書評ブログ

『人間にとって健康とは何か』

近年、医学界では健康の考え方にパラダイムシフトが起きている、と説いている本があります。

 

 

本日紹介するのは、筑波大学医学専門学群を卒業した医学博士の斎藤環さんが書いた、こちらの新書です。

 

 

斎藤環『人間にとって健康とは何か』(PHP新書)

 

 

この本は、病気の原因を探る「疾病生成論」から、健康の原因を探る「健康生成論」への、医学界で起きているパラダイムシフトについて述べた書です。

 

 

 

本書は以下の12部構成から成っています。

 

 

1.現代医学の大転換-「健康生成論」の時代

 

2.「心の健康」尺度の筆頭格・SOCとは?

 

3.SOCの首尾一貫性、レジリエンスの柔軟性

 

4.「悪」のレジリエンスと日本のヤンキー文化

 

5.なぜ日本文化のレジリエンスは高いのか

 

6.レジリエンスなシステム・三つの特徴

 

 

7.『失敗の本質』に学ぶレジリエントな組織

 

8.「ひきこもりシステム」のレジリエンス

 

9.混乱期には「病んだリーダー」が活躍する

 

10.レジリエンスを高める「幸福の法則」

 

11.ポジティブ心理学-幸福からウェルビーイングへ

 

12.「健康」と「幸福」の関係に潜むパラドクス

 

 

この本で著者は、SOC(首尾一貫感覚)、レジリエンスなど最先端の概念縦軸に、ヒトラーや日本軍、ひきこもりなど多彩な例を横軸にして、斬新な「健康論」を展開しています。

 

 

本書の冒頭で著者は、「心の健康」尺度の筆頭格ともいうべきSOC(Sense Of Coherence=首尾一貫性のある感覚)を紹介しています。SOCを構成する要素には次の三要素があります。

 

 

1.把握可能性(わかる)

 

2.処理可能性(できる)

 

3.有意味感(意味がある)

 

 

この本の中で著者は、「SOCの高い人には、よくも悪くも鈍感さがある」と言います。そして、「どのような人生経験がSOCの発展を促すのか」という問いに対して、以下の3つを挙げています。

 

 

1.一貫性のある人生経験(=価値観の共有、ルールや習慣に基づく経験)

 

2.適度な負荷のかかる人生経験(=程よいストレス)

 

3.よい成果が得られた場合、そこに自分自身も参加し、影響を及ぼしたという経験

 

 

 

次に、「レジリエンス」という概念について本書では説明されていますが、これは様々な定義が乱立する状況を紹介した上で、「逆境を乗り越えて適応する力」と、まとめています。

 

 

レジリエンスでは、柔軟性、多様性、変化の重要性が強調され、SOCの首尾一貫性とはちょうど、対照的な概念となっています。

 

 

つまり、高い健康度とは、その両面を備えている状態を指しているのではないかと思われます。

 

 

 

病気の要因を除去する「疾病生成論」から、健康の要因を支援・強化する「健康生成論」へと、現代の医学は変わりつつある、と著者は言います。

 

 

これまで精神科医として、十分には「健康」について考えてこなかった斎藤さんは、今や独自の「健康」観から、さらに「健康と幸福」の関係についても本書の後半で考察しています。

 

 

そこではまず、セリグマンによる「ポジティブ心理学」を紹介し、さらにセリグマンによる「幸福度」について、以下のことがらが「幸福度」を上昇させることを述べています。

 

 

◆ 社会的なつながりがあること

 

◆ 結婚していること

 

◆ 情熱を傾ける仕事があること

 

◆ 宗教やスピリチュアリティー

 

◆ 趣味

 

◆ よい睡眠と運動

 

◆ 社会階級

 

◆ 主観的な健康

 

 

一方、幸福度に関係がありそうで、実はあまりないものとして、年齢、外見的魅力、お金、性別、教育レベル、子供をもつこと、天候のよい地域へ引っ越すこと、住居、客観的な健康を挙げています。

 

 

幸福度を上昇させることについては全く同感ですが、幸福度に関係ないとしているものの中では、子どもをもつこと天候のよい地域へ引っ越すこと住居の3つは、経験上、同意できません。

 

 

 

ふたりの子育て「幸福度」の中核だったし、ハワイへの移住生涯をかけて達成したい私の夢なので、これは同意できない、ということです。

 

 

さらに本書の最後で、「幸福度」から「ウェルビーイング」へ移行するセリグマンの理論を紹介しています。

 

 

「ウェルビーイング」とは、「持続的幸福度」ということで、測定可能な以下の五つの要素「PERMA」から成る、としています。

 

 

1.P(=Positive Emotion; ポジティブ感情、幸福・喜び・愛情)

 

2.E(=Engagement; エンゲージメント、夢中で没頭しているフロー体験)

 

3.R(=Relationship; 関係性、他者との関係)

 

4.M(=Meaning; 意味、意義)

 

5.A(=Achievement; 達成)

 

 

ここでセリグマンは、「幸福の永続性」を問題にしていて、それを科学的に追求しようとしています。

 

 

さらに本書の結論として著者は、健康と幸福を媒介する「マインドフルネス」を挙げていて、これは仏教の瞑想法から発生している「注意集中力」を高めるためのトレーニングを体系的に組み立てたものです。

 

 

マインドフルネスは、世界最先端の経営をしていると言われるグーグルの公式研修プログラムにも採用されている手法です。

 

 

あなたも本書を読んで、「人間にとって健康とは何か」、および「健康と幸福の関係とは」という根源的な問いについて考えてみませんか。

 

 

 

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では、今日もハッピーな1日を

 

 

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