「人生で3つの仕事や会社を経験する時代」に入ると提唱している本があります。
本日紹介するのは、1970年茨城県生まれ、慶應義塾大学卒業後、金融機関や官公庁を経て、現在は経営・金融のコンサルティング会社「アセット・パートナーズ株式会社」の経営アドバイザー、経済アナリストとして活動する中原圭介さんが書いた、こちらの書籍です。
中原圭介『定年消滅時代をどう生きるか』(講談社現代新書)
この本は、「人生100年時代」を豊かに生きる基本は、「仕事を楽しむ能力」を身につけることだと提唱し、人生のなかで異なる仕事を何回も経験できる機会が増えていくという変化を楽しもうとする未来志向を薦める書です。
本書は以下の7部構成から成っています。
1.はじめに
2.日本から「定年」が消滅する
3.大きく変わる企業の採用
4.トヨタ「採用の半数が中途」の衝撃
5.人材育成の仕組みを再構築する
6.これからを生きるための最大の武器
7.おわりに
この本の冒頭で著者は、「これから10~20年後のことを見据えて、政府は企業の雇用義務を75歳まで延長し、事実上の定年消滅時代=生涯現役時代へのシフトを進めています。」と述べています。
そうした時に私たちに求められるのは、転職で引き合いが強いキャリアやスキル、仕事への情熱や積極性だと著者は言います。
だからこそ、仕事を日々こなしながら、学び直しの時間を作ること、満ち満ちた好奇心を持ちながら、謙虚に学ぶ姿勢を徹底している人は貴重な人材として成長する、ということです。
現在はデジタル技術の飛躍的な発展によって、私たちはやる気次第で3年もあれば、専門家としてひとつのスキルを習得することができると言います。
会社員生活が企業の寿命の2.5倍を超える世の中でも、トータル9年で3つの分野の専門家(プロ)になることで、何一つ恐れる必要はない、というのが著者の中原さんが提唱していることです。
これは、藤原和博さんが説いている「クレジットの三角形」を作って、100万人に1人のレアな人材になる、という考え方と同じコンセプトです。
また、私が昨年4月に出版した『定年後不安 人生100年時代の生き方』(角川新書)にて提唱した、働く期間を3つに分ける「トリプル・キャリア」にも通じるものがあります。
この本では、日本の生産年齢人口(15歳~64歳人口)が急激に減少していくことを数字で示し、国民負担の大幅な増加という背景において、定年の引き上げ(=「高齢者の定義」の変更)の必然性とメリットを解説しています。
いわゆる「シルバー民主主義」(人口が多く、投票率も高いシルバー層に有利な政策ばかり実現する社会)によって、年金や医療など社会保障制度が持続不可能なほど高齢者に手厚くなってしまっています。
私も基本的には著者の予測の通り、定年も年金支給開始年齢も、遠くない将来に75歳に引き上げられると見ています。
また本書で紹介している年金制度の歴史も興味深い事実を伝えています。世界で初めて公的年金制度を作ったのは、ドイツ帝国の初代宰相ビスマルクで、1889年当時のドイツの平均寿命47歳に対して、年金の支給開始年齢は満70歳と定められていました。
つまり、国民の大部分は年金制度の恩恵を受けることはできず、国民は国家に奉仕すべきという考え方で作られていたのです。
第二次世界大戦後の欧州では、年金制度が豊かな老後生活を送るための国民の既得権益と化し、選挙の結果を大きく左右する要因になりました。
一方、日本の公的年金制度が始まったのは1961年で、当時の日本人の平均寿命は男性66.03歳、女性70.79歳でした。60歳から始まる厚生年金の受給期間は、男性で6.0年、女性で10.8年しかなかったのです。
公的年金制度が発足した当時の考え方に立てば、現在の日本人の平均寿命(男性81歳・女性87歳)を勘案すれば、すぐに年金支給開始年齢を75歳にしてもおかしくないという計算になります。
今後の平均寿命の延びを考えれば、いずれ「年金は80歳から10年程度もらうもの」になるでしょう。だから、「定年消滅」すなわち「生涯現役」なのです。
この本の中盤では、大きく変わる企業の採用や人事制度について記されています。ポイントは以下の通り。
◆ 新卒一括採用から通年採用へ(大企業の4分の1が通年採用に)
◆ 中途採用の増加、トヨタは採用の半数を中途に
◆ 終身雇用制度の崩壊
◆ 年功序列型の給与制度を突き崩したIT人材の高額報酬
◆ 50年の会社員人生で転職2回の時代
◆ 仕事と人生を何度でもやり直せる世界
さらに本書の終盤では、人材育成の仕組みを再構築するポイントとこれからを生き抜く最大の武器について、次に通り書かれています。
◆ 問われる大学の存在価値
◆ アメリカのトップ大学の学生は4年間で1,000冊の読書、日本の大学生はスマホでゲーム三昧
◆ リカレント教育の活用
◆ 異分野の英知結集によるオープンイノベーション
◆ 頭を「使う人」と「使わない人」の経済格差
◆「読解力」と「論理力」を身につけるには、読書の量と幅しかない
◆ 暗記ではなく体系的に理解する
◆ 直感力のある経営者になるには「考え抜く」ことが重要
この本の最後で著者は、「人生に何回もチャンスが訪れる社会」になると述べています。今後は「就職氷河期世代」のような悲劇は生まれなくなるでしょう。
あなたも本書を読んで、定年消滅時代(=生涯現役時代)をどう生きるかをしっかりと考えてみませんか。
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では、今日もハッピーな1日を!