「脳を装置として見立てると、脳は56歳で出力性能最大期を迎える」、「無駄なものを捨てていくのが、脳の最大のテーマである」と述べている本があります。
本日紹介するのは、昨日に続いて、人工知能の研究開発に従事した後、2004年に脳機能論とAIの集大成による語感分析法「サブリミナル・インプレッション導出法」を発表して、現在は感性分析の第一人者、(株)感性リサーチ代表取締役の黒川伊保子さんが書いた、こちらの書籍です。
黒川伊保子『成熟脳ー脳の本番は56歳から始まるー』(新潮文庫)
この本は、一生の脳科学について、著者が仮説として持っている「ことばは、今を生きることに必要でなくなったものから消えていく。」、「今とこれからを生きるために必要でないものを捨て去り、魂はきっと身軽になっていく。誰もが行く道である。」「脳には、その行き方が最初からプログラミングされているはずだ。」ということを分かりやすく解説している書です。
そして、脳を装置として見立てると、「脳は56歳で出力性能最大期を迎える」とし、無駄なものを捨てていくのが脳の最大テーマ、と述べています。
本書は以下の3部構成から成っています。
1.感じることば
2.一生の脳科学
3.「情」を科学する
この本には、脳科学の研究や人工知能の研究から分かった真実が、具体的な事例を通して説明されており、興味深く考察できます。
例えば、次のような事例や見解には興味が引き付けられます。
◆ マクロン仏大統領(就任時39歳)の妻は25歳年上の64歳・ブリジットで、フランス人たちはみな「マクロンは、ブリジットの作品だよ」と一様に口にする
◆ AIシンギュラリティのことを聞かれたら「人工知能の能力は既に人類を超えているし、気にしなくていい」と答えている
◆ もうこの世にはプライバシーなんて存在しない。人は公明正大に生きるしかなくなった。
また、脳を装置として見立てた時の年齢別の特徴を次の通り、著者は説明しています。
◆ 人生最初の28年間: いちじるしい入力装置(新しいことをすらすら覚えられる)
◆ 最初の28年のうちの前半14年: 12年が子ども脳型(感性記憶力が最大限に働く)、2年の移行期(思春期の調整期間)
◆ 最初の28年のうちの後半14年: おとな脳型(類似記憶を引き出して、その差分だけを記憶する=単純記憶力が最大)
◆ 14歳が一生の感性の基盤
◆ 3歳までの脳(生まれた時の最大の脳細胞を劇的に減らす、合理的思考を可能にするために不要な感性を捨てる)
◆ どんな人間として生きていくかを3歳までに決める(三つ子の魂、百まで)
◆ 15歳~28歳の14年間: がむしゃらな繰り返しで高度なセンスが作れる時期、スポーツ能力、勉強や仕事のコツを身につける
◆ 28~56歳: 世の中を知り、試行錯誤や逡巡(失敗を積み重ねて脳が成長)
◆ 56歳: 脳の出力性能がピークに
◆ 56~84歳: 脳の出力性能最大期(もの忘れは生きるのに必要ないものを捨てる作業)
◆ 50歳代: 最高水準の優先順位、「本質」の回路
◆ 56歳を過ぎると、変わらない(困った56歳以上には近づかないこと)
◆ 60歳代: 理由のいらない納得、腹に落ちる
◆ 60~70歳代: 旅と習い事の好機
◆ 60歳代以上の人生の師を(成熟脳の直感)
◆ アラウンド80歳の脳: 問題をつまびらかにしなくても、答えが口を突いて出てくる
◆ 90歳以降の脳: 80歳代半ばを超えるとカーテンが開く(脳の一部が若返り、右脳と左脳を繋ぐ脳梁が再び太くなって復活)
◆ 90歳代の成熟脳は、若返ったみずみずしい感性で、もう一度この世を見る
◆ 90歳代の成熟脳は、人間の宝(その人にしか紡げない言葉を生み出す)
◆ 脳は112歳までの旅をしっかり用意している
こうした本書による「一生の脳科学」は、年を取ると脳細胞がどんどん減少し、記憶力が低下し、物忘れがひどくなり、ひいては認知症になる、というネガティブな脳に対する捉え方を一変させ、希望と勇気をもたらしてくれます。
とくに、現役のまま90歳代に突入すると、脳の一部が若返り、右脳と左脳をつなぐ脳梁という場所について、次のように主張する著者の見解は、すべてが理解できて勇気をもらえます。
「脳は成熟するにつれ、この脳梁を細くして、外界の影響を受けにくくする。自分の内的世界が充実して、直感で見事な答えを出せるからだ。(中略)しかし、90の声を聞き、脳が十分に成熟した後、もう一度、この意識の “ 水栓 ” を開くのである。」
またこの本では、「脳は、寿命を知っている」とも述べています。脳は自分の満年齢の整数倍の周波数の音に反応し、その中に寿命を示すものがある、と著者は言います。
脳科学者の角田信忠さんは、「ヒトは、脳のゴールを知っていて、そのゴールに合わせて、自分の脳や体を、静かに折りたたんでいく」と述べていて、著者の黒川さんも同感だということです。
そして結論は、「脳は112歳までは進化が約束された、賞味期限の長い装置である。その装置を、いつまで使って、どこまでこの宇宙を楽しむかは、私たちの脳が決めることだ。他人にとやかく言われることじゃない。」です。
あなたも本書を読んで、「脳の本番は56歳から始まる」という成熟脳の性質について、脳科学の知見を学んでみませんか。
速読法・多読法が身につくレポート 『年間300冊ビジネス書速読法「7つのポイント」』 (定価 9,990円)を、こちらのサイトにて販売しています。
https://tsuku2.jp/storeDetail.php?scd=0000049956
2018年11月11日に発刊された大杉潤のメルマガ『ビジネス書10000冊から』(無料)への登録は、以下のリンクをクリックしてください!
https://tsuku2.jp/storeDetail.php?scd=0000049956
では、今日もハッピーな1日を!