「理不尽な人事には理由がある」と指摘し、「左遷」についての「組織の論理」や「個人の心理」を多角的に考察して説明している書があります。
本日紹介するのは、大手生命保険会社に入社し、人事労務関係を中心にキャリアを積んで、2015年に定年退職して執筆業や講演に取り組んでいる楠木新さんが書いた、こちらの新刊新書です。
楠木新『左遷論-組織の論理、個人の心理』(中公新書)
この本は、「左遷」という、サラリーマンなら殆ど全ての人が感じるタイミングがあるという、複雑な心境を、言葉の定義や歴史的な用語の使われ方、事例、その他日本の組織や雇用慣行から分析をした書です。
「左遷」という言葉は、「低い役職・地位に落とすこと」の意味で広く用いられます。当人にとって不本意で、理不尽と思われる人事も、組織の論理からすれば筋が通っている場合は少なくない。
人は誰しも自分を高めに評価し、客観視は難しいという側面もあります。平均すると概ね3割は自分を高く評価している、ということです。
本書は以下の7部構成から成っています。
1.菅原道真、失意の晩年-左遷とは何か
2.定期異動日は大騒ぎ-人事異動と左遷
3.転職か、じっと我慢か-欧米には左遷はない
4.誰が年功序列を決めているのか-左遷を生み出すしくみ
5.出世よりも自分なりのキャリア-消える左遷、残る左遷
6.池上さん大活躍の理由-左遷は転機
7.「道草休暇」が社員を救う-左遷を越えて
この本では、「左遷」のメカニズムを、長期安定雇用、年次別一括管理、年功的な人事評価、といった日本独自の雇用慣行から分析しています。
また本書は、組織で働く個人がどう対処すべきかも具体的に提言しています。
冒頭に出てくるTVドラマ「半沢直樹」のラストシーンや、菅原道真、森鴎外など歴史上の人物の左遷についても触れています。
本書はさまざまな文献に出てくる「左遷」についても紹介していて、とりわけ印象的で何度も引用されているのが、江坂彰『冬の火花ーある管理職の左遷録』(文春文庫)です。
江坂彰さんは、東急エージェンシーの管理職だった当事のことをもとに、この本を書いています。大阪支店長として活躍していた45歳の主人公が、社長交代を契機に、大阪から博多に左遷された、という内容です。
何とこの本は新刊本はもはや手に入らず、Amazon 中古でも相当なプレミアムがついています。近日中に、このブログで書評をアップしますので、ぜひそちらもお読みください。
著者の楠木さんは、左遷など挫折や不遇の時期を過ごしたことを糧に、イキイキと働いているビジネスパーソンに数多くインタビューや取材をしてきています。
楠木新さん自身も、左遷のおかげで、定年後も執筆の仕事に取り組むことができている、と述べています。
あなたも本書を読んで、「困難や挫折もまた、人生のスパイスである」と述べる著者の生き方を学んでみませんか。
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では、今日もハッピーな1日を