この6~7年間、定年退職前後の人を中心に取材を続けてきて、「一定額の退職金や年金を受け取っているにもかかわらず、自分の楽しみにお金を使っているイメージが湧かない人が少なくなかった」「苦労して働いて貯めたお金を有効に使わないまま死んでしまうリスクもあるのではないか」と述べている本があります。
本日紹介するのは、1954年神戸市生まれ、京都大学法学部卒業、生命保険会社にて人事・労務関係を中心に定年退職まで勤務し、現在は神戸松陰女子学院大学教授の楠木新さんが書いた、こちらの書籍です。
楠木新『定年後のお金-貯めるだけの人、上手に使って楽しめる人』(中公新書)
この本は、3年前の著書『定年後-50歳からの生き方、終わり方 』(中公新書)および前著『定年準備-人生後半戦の助走と実践』(中公新書)にて、サラリーマンに対して50歳ぐらいから、「会社員の時分」のほかに、自分の個性に合った「もう一人の自分」を創ることを勧めてきた著者が、人生100年時代と言われる長寿化の時代には、お金を貯めることだけでなく、お金を使いながら人生を楽しむことについて記した書です。
本書は以下の8部構成から成っています。
1.プロローグ お金と幸せを一緒にするな
2.老後不安の正体-原因はお金ではない
3.財産増減一括表-まず自分の財産を知る
4.固定費を見直す-使わなければお金は貯まる
5.老後不安と投資は切り離せ-投資はそれほど重要ではない
6.老後資金は収支で管理-資産寿命をどう延ばすか
7.お金を有効に使う-人間関係に投じる
8.あとがき
この本の冒頭で著者は、会社は意識が作り出した幻想なので、それに縛られすぎでは視野が狭くなる、と指摘しています。
著者の楠木新さんは、多くのシニア社員や定年退職者を取材していますが、充実した生活を送っている人の中で、何年も先のことを考えながら生活している人はほとんどいない、と述べています。
「老後のお金をどう貯めるか?」について、多くの人の家計相談に応じてきて著作も多い横山光昭さんは、以下の2通りの考え方がある、と整理しています。
◆「未来」を見据えて、そこから逆算して「月いくら貯めればよいか?」という考え方
◆「今」を見直し、そこからスタートして貯金を積み立てていく考え方
一見すると、前者の考え方の方が目標が明確で貯まりやすいように思えるが、実は未来は不確定な要素が多いため、後者の「今」を見直すほうが貯蓄額が大きく増えていく、ということです。
また、「定年後のお金」をどうするかを何回も議論した著者が主催する研究会では、最終的な解決法は、「元気で明るく生涯現役で働く」ということに落ち着いたそうです。
それは、一昨年出版した拙著『定年後不安 人生100年時代の生き方』(角川新書)で私が提唱している結論と同じです。
続いて本書では、「財産増減一括表」という著者がずっと使用してきた、家計のバランスシートを半年ごとに時系列で比較する手法を紹介しています。
個人の家計の場合は、会社のバランスシートに比べればシンプルですが、表の左側の「資産」をどういう形で持ち、右側の「負債」と、その差し引きである「純資産」を把握し、半年ごとにその推移を見ていくことが大切、と著者は提唱しています。
定年後のお金を考える際に、この「財産増減一括表」が本書には繰り返し登場するので、著者が最も重視している考え方なのでしょう。
「財産増減一括表」の詳細については、この本を手に取って確認してください。
次に、家計にいては「固定費を見直す」ことが重要だと説いています。保険料、通信費、その他不要不急の定期的な費用、車所有にかかわるコストも例として挙げています。
つまり、資産寿命をいかに延ばしていくかということになりますが、人生は有限であり、主体的にお金を使って楽しめるのは75歳くらいまでなので、お金を貯めることだけでなく、お金を使って人生を楽しむことを本書では勧めています。
その際にチェックするポイントが「財産増減一括表」の推移なのです。
老後資金は「収支管理」が最も大切で、ぞれを「財産増減一括表」の推移を見ながらチェックしていく、ということです。
この本の最後で著者は、「お金を有効に使う」ことについて記しています。
あなたも本書を読んで、「定年後のお金」について、じっくりと考えてみませんか。
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では、今日もハッピーな1日を!