『「日経平均10万円」時代に備えろ』
「『日経平均10万円』はすでに既定路線、今大切なのは『どう備えるか』です。」― インフレの定着、AI革命、地政学リスク、労働力不足、そして「軽い経済」から「重い経済」への転換。日本経済を取り巻く前提条件が大きく変わる中、投資は単なる「お金を増やす手段」ではなく、自らの生活をインフレから守るための「防衛手段」になりつつあります。
本日紹介するのは、1966年富山県生まれ、1990年早稲田大学法学部卒業後、野村投資顧問(現・野村アセットマネジメント)に入社、ジャーディン フレミング投信・投資顧問(現・JPモルガン・アセット・マネジメント)、ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントを経て、2003年にレオス・キャピタルワークスを創業、中小型・成長株を中心に長年の運用経験を持つファンドマネージャーで、投資啓発活動にも力を注ぎ、東京理科大学上席特任教授、叡啓大学客員教授、淑徳大学地域創生学部客員教授、東京科学大学客員教授も務める藤野英人(ふじの ひでと)さんが、インフレ×AI時代の日本株長期上昇シナリオと、私たちが取るべき行動を提示した、こちらの書籍です。
藤野英人『「日経平均10万円」時代に備えろ』(日経ビジネス人文庫)
本書は、『「日経平均10万円」時代が来る!』(日本経済新聞出版、2024年)に100ページを超える新規原稿を加えて大幅に加筆し、改題のうえ文庫化した最新決定版です。
著者が強調するのは、「日経平均10万円」という数字そのものよりも、その背景で日本経済の構造が大きく変化していることです。
さらに生成AIの急速な普及によって、企業経営も働き方も資産運用も大きく変わろうとしています。
本書は以下の6部構成から成っています。
1.海外投資家が日本株を買っている理由
2.既定路線となった「日経平均」10万円超え
3.明るい未来をつくるカギは「スタートアップ戦略」にあり
4.生成AIの普及が「運用のあり方」を変える
5.変化の波に乗る注目銘柄はこれだ
6.「日経平均10万円」時代を生き抜く10の指針
本書の前半では、海外投資家が日本株を買う理由と、「日経平均10万円」がなぜ既定路線になり得るのかについて、以下のポイントを説明しています。
◆ 工場や土地など目に見える資産だけでなく、ブランド、人材、技術力、研究開発力などの「無形資産」を重視しており、日本企業にも再評価できる資産が数多く存在する
◆ 日本の大企業では経営者の意識や企業文化が変化し、ROE8%以上、PBR1倍以上を提唱した「伊藤レポート」を実践して成果を出す企業が増えている
◆ 人口減少による深刻な労働力不足は賃金上昇を促し、日本経済を長く支配してきたデフレからインフレへの構造転換を進める大きな要因になる
◆ AI革命と地政学リスクの高まりによって、半導体、製造業、エネルギー、インフラ、防衛などリアルな供給能力を持つ「重い経済」が再評価され、日本の強みが浮上する可能性がある
◆ 高市政権の成長戦略により重点分野への投資が加速し、株価にも上昇圧力が働くため、「日経平均10万円」は単なる強気予想ではなく、経済構造の変化から考えるべきシナリオである
この本の中盤では、スタートアップ戦略と生成AIが投資のあり方をどう変えるのかについて解説しています。主なポイントは次の通り。
◆ 日本経済が持続的に成長するには既存の大企業だけでは不十分で、新しい産業や雇用を生み出すスタートアップを育てる仕組みが欠かせない
◆ 今後はネットサービスだけで完結する「軽い」スタートアップだけでなく、製造業、半導体、エネルギー、宇宙、防衛などリアルな技術や設備を必要とする企業にも成長機会が広がる
◆ スタートアップ、大企業、官公庁がそれぞれ独立して動くのではなく、大企業が両者をつなぐことで、日本全体の産業競争力を高めるエコシステムを形成することが重要になる
◆「オルカンを積み立てるだけ」という投資は有力な選択肢ではあるものの、それだけが唯一の正解なのかを考え、AI時代だからこそ人間にしかできない企業分析や長期的な未来洞察の価値を見直す必要がある
◆ AIが過去の膨大なデータを分析できる時代には、投資家には数字だけでは把握できない経営者の資質、企業文化、未来への意志などを見抜き、「10年先」を考える力がより重要になる
本書の後半では、「日経平均10万円」時代に伸びる企業の見方と、私たち自身が身につけるべき生き方について提言しています。主なポイントは以下の通りです。
◆ 単に「価格競争に強い企業」ではなく、社会や産業に不可欠で、その企業が止まれば経済活動そのものが止まってしまう「止まらない企業」に注目
◆ 国が成長戦略として位置づける戦略分野では、派手な話題株だけではなく、半導体製造装置、部素材、インフラなどを支える「地味な株」に大きな成長機会が生まれる
◆ AIそのものを開発する企業、AIを動かすためのインフラを提供する企業、AIを活用して既存事業を強くする企業など、複数の視点から分析することが重要
◆ インフレ時代には預貯金だけではリスクがあり、投資は資産価値と生活を守るための「守り」の意味を強めていく
◆ AI時代には「所属する」より人や社会と「接続する」、「覚える」より「問いをつくる」、「我慢する」より人生を自分で「編集する」という生き方への転換
本書を読んで私が最も共感したのは、「日経平均10万円」という未来予測よりも、その時代に私たち自身がどう変わるべきかを考えることが重要だというメッセージです。
インフレが定着する世界では、何もしないこともまたリスクになるという発想への転換が必要です。
また、本書で興味深いのが「軽い経済」から「重い経済」への転換です。
これまで世界経済を牽引してきたのは、巨大ITプラットフォームを中心とする企業でした。しかし、生成AIの普及には半導体が必要です。半導体工場には大量の電力が必要です。データセンターには建物や設備、冷却システム、送電網が必要です。
地政学リスクが高まれば、サプライチェーンや防衛、物流、国内生産能力も重要になります。デジタル化が進めば進むほど、実はリアルな「重い」インフラが必要になる。
ここに製造業、素材、部品、機械、インフラなどを得意としてきた日本企業の再評価につながる可能性があるという著者の分析には説得力があります。
「日経平均10万円」というタイトルを見ると、強気な株価予測を中心とした投資本に見えます。しかし本書が本当に問いかけているのは、「日本経済の前提が変わる中で、あなた自身は変われるのか」ということではないでしょうか。
インフレ×AI時代には、資産形成も、仕事も、学びも、生き方も、これまでの「昭和型の正解」が通用しなくなる可能性があります。だからこそ過去の成功体験をアンラーンし、自ら問いを立て、人とつながり、投資を通じて社会の成長に参加する。
「日経平均10万円」に備えるとは、株を買うことだけではなく、自分自身の生き方を新しい時代に合わせて再設計すること。
これから資産形成を始める若い世代はもちろん、新NISAを活用している人、50代・60代で定年後の資産運用を考えている人、そしてAI時代の働き方や人生後半のキャリアを考える人にも、ぜひ読んでほしい一冊です。
YouTubeチャンネル「大杉潤のYouTubeビジネススクール」でも、人生100年時代の働き方、定年後キャリア、ひとり起業、資産形成やライフスタイルなど、仕事と人生を豊かにする情報を発信しています。ぜひチャンネル登録をしてご覧ください。
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では、今日もハッピーな1日を!【4204日目】








