「なぜ定年が不安なのかということから考え始め、定年についてどんな準備が必要なのか」について考えていく本があります。
本日紹介するのは、京都大学大学院文学研究科博士課程を満期退学(西洋哲学史専攻)、さらに1989年よりアドラー心理学を研究し、古賀史健氏との共著『嫌われる勇気』(ダイヤモンド社)がベストセラーとなった岸見一郎さんが初めて書いた「定年論」である、こちらの書籍です。
岸見一郎『定年をどう生きるか』(SB新書)
この本は、定年後の準備として、「人はなぜ生きるのか、どう生きるのか」という哲学の中心的なテーマについて考察し、プラトン、マルクス・アウレリウス、三木清らの先人の言葉を引き、とりわけアドラーの考え方、対人関係のあり方に依拠して、現在に通じる考えを提示している書です。
本書は以下の6部構成から成っています。
1.なぜ「定年」が不安なのか
2.定年に準備は必要か
3.あらためて働くことの意味を問う
4.家族、社会との関係をどう考えるか
5.幸福で「ある」ために
6.これからどう生きるのか
この本の冒頭で著者は「お金や健康だけが不安なのではない」と述べています。
そして、次の2点を、定年後の多くの人が感じる不安だとしています。
◆ 居場所があると感じられないこと(所属の欲求が満たされなくなる)
◆ 仕事から離れると、もはや自分に価値があると思えなくなる
そして、アドラーの言葉「あらゆる悩みは対人関係の悩みである」を紹介し、定年の前と後に価値的な優劣があるわけではない、としています。
確かにその通りですが、私が拙著『定年後不安 人生100年時代の生き方』(角川新書)にて提言したのとは、異なる考え方です。
私は、多くの「幸福に関する研究」の成果が示しているように、「仕事の幸福」こそが、価値ある人生と感じるための最も基本的な要素であり、他の「人間関係の幸福」「経済的な幸福」「心身の健康の幸福」「地域社会の幸福」のすべての基盤になる、最も根源的な幸福だと考えているからです。
そのほか本書では、定年について、以下のような考え方をすべきと指摘しています。
◆ 会社という組織に属さなくなると、誰からも注目されなくなるというのではなく、あらゆる人間関係は対等
◆ 人は「今ここ」を生きているので、未来のことを考えても意味がない
◆ 人間の価値を生産性で見ない
◆ 何かをしなければならないという思いから脱却しなければならない
◆ 縦の関係から横の関係へ
◆ 自分に価値があると思える時にだけ、勇気が持てる
◆ 自分のありのままを受け入れ、自分に価値があると思えるために必要なことは「貢献感を持つ」こと
◆ 人は幸福に生きるために働く
◆ 仕事は何のためにするのかといえば、他者貢献である
◆ 人はいつでも幸福、何かを達成していなくても、幸福はそうしたこととは関係ない
◆ 知識を得ることは生き方そのものが変わること
◆ 読書には人生を変える力がある
◆ 人は教えている間、学んでいる
◆ 人に教えることで、貢献感を持つことができる
◆ 定年について考えることは、生きることについて考えること
この本の最後で著者は、「人間の価値は生産性にではなく、生きることにあるということです。」と結論を述べています。
あなたも本書を読んで、「定年をどう生きるか」について考えてみませんか。
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では、今日もハッピーな1日を!