「経済が実需から遊離し、遊びでしか伸ばせなくなった時代、もっとも可能性に満ちている国は日本なのだ」と提唱している本があります。
本日紹介するのは、富山県生まれで、双日総合研究所チーフエコノミストの吉崎達彦さんが書いた、こちらの新刊新書です。
吉崎達彦『気づいたら先頭に立っていた日本経済』(新潮新書)
この本は、ゲーム、観光、ギャンブル、「第二の人生」マーケットなど、独自の「遊民経済学」を提唱している書です。
著者の吉崎達彦さんは、56歳とほぼ私と同世代で父親が昭和4年生まれの87歳で同年齢、母親は私の最初の勤務先である日本興業銀行(現・みずほフィナンシャルグループ)の行員だった、という共通点の多い方で、親近感を持ちました。
本書は以下の7部構成から成っています。
1.いつの間にか先頭を走っていた日本
2.ツーリズムを「大産業」に育てよ
3.地方には無限の可能性が眠っている
4.おもちゃとゲームとお葬式
5.ギャンブラーは経済の救世主
6.それでも私は「二郎」に通う
7.第2の人生こそ本物の人生だ
本書の冒頭で著者は、今や巨大化した第3次産業を、さらにふたつに分けて、お役所仕事のようにしぶしぶ嫌々やらなきゃいけないサービス業を、今まで通り第3次産業と呼び、お客さんがニコニコしているものを第4次産業と呼ぶよう提言しています。
そうすると、第4次産業とは、ツーリズム(観光産業)やエンタメ関係、あるいはギャンブル産業などが該当し、これからの日本でまさに成長産業になるもの、と言えるでしょう。
これら「第4次産業」は、体験型ビジネス、あるいは時間多消費型ビジネスとも呼ばれていて、これからの超高齢社会において、まさに成長が期待されています。
具体的には、国内外の旅行、インバウンド(外国人訪日旅行者)の観光関連ビジネス、例えばテーマパーク、カジノ、国際コンベンション、国際展示会、ゲーム関連、その他エンターテイメント関連のビジネスなどが大きな成長をして行くでしょう。
そして当面のピークとして、2020年の東京オリンピック・パラリンピックが最大のイベントということになるのではないでしょうか。
本書は、本文の中で様々な興味深い記事や書籍を紹介していますが、とくに私が興味を持って印象深かったものを以下に挙げてみます。
◆ 米外交専門誌『フォーリン・アフェアーズ』(2016年3/4月号)の「長期停滞論」特集
◆ 上記内のザチャリー・カラベルの論文「停滞を愛せよ~成長は万能ならず、日本に尋ねよ」
◆ 英『エコノミスト』誌「アベノミクス特集」(2013年春/2016年夏)
◆ ヨハン・ホイジンガ『ホモ・ルーデンス』(中公文庫)
◆ ロジェ・カイヨワ『遊びと人間』
また、著者の吉崎さんは本書の中で、自身の旅行・出張体験や趣味のギャンブル、遊びについての率直な記述をしていて、肩を力を抜いて読むことができます。
なお本書の最後には、よく「第二の人生」の手本とされている50歳になってからライフワークの『大日本沿海輿地全図』を作成した伊能忠敬の生き方を、通説とは違う突っ込んだ形で紹介しています。
その背景となった、『図説 伊能忠敬の地図をよむ』(河出書房新社)という書籍を併せて紹介していて興味深いです。
さらに、日本の団塊の世代(戦後ベビーブーマー)が1947年~1949年であるのに対して、アメリカではベビーブーマーはやや早く1946年から始まったことを紹介しています。
1946年生まれからは、ビル・クリントン、ジョージ・W・ブッシュというふたりの米大統領を出していて、さらに今回、1947年生まれのヒラリー・クリントンを破ったドナルド・トランプが3人目の1946年生まれの米大統領になる、と本書で紹介されています。
ちなみに、本書には書いていませんが、誕生日の順番は、ドナルド・トランプ6月14日、ジョージ・W・ブッシュ7月6日、ビル・クリントン8月19日で、大統領就任の順番とは逆になっているのが面白いです。
2017年1月20日のドナルド・トランプの大統領就任時点で、3人ともに70歳(1946年生まれ)ということになります。まだまだ3人とも元気で、日本同様、戦後ベビーブーマーのパワーはまだまだ健在、と言えるでしょう。
本書は、日本で「働き方改革」が議論されているが、今こそ「遊び方改革」を考えるべきだ、と結論づけています。
あなたも本書を読んで、著者が提唱する「遊民経済学」を学んでみませんか。
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では、今日もハッピーな1日を