「“シニア” という言葉ほど、多様な実態を覆い隠しているラベルはない。」――そんな問題提起から始まり、デジタル時代の “本当の高齢者像” を明らかにする一冊があります。
本日紹介するのは、1977年生まれ、慶應義塾大学商学部卒業後に博報堂に入社し、若者研究の第一人者として数々のトレンド分析を手がけ、現在は芝浦工業大学デザイン工学部教授、信州大学特任教授として教壇に立つマーケティングアナリスト・原田曜平(はらだ・ようへい)さんが書いたこちらの書籍です。
原田曜平『「シニア」でくくるな! “壁” は年齢ではなくデジタル』(日経BP社)
この本は、「団塊の世代」がすべて後期高齢者となる2025年を目前に、急拡大する “高齢者マーケット” をマーケティングの視点から捉え直した書です。
著者はこれまで若者世代の分析で培った手法を応用し、独自調査を通じて「シニア=高齢・非デジタル」という固定観念を覆します。
そこに浮かび上がるのは、「健康・お金・人間関係」において優位な “デジタル高齢者” の存在。年齢ではなく“デジタルの壁” こそが、新たな分断線であることを明らかにします。
本書は以下の6部構成から成っています。
1.アクティブシニア信仰はなぜ崩壊したのか?
2.タモリはキネマ、たけしは団塊、さんまはしらけ
3.高齢者調査から見えたのは “デジタルの壁”
4.高齢者は「8パターン」アプローチ法決定版
5.デジタル高齢者マーケティング実践編
6.特別対談 和田秀樹×原田曜平「80歳の壁」から見た“デジタルの壁”の重要性
本書の前半では、「アクティブシニア信仰の崩壊」と「世代ごとの価値観の違い」について解説しています。主なポイントは以下の通りです。
◆ “アクティブシニア=裕福で元気” という平成の幻想が崩れた
◆ 戦争を経験した世代と団塊世代では、消費マインドが全く異なる
◆ 企業が “中高年切り捨て” を進めた結果、市場の主役を見失った
◆ 実際は高齢者ほど支出意欲が高く、“金を使いまくる層” も多い
◆ 「団塊」「しらけ」「新人類」「バブル」――世代別ペルソナ理解が必須
この本の中盤では、「デジタルの壁」とは何かを、具体的データで解き明かします。主なポイントは次の通りです。
◆ “PC保有者”の高齢者は、非保有層よりも人付き合いが約20%多い
◆ 可処分所得の平均も “デジタル高齢者” の方が約20%高い
◆ 健康面・金銭面・人間関係すべてで “デジタルシニア” が優位
◆ デジタルリテラシーの有無が「孤立」と「つながり」を分ける
◆ 高齢者を「年齢」ではなく「デジタル適応度」で再分類すべき
本書の後半では、企業・行政・個人それぞれが “デジタル高齢社会” にどう対応すべきかを提示します。主なポイントは以下の通りです。
◆ 高齢者は「8つのペルソナ」に分類できる――“引退人生謳歌おじ” から “非自立デジタル難民” まで
◆ 「デジタル高齢者」に愛されるブランドづくりが企業の命運を左右する
◆ SNS・EC・動画を使いこなす高齢者層は、もはや “若者市場の延長”
◆ 「孫とのLINE」「ネット通販」「YouTube活用」が生活の質を高める
◆ “デジタルの壁” を越えることこそ、幸福で豊かな高齢期への第一歩
本書の魅力は、「シニア=弱者」という固定観念を排し、データで “高齢者の未来像” を描いている点にあります。著者はこう述べます。
「シニアマーケットの本質は、“加齢” ではなく “接続” である。」
つまり、情報・人・社会とつながる力を持った “デジタル高齢者” こそが、これからの日本を動かす存在になるというのです。
マーケティング担当者だけでなく、親の世代とどう関わるかを考えるすべての人にとっても、実践的なヒントに満ちた一冊です。
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では、今日もハッピーな1日を!【3906日目】










