書評ブログ

『「強い円」はどこへ行ったのか』

「長年通貨が高いこと(円高)に悩んできた日本が、通貨が低いこと(円安)に悩むようになるのだとすれば、それはある意味で先進国から途上国へのステップダウンという意味合いも含みかねない。」と述べている本があります。

 

本日紹介するのは、2004年慶應義塾大学経済学部卒業後、JETRO入構、日本経済研究センター、欧州委員会経済金融総局への出向を経て、2008年、みずほコーポレート銀行に入行し、現在はみずほ銀行チーフマーケット・エコノミスト唐鎌大輔さんが書いた、こちらの書籍です。

 

唐鎌大輔『「強い円」はどこへ行ったのか』(日経プレミアシリーズ)

 

この本は、「2011~2012年頃からの約10年間で日本経済、とりわけ円相場の構造が変わったのか」という点を重視した上で、極力客観的なデータを通じて構造変化の可能性を指摘している本です。

 

本書は以下の6部構成から成っています。

1.「成熟した債権国」の夕暮れ

2.円安功罪論の考え方―危うい安易な善悪二元論

3.「安い日本」の現状と展望―観光立国は必然なのか?

4.本当に恐れるべきは「家計の円売り」―「おとなしい日本人」は変わるのか?

5.日本銀行の財務健全性は円安と関係があるのか?

6.パンデミック後の世界の為替市場―通貨高競争の機運

 

この本の冒頭で著者は、「過去10年で円相場の構造が変わり始めているという事実は否定できない」「基礎的な経済統計を用いて、その構造変化の実相に迫ってみたい」と述べています。

 

本書の前半では、「成熟した債権国の夕暮れおよび「円安功罪論の考え方―危うい安易な善悪二元論」ついて以下のポイントを説明しています。

◆ 2021年以降の円独歩安の背景:①成長率、②金利、③需給

◆ 国際収支の発展段階説で、日本は「成熟した債権国」、今後「債権取り崩し国」か

◆ 貿易収支は赤字化したが、所得収支出稼ぎ、経常収支は黒字を維持

◆「世界最大の対外純資産国」は誇れることではない

◆ 円安にはメリットもデメリットもある

 

この本の中盤では、「安い日本の現状と展望―観光立国は必然なのか?および「本当に恐れるべきは家計の円売り―おとなしい日本人は変わるのか?」について解説しています。主なポイントは次の通りです。

◆ 水面下で進んだ「安い日本」

◆ 円の実質実効為替相場(PEER)が50年ぶりの安値は、内外価格差(賃金格差)による

◆ 観光立国とは、外国人の消費に依存すること(財布に頼ること)

◆「令和の鎖国」と揶揄された岸田政権の厳格な入国規制

 

◆ 貿易赤字や直接投資は、「企業部門による円売り」

◆ 本当に恐ろしいのは、「家計部門による円売り」

◆「貯蓄から投資へ」が奏功して、「家計による円売り」が加速

◆ リフレ政策の終わり

 

本書の後半では、「日本銀行の財務健全性は円安と関係があるのか?および「パンデミック後の世界の為替市場―通貨高競争の機運」ついて説明しています。主なポイントは以下の通りです。

◆ 日銀の財務健全性が、将来テーマ視される可能性はある

◆ 永遠の割安通貨(ユーロ)を得たドイツ

◆ 世界は通貨高競争の様相

◆ リーマンショック後の通貨安競争で割を食った日本

 

この本の締めくくりとして著者は、可能性の一つとして、日本は「かつてのように通貨高で悩む国ではなくなった」と述べています。

 

あなたも本書を読んで、円相場の構造変化について学び、今後の予測を考えてみませんか。

 

ビジネス書の紹介・活用法を配信しているYouTubeチャンネル『大杉潤のyoutubeビジネススクール』「紹介動画」はこちらです。ぜひ、チャンネル登録をしてみてください。

https://www.youtube.com/@user-kd3em9nm4q/featured

では、今日もハッピーな1日を!【3516日目】