書評ブログ

『失語症を解く 言語聴覚士が語ることばと脳の不思議』

失語症という、「言語を習得した後に脳損傷によって言語機能が低下した状態」の患者を治療、リハビリテーションをサポートする言語聴覚士の仕事について記した本があります。

 

 

本日紹介するのは、神戸大学医学部保健学科教授で、医学博士(神経心理学が専門)言語聴覚士関啓子さんが書いた、こちらの書籍です。

 

 

関啓子『失語症を解く 言語聴覚士が語ることばと脳の不思議』(人文書院)

 

 

この本は、失語症について正確な理解を得るために書かれたものです。失語症は世間ではよく誤解されていて、例えば精神的なショックなど心理的要因だけで失語症になると思われたり、先天性障害や発達障害と混同されたりします。

 

 

しかし、失語症は脳の損傷の後遺症であり、言語獲得後の言語機能の低下なので、多くは成人に見られる症状です。

 

 

 

本書は以下の10部構成から成っています。

 

 

1.宇宙語を話す患者さん

 

2.三年後の中村さん

 

3.名を捨てて実を取る

 

4.十人十色

 

5.この一言が私のすべて

 

 

6.言葉の引き出しが見つからない

 

7.ウソのようなホントの話

 

8.失語があると半人前?

 

9.一度あることは二度ある

 

10.失語症とともに生きる

 

 

 

この本の冒頭で著者は、自らが言語聴覚士を目指すきっかけとなった出来事を記しています。

 

 

著者のエピソードを読んでいて驚かされたのは、失語症の方は「病識低下」という症状を持っていて、自分に異常があることに気づいていないという事実です。

 

 

脳の損傷により言語機能が働いていないため、病気という認識がなく、「よくなろう」という気持ちも起こらないのです。

 

 

失語症はどの程度、回復するものなのか、という点が最も本人も家族も気になるところですが、本書によれば、完全に元に戻ることは難しい、ということです。

 

 

回復する速度も、脳の損傷が起こってからの時期によって3段階に分かれ少しずつ回復するのが一般的なようです。

 

 

この本の中盤以降では、失語症のタイプ別に特徴が解説されています。

 

 

なかなか理解されにくい病気であることに加え、誤解を招きやすい症状であることから周囲の方の対応は難しく「失語患者への接し方で注意する点」として、著者は整理して示しています。

 

 

 

著者が専門とする神経心理学は、失語や失行、失認、半側空間無視、記憶障害などの症状から脳の機能を考える学問で、理学療法士作業療法士言語聴覚士として現場でリハビリテーションに携わっている(または携わろうとしている)人たちが学びます。

 

 

言語聴覚士という仕事は世間であまり知られておらず、この本でようやくその役割や重要性が理解できました。

 

 

コミュニケーションは人間関係の基本であり、能の損傷によってコミュニケーションが円滑にできなくなる症状からのリハビリテーションは、社会的にも大きな意義を持った仕事だと感じました。

 

 

民間の調査機関の推計では、失語症の患者は全国で約50万人いるとされており、30歳から50歳の働き盛りの男性に多いのが特徴です。

 

 

欧米に比べて世間の認知度が低く、ぜひ多くの方に「失語症」について、正確な知識を得てもらいたく、この本を推薦します。

 

 

あなたも本書を読んで、失語症や、そのリハビリテーションに取り組む言語聴覚士の仕事について、理解を深めてみませんか。

 

 

 

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では、今日もハッピーな1日を

 

 

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