イギリス人アナリストが提言する日本の21世紀の「所得倍増計画」があります。本日紹介するのは、デービッド・アトキンソンさんが書いた、こちらの新刊書です。
デービッド・アトキンソン『新・観光立国論』(東洋経済新報社)
この本は、日本に25年間住むイギリス人アナリストが、日本の今後のあるべき姿を冷静に分析・考察した、示唆に富む書です。今後、少子高齢化により人口が急減していく日本がどう成長すればよいかの処方箋が書かれています。
まず冒頭に、「短期移民」という考え方が提示されます。これは、カナダやイギリス、アメリカなどが移民の受け入れによって人口を増やし成長を維持してきた政策が、日本では受け入れえられないだろうという前提で考察されたものです。
「短期移民」とは消費者として短期滞在をする人々、すなわち「外国人観光客」を増やす、ということです。「観光立国」という道が日本には施策として残されているのではないでしょうか。
本書の全体を通して、著者のデービッド・アトキンソンさんは冷静な分析・議論を展開していますが、それはアナリストという職業もありますが、イギリス文化の伝統だとしています。
イギリスでは次のような「ことわざ」が古くから伝えられているそうで、著者も子どもの頃から親や周囲の大人から言われて育った、ということです。
Sticks and stones may break my bones, but words will never harm me.
(石や杖を投げられたら骨が折れるかも知れないけれど、言葉にはその力はない。)
つまり、何と言われても手を出したり過剰に反応したりすることなく、意見として冷静に受け止めるべきである。その上で、その意見を受け入れるかどうかは自分で決めることが大切であり、何か反対意見を言われただけで、心や態度を変えてはならない、という教えです。
さすがに、民主主義の伝統が長い「おとなの国」イギリスの文化だなあ、と思います。世界では、文化の「多様性」を認めていくことがこれからますます大切になっていくでしょう。
さて、本書は以下の8部構成から成っています。
1.日本を救うのは「短期移民」である
2.なぜ「短期移民」が必要なのか
3.日本人だけが知らない「観光後進国」ニッポン
4.「観光資源」として何を発信するか
5.「おもてなしで観光立国」に相手のニーズとビジネスの視点を
6.観光立国のためのマーケティングとロジスティクス
7.観光立国のためのコンテンツ
8.2020年東京オリンピックという審判の日
以上の構成で著者は、「日本は観光大国になるだけのポテンシャルがありながら、それをなかなか活かせていない」ことをもったいないと感じ、本書を執筆しました。
産業として力を入れてこなかった分野なので仕方がない面もあります。日本は、①気候、②自然、③文化、④食事、という観光立国の4条件をすべて備えているので、それだけ成長の余地があります。
「観光立国」というのは何か一つの特徴を打ち出して世界に発信することができれば、ある程度の外国人観光客を集めることはできます。
しかし、それだけでは「観光大国」にはなれません。「観光大国」になるには、多種多様な観光が存在する中で複数の観光を提供できる国こそが「観光大国」になりえるのです。
また、「観光大国」というのは、「何度行ってもきりがない」と外国人観光客に思わせることができる国です。「まだまだ遊び足りない」、「まだまだ観光したいスポットがたくさんある」、「今度きたときはチャレンジしたい食事や体験がある」というふうに思わせることができる国です。
日本はまだまだ、そうはなっていませんが、それだけに成長する余地が大いにある。それこそが著者が本書で伝えたかったことだ、と最後に述べています。
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では、今日もハッピーな1日を!