の就労支援という第二世代の静岡方式(コミュニティ・オーガナイジング)

 

◆ 社会的連帯経済の中で若者の「経済的自立」を支援

◆ コミュニティ・オーガナイジングは地域での潜在的な連帯を可視化、地域を編み直す

◆ 企業や一般の職場でうまく働けない若者を支援する社会企業、中間的な働く場づくり

◆ 若者への社会保障のあり方

 

 

本書の後半では、「日本の若者政策における若者問題」「困難を有する若者支援の法制度と自治体法政策」および若者支援の政策理念」について解説しています。主なポイントは以下の通りです。

 

◆「働ける若者」と「働けない若者」に分けた支援策

◆ 非正規雇用の増加、正規雇用への移行困難、家族形成ができない問題

◆ 若者支援の多様化と多機関連携の重要性

◆ 包括的な相談支援

◆ 多様な働き方や居場所を組み合わせた「地域密着型の社会的投資」

 

 

この本の締めくくりとして著者は、「就職氷河期に若者期を置く多人々(ロストジェネレーションともいう)の先頭集団は50歳に達している。この世代と、第一次ベビーブーマー(団塊世代)やすぐ上のバブル世代との間には経済的な『世代間格差』が生まれている。」と述べています。

 

 

そして「この世代は、親の世代よりも所得が低く不安定になった戦後初めての世代であった。この世代を先頭にして、様々な困難を背負い、不安定な生活基盤のもとで生きている若者が増加し続けている。」と続けています。

 

 

こうした問題意識が本書の核心で、単に怠けたり、根性のない若者が貧困に陥り、生活困難者になっているわけでは決してありません。情報化とデジタル化を軸としたテクノロジーの急速な発展による社会の構造的変化に適応できない若者が、「非正規雇用」という環境の下で階層が固定化し、貧困が再生産され、貧富の格差が拡大する階級社会になりつつある、ということでしょう。これは欧米先進国でも共通の潮流です。

 

 

本書の共著者である、佐藤洋作さん、岩本真美さん、野村武司さん、津富宏さんの4名と、国立市社会福祉協議会松田周平さんによる本書『アンダークラス化する若者たちー生活保障をどう立て直すか』(明石書店)出版記念イベントが、国立市「ひらくスペース」にて、本日2022年4月24日(日)に開催されます。

https://bit.ly/3rJNZmc

 

 

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では、今日もハッピーな1日を!【2747日目】