「流通業界の『勝ち組』『優等生』などと呼ばれたセブン&アイに一体何が起きているのか。その舞台裏に可能な限り迫ったつもりだ。」と述べている本があります。
本日紹介するのは、1970年生まれ、大学卒業後、NHKに入社、記者として事件取材を担当後、ダイヤモンド社に入社、経済誌で流通、商社、銀行、不動産業界などを担当する傍ら週刊ダイヤモンドで特集制作に携わり、2020年11月、東洋経済新報社に入社、現在は週刊東洋経済副編集長の田島靖久さんが書いた、こちらの書籍です。
田島靖久『セブン&アイ 解体へのカウントダウン』(東洋経済新報社)
この本は、日本初の売上高11兆円という巨大流通グループが、「一代の壁」という流通業のジンクスの通り、ダイエーやセゾングループのように、創業者または中興の祖一代限りでその命が尽きてしまうのかどうかという分岐点に来ていることを綿密な取材のもとに描き出しているドキュメントの書です。
本書は以下の7部構成から成っています。
1.61年ぶりのスト突入
2.史上最悪のディール
3.売却延期の〝犯人〟
4.大激震のセブン&アイ
5.そごう・西武の大いなる「勘違い」
6.「百貨店」は生まれ変われるのか
7.狙われるセブン&アイ
この本の冒頭で著者は、『週刊東洋経済』2023年5月20日号「最高益に忍び寄る影 漂流するセブン&アイ」という特集に加えて、「東洋経済オンライン」で執筆した様々な記事をベースに、多くの関係者への追加取材を行ってまとめた本です。
本書の前半では、「61年ぶりのスト突入」および「史上最悪のディール」について以下のポイントを説明しています。
◆ 百貨店として61年ぶりのストに組合員の9割以上が賛成したそごう・西武
◆ フォートレスへの譲渡は、事実上、ヨドバシHDによる「トンネル買収」
◆ そごう・西武のM&Aは、ブラックストーンが辞退した「史上最悪のディール」との声
◆ ISP買収で、池袋駅の地下でヤマダとビックの客を「通せんぼ」できるヨドバシ
この本の中盤では、「売却延期の〝犯人〟」「大激震のセブン&アイ」および「そごう・西武の大いなる勘違い」について解説しています。主なポイントは次の通りです。
◆ そごう・西武労組、地権者である西武HD、地元自治体の豊島区の承諾が買収の条件
◆ 豊島区は池袋を「国際アート・カルチャー都市」を標榜して再開発する計画
◆「池袋西武はコンビニの棚のようには簡単に動かせない」との反旗
◆ 7Payで失敗した人材をそごう・西武の売却でも責任者に起用
◆ けん制機能を発揮できなかった社外取締役
◆ 優しいアクティビスト「バリューアクト」が起こって株主提案
◆ 鈴木体制の下で「治外法権」となっていたそごう・西武の役員陣による改革遅れ
◆「井坂の乱」で鈴木失脚後も手を付けられなかったそごう・西武の改革
本書の後半では、「百貨店は生まれ変われるのか」および「狙われるセブン&アイ」について説明しています。主なポイントは以下の通りです。
◆ 閉店ドミノで百貨店ゼロ県が4県、1店舗の予備軍は14県も
◆ 百貨店の富裕層シフトが鮮明に、狙うは若手起業家
◆ カナダのアリマンタシフォンからのセブン&アイ買収提案
◆ MBOによる非公開化の買収防衛策まで浮上する混乱
この本の締めくくりとして著者は、「アリマンタシフォンからの提案に端を発したセブン&アイの買収劇は、創業家主導のMBOによる株式非公開化、アリマンタシフォン傘下入り、そして単独での成長策という三つのシナリオを軸に進むことになった。」と述べています。
あなたも本書を読んで、セブン&アイや日本の流通業の未来を考えてみませんか。
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では、今日もハッピーな1日を!【3605日目】