書評ブログ

『統計で考える働き方の未来ー高齢者が働き続ける国へ』

「少子高齢化がくびきとなっている日本において、私たちの社会はどこへ向かおうとしているのか。私たちはいったいいつまで働けばよいのか。」と問いかけ、超高齢社会の日本社会の実相を、豊富な統計分析によって解き明かしている本があります。

 

 

本日紹介するのは、1985年生まれ、一橋大学国際・公共政策大学院公共経済専攻修了、厚生労働省にて社会保障制度の企画立案業務などに従事した後、内閣府で官公庁エコノミストとして「経済財政白書」の執筆などを担当、その後三菱総合研究所エコノミストを経て、現在はリクルートワークス研究所研究員・アナリスト坂本貴志さんが書いた、こちらの書籍です。

 

坂本貴志『統計で考える働き方の未来ー高齢者が働き続ける国へ』(ちくま新書)

 

 

この本は、我が国の代表的な統計を網羅的に活用することで、日本を取り巻く現状を分析し、最も現実的な将来像を浮かび上がらせて、日本の労働の未来を、現在の延長線上で語ることを試みている書です。

 

 

本書は以下の8部構成から成っています。

 

1.超高齢社会のいま

2.賃金は増えていないのか

3.格差は広がっているのか

4.生活は豊かになっているのか

 

5.年金はもつのか

6.自由に働ける日はくるのか

7.職はなくなるのか

8.生涯働き続けねばならないのか

 

 

この本の冒頭で著者は、「私たちが必要なことは、超高齢社会に入った日本でいま何が起こっているのかを正確に理解することであろう。」と述べています。

 

 

本書の前半では、「超高齢社会のいま」「賃金は増えていないのか」および格差は広がっているのか」について、以下のポイントを解説しています。

 

◆ 年金制度が定年年齢を決めている

◆ 貯蓄の額が仕事を辞める時期に影響を与える

◆ 経済、財政、年金、賃金、物価、貯蓄、働き方、職の一つ一つの経済変数が引退年齢を決める

◆ 平均賃金が上がらないのは、女性や高齢者の労働参加率増加の影響が大きい

◆ 中堅男性の価値創造機能が低下し、役職に就けない男性が増えて平均賃金が下がった

 

◆ 団塊ジュニア(40代後半)の人口が突出して多いことが役職に就けない男性を増やしている

◆ 平均賃金は減少し、賃金の総額は増加

◆ 賃金を生み出す主体が多様化したこと、交易条件が悪化を通じて国府が海外へ流出し、名目賃金が減少した

◆ 非正規雇用や無業者の問題が大きな要因となって所得格差、未婚の問題を引き起こした

◆ 急増する単身高齢者と生活保護

 

 

この本の中盤では、生活は豊かになっているのか」「年金はもつのか」および自由に働ける日はくるのか」について考察しています。主なポイントは次の通り。

 

◆ 直接税・社会保険料の負担増加が世帯収入の増加が消費の増加につながらない理由

◆ 年金月額3万円減少がメインシナリオに

◆ 将来の年金の支給額は1割から2割程度減る

◆ 男性の就業率は、60代前半で82.3%、60代後半で58.9%、70代前半で41.1%

 

◆ 家計支出は高齢になるほど、体力の衰えから減少する

◆ 老後に乗り越えるべき経済的な障壁は75歳まで

◆ 老後に最も生活が逼迫する時期は、定年から70代前半にかけて

◆ 将来の年金額が減少したときの最も有力な対応策は、働き続けること

 

◆ 2010年代に実質の年金受給額が大きく減少し、それが高齢者を働きに出させた

◆ 年金の支給開始年齢を遅らせる効果は絶大

◆ 年金財政の悪化、年金の支給額が減少、年金の支給開始年齢を繰り下げ、繰り下げた年齢まで生活のために働く、が訪れる未來

◆ 働き方改革関連法は、戦後の労働基準法制定以来、70年ぶりの大改革

 

◆ 柔軟な働き方の推進が、働き方改革の1つの柱

◆ 非雇用型テレワーク(=フリーランス)は、足もとは意外と増えていない

◆ フリーランスの働き方は高齢者に向いている

◆ フリーランスの平均年収は、196万円で、就業者全体の平均291.6万円より約100万円低い(自由の代償か)

 

 

本書の後半では、「職はなくなるのか」および生涯働き続けねばならないのか」について説明しています。主なポイントは以下の通りです。

 

◆ 高齢者が選好する仕事の特徴は、現場労働

◆ 人々は、職業人生の長期化を織り込み始めている

◆ 現役時代のスキルを中小企業で活かす

◆ 職業人生の下り坂を味わいながら下る

 

◆ 生涯現役が様々な社会課題を一気に解決する

◆ 細く長く働き、納得して引退

◆ 60~64歳の生活満足度は低いが、それ以降の年齢では満足度が高い

◆ 高齢者に特有の労働市場の整備を進めていく

 

 

この本の締めくくりとして著者は、「超高齢社会におけるソリューションは二つしかない。すなわち、少ない生産者が効率よく生産するシナリオ(仕送りシナリオ)か、生産活動の担い手を増やすシナリオ(就業延長シナリオ)である。」と述べています。

 

 

あなたも本書を読んで、豊富な統計データ・分析によって見えてくる高齢者の働き方の未來を理解し、必要な対策を取っていきませんか。

 

 

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では、今日もハッピーな1日を!【2884日目】