書評ブログ

『資本主義の終焉と歴史の危機』

「16世紀以来、世界を規定してきた資本主義というシステムがついに終焉に向かい、混沌を極めていく」と説いている書があります。

 

 

本日紹介したいのは、日本大学国際関係学部教授で、経済学博士の水野和夫さんが書いた、こちらの新書です。

 

 

水野和夫『資本主義の終焉と歴史の危機』(集英社新書)

 

 

この本は、資本主義の最終局面にいち早く立つ日本という認識のもとで、世界的史上、極めて稀な「長期にわたるゼロ金利」という状況を分析し、資本を投資しても利潤の出ない資本主義の「死」だとしています。

 

 

16世紀以来、世界を規定してきた資本主義というシステムがついに終焉に向かい、混沌をきわめていく「歴史の危機」に直面しています。

 

 

また、世界経済だけでなく、国民国家をも解体させる大転換期に我々は立っている、と著者の水野さんは言います。

 

 

 

本書は以下の7部構成から成っています。

 

 

1.資本主義が死ぬとき

 

2.資本主義の延命策でかえって苦しむアメリカ

 

3.新興国の近代化がもたらすパラドックス

 

4.日本の未来をつくる脱成長モデル

 

5.西欧の終焉

 

6.資本主義はいかにして終わるのか

 

7.豊かさを取り戻すために

 

 

本書の冒頭で著者は、「もはや地球上のどこにもフロンティアが残されていない」から、資本主義の死期が近づいているのではないか、と提唱しています。

 

 

資本主義は「中心」と「周辺」から構成され、「周辺」つまり、いわゆるフロンティアを広げることによって「中心」が利潤率を高め、資本の自己増殖を推進していくシステムです。

 

 

しかしながら、21世紀の現在は、世界的に「利子率の低下」に見舞われ、とくに日本がその先頭を走って低金利を続けてきました。

 

 

こうした状況は、歴史家のフェルナン・ブローデル中世封建システムから近代資本主義システムへ転換する時期を、「長い16世紀」と呼んだことに酷似している、と著者は言います。

 

 

 

現在は、中世から近代への転換期に匹敵する、500年に一度、ないしは13世紀に利子率がローマ教会によって公認され、資本家が誕生して以来の大転換の時期だということです。

 

 

著者の水野さんは、「地理的・物的空間」に見切りをつけた先進国の資本家たちが、米国が主導する「電子・金融空間」という新たな空間をつくり、利潤極大化という資本の自己増殖を継続しているのは無理な資本主義の延命措置だ、としています。

 

 

しかしそうした中で、グローバリゼーションが加速したことで、雇用者と資本家は切り離され、資本家だけに利益が集中していきます。

 

 

資本主義には「周辺」の存在が不可欠であり、途上国が成長し新興国に転じれば、新たな「周辺」が必要になってきます。

 

 

それがアメリカで言えば、サブプライム層であり、日本では非正規労働者であり、EUで言えばギリシャやキプロスなのです。

 

 

水野さんは、こうした転換期の状況をブローデルの「長い16世紀」にちなんで、「長い21世紀」と呼びました。

 

 

本書では、資本主義が終焉に近づきつつある中でもっとも重要な点として、「中間層が資本主義を支持する理由がなくなってきていること」を挙げています。

 

 

自分を貧困層に落としてしまうかも知れない資本主義を維持しようというインセンティブがもはや生じない、と著者は指摘しています。

 

 

本書ではその後にも、さまざまな資本主義をめぐる変化や今後の見通しが書かれていて興味深い分析が続いています。興味ある方はぜひ本書を手にお取りください。

 

 

あなたも本書を読んで、資本主義の終焉について、真剣に学び準備をしていきませんか。

 

 

 

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では、今日もハッピーな1日を

 

 

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