書評ブログ

『閉じてゆく帝国と逆説の21世紀経済』

「資本主義の終焉によって、世界経済の “ 常識 ” が逆転した。経済成長を追求すると、企業は巨大な損失を被り、国家は秩序を失う時代になった」と指摘している本があります。

 

 

本日紹介するのは、三菱UFJモルガン・スタンレー証券チーフエコノミストを経て、内閣府大臣官房審議官などを歴任した・水野和夫・法政大学法学部教授が書いた、こちらの書籍です。

 

 

水野和夫『閉じてゆく帝国と逆説の21世紀経済』(集英社新書)

 

 

この本は、グローバルな資本がもたらす不安定性から自分たちを守ってくれる「国民国家」を求めている世界の動きを、イギリスのEU離脱や、不法移民の国外追放を主張するトランプ米大統領の誕生など、具体的な事例を挙げて説明しています。

 

 

著者によれば、資本の自己増殖を目的とする資本主義が限界に達している現在、フロンティアを求めて地球の隅々にまで拡がったグローバリゼーションも当然の成り行きとして臨界点に達し、膨張は収縮に反転する、ということです。

 

 

 

本書は以下の8部構成から成っています。

 

 

1.はじめに-「閉じてゆく」時代のために

 

2.「国民国家」では乗り越えられない「歴史の危機」

 

3.例外状況の日常化と近代の逆説

 

4.生き残るのは「閉じた帝国」

 

 

5.ゼロ金利国・日独の分岐点と中国の帝国化

 

6.「無限空間」の消滅がもたらす「新中世」

 

7.日本の決断-近代システムとゆっくり手を切るために

 

8.おわりに-茶番劇を終わらせろ

 

 

 

この本の冒頭で著者は、「資本主義の終焉」という「歴史の危機」を乗りこえるために、このあと世界は100年近くかけて移行していくのは「閉じた帝国」が複数並び立つ世界システムだ、と提唱しています。

 

 

とくに現在の日本は、歴史家フェルナン・フローデル「長い16世紀」と呼んだ大転換期における超低金利の時代に匹敵する「長い21世紀」のさなかにある、と本書では述べています。

 

 

かつての「長い16世紀」に起きた大転換とは、「陸」の中世封建システムから「海」の近代世界システムへの変化でした。

 

 

そして、「21世紀の超低金利」は、5000年も続いた資本の「蒐集」の歴史の終わり、つまり「資本主義の終焉」だと著者は述べています。

 

 

本書では次に、「ゼロ金利」「テロリズム」という2つの「例外状況」を考察しています。

 

 

そして、アメリカ金融・資本帝国EUの「閉じた帝国」との比較分析が採り上げられ、日本とドイツの比較中国の帝国化についても説明されています。

 

 

さらに本書の後半では、「長い16世紀」以来の、閉じた帝国である「地域帝国」の時代が到来することが説明されています。

 

 

この本と著者の水野和夫さんの前著『資本主義の終焉と歴史の危機』は、ゼロ金利がなぜかくも長期にわたって続くのだろうという疑問に対するひとつの回答を示した、と著者は述べています。

 

 

あなたも本書を読んで、資本主義の終焉と、閉じてゆく帝国の時代について考えてみませんか。

 

 

 

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では、今日もハッピーな1日を

 

 

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