明治以降130年以上にわたって、我が国に馴染みの深かった単一通貨簿記のほかに、「もう一つの簿記」である多通貨複式簿記について論じた本があります。
本日紹介したいのは、一橋大学商学部にて飯野利夫教授の弟子となり、卒業後は日本興業銀行に入行して、同行の多通貨複式簿記の採用に大きな貢献をした、野坂照光・東京SPCマネジメント(株)代表取締役社長が書いた、こちらの書籍です。
野坂照光『多通貨複式簿記論』(税務経理協会)
この本は、2001年に初版が上梓されたのち、2008年に増補版として出版されたものです。
その間に、日本を含む世界経済は、原油・穀物価格の高騰、マーケットの巨大化、IT革命の普及、BRICSなど資源国の成長、ファンドのスピーディーな国際移動など、大きな環境変化がありました。
また、国際通貨動向としては、2008年までは、基軸通貨UDドルの軟調、ユーロの堅調、人民元の台頭、円の弱体化、資源国通貨のデビューなど、多種類の外貨取引が活発化してきました。
本書は以下の6部構成から成っています。
1.なぜ、いま多通貨複式簿記か
2.多通貨複式簿記の意義と必要性
3.多通貨複式簿記と多通貨会計
4.多通貨複式簿記の記帳技術
5.多通貨複式簿記が有する今日的理論問題
6.結論
この本は、多通貨複式簿記の理論面と実務面にともに精通する著者ならではの切り口で書かれています。
つまり、商法(当時・現在は会社法)、証券取引法(当時・現在は金融商品取引法)、税法の企業会計3法において、この多通貨複式簿記が、公式に、積極的に、かつ妥当性を旨として認知されることを期待して書かれました。
本書を通読すれば、多通貨複式簿記に関するすべての論点が網羅されている、と言えるでしょう。
理論面としての、多通貨複式簿記の意義と必要性から始まり、多通貨複式簿記と多通貨会計の違いについても説明されています。
さらに、実務面としての多通貨複式簿記の記帳技術として、仕訳事例、手続面、エクスチェンジ取引とノンエクスチェンジ取引、精査表、帳簿価額と測定通貨、帳簿組織、勘定科目、連結会計などについて解説されています。
そして、多通貨複式簿記について、今日的理論問題として、会計思考や分類、たな卸資産の会計処理、取引基準の問題などを著者は挙げています。
最後に本書の結論として、多通貨複式簿記に関する今後の対応について、著者の試案が披露されています。
巻末には、「補遺」として、会計における蓄積利益と通貨戦略について書かれており、多通貨複式簿記の活用によって、企業の財務内容を健全化するよう、著者は提言しています。
この本は、いわゆる専門書に属するために、国際業務に携わり、且つ、会計知識を持った読者でないと理解が難しい面があります。
あなたも本書を読んで、多通貨複式簿記の重要性について、改めて初歩から上級理論までを学んでみませんか。
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では、今日もハッピーな1日を