「現代社会における時間の使い方は、生物としての人間の心身の特徴に対応したものではありません。また、社会や環境の持続可能性を考慮しても、人間の心身の特性に合わせた、時間との付き合い方、時間の使い方を考えるべきだと思います。」と述べている本があります。
本日紹介するのは、1965年宮崎県生まれ、大阪市立大学文学研究科後期博士課程修了後、カナダYork大学研究員、山口大学工学部感性デザイン工学科講師・助教授、千葉大学文学部助教授・准教授を経て、2013年より千葉大学大学院人文科学研究院教授、博士(文学)の一川誠さんが書いた、こちらの書籍です。
一川誠『仕事の量も期日も変えられないけど、「体感時間」は変えられる』(青春出版社)
この本は、時間との付き合い方について、個人レベルでの調整のために役に立ちそうな、人間の心身の特性についての認知心理学や周辺諸科学の知見やアイデアを紹介している書です。
本書は以下の6部構成から成っています。
1.あっという間に過ぎる時間と、ゆっくり進む時間があるのはなぜか?
2.「体感時間」が伸びたり縮んだりするしくみは、こうなっている
3.実験と研究で判明! 人はこれほど時間の流れを「勘違い」していた
4.これでもう、あせらなくて済む! 時間に追われない「働き方テクニック」
5.スピード社会の現代で「自分の人生時間」を取り戻すには?
6.限りのある人生を充実させるための「時間の哲学」
この本の冒頭で著者は、時間には、「物理的な時間」と「心理的な時間」がある、と述べて、1つ目は「時計によって計測できる物理的な時間」、それとは違うもう1つの時間が「感じられる時間」であると説明しています。
本書の前半では、「あっという間に過ぎる時間と、ゆっくり進む時間があるのはなぜか?」および「体感時間が伸びたり縮んだりするしくみは、こうなっている」について、以下のポイントを解説しています。
◆ スマホの1時間より、山歩きの1時間のほうがゆっくり感じられる
◆ 身体の代謝が激しい時は細胞が活動的で体温が上がり、「心理的な時計」は速く進む
◆ 退屈な会議は、時計を見るほど、時間が長く感じられる
◆「狭い空間」にいるほど、時間が早く過ぎていくように感じられる
◆「広い」「明るい」「音が大きい」環境で過ごすと。体感時間は長くなる
◆ 1日を振り返る「反芻の時間」を持たないと、時間は記憶に残らなくなる
◆「時間学」とは、物理学、社会学、心理学、哲学など多様な観点から成る
◆ 人間は「時間の長さ」を、お手軽なルールで判断している
◆ 身体の代謝が激しい(身体が小さい)ほど、時間は長く感じられる
◆ 子どもの1日の体感時間が長いのは、毎日が「初めて」だらけだから
◆「体験される出来事の数」も体感時間に影響する
◆ 「ピークエンドの法則」という心理現象も「体感時間」に影響する
この本の中盤では、「実験と研究で判明! 人はこれほど時間の流れを勘違いしていた」および「これでもう、あせらなくて済む! 時間に追われない働き方テクニック」について説明しています。主なポイントは次の取り。
◆ 洞窟や宇宙で暮らすと、「1日25時間の生活リズム」になっていく
◆「朝型」「夜型」「中間型」などのクロノタイプに合わせた生活をすること
◆ サーカディアンリズムに合わせた業務への取り組みを
◆ 曜日ごとの計画を立て、自分の「1週間のリズム」を作る
◆ 高い集中力を発揮するのは、外部の刺激」を遮断
◆ 時間が止まったように感じる究極の集中状態「フロー」
◆ 土日の体感時間を伸ばしてリフレッシュ
◆「ハレの時間」「リアルの体験」などで時間を伸ばす
本書の後半では、「スピード社会の現代で自分の人生時間を取り戻すには?」および「限りのある人生を充実させるための時間の哲学」について考察しています。主なポイントは以下の通りです。
◆ 資本主義で、時間は厳密化・高速化・均質化していく
◆ 時間や暦を司ることは支配者層にとって重要なこと
◆ 産業革命で、「タイム・イズ・マネー」に
◆ 時間を貯蓄銀行に貯めると、命が倍になる
◆ したいことノートで、人生で自分がやりたいことを整理する
◆ 時間をどう使うかは、「自分の人生をどう生きるか」ということ
◆ 失敗しない人生より、失敗しても、自分の意思で「道」を選ぶ人生を
◆ 夢の中で、実際よりも長い「体感時間」を味わう
◆「時間の不思議」は解明されていないことばかりだから面白い
この本の巻末には、「クロノタイプ診断表」が掲載されていて、自らのタイプを診断することができます。
あなたも本書を読んで、「体感時間」の仕組みを理解し、時間に追われる人生から、毎日ゆとりのある人生に転換してみませんか。
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では、今日もハッピーな1日を!【2928日目】