書評ブログ

『18歳からの格差論 日本に本当に必要なもの』

「弱者を生まない、誰も後ろめたさを感じなくていい。僕たちは、もっと生きる価値のある未来を創り出すことができる。」と提唱している本があります。

 

 

本日紹介するのは、東京大学大学院にて経済学博士を取得し、日本銀行金融研究所勤務を経て、慶應義塾大学教授井手英策さんが書いた、こちらの書籍です。

 

 

井手英策『18歳からの格差論 日本に本当に必要なもの』(東洋経済新報社)

 

 

この本は、気鋭の財政学者である著者の井手英策さんによる、画期的な提言の書です。

 

 

そのメッセージを一言で表現すれば、「この生きづらい分断社会を終わらせる」ということです。

 

 

 

本書は以下の5部構成から成っています。

 

 

1.「格差是正」に心が動かない僕たち

 

2.日本人の不安の根っこにせまる「3つの罠」、そして「分断社会」

 

3.分断社会・日本-「失われた20年」、何がいけなかったのか?

 

4.中髙所得層も納得して格差是正ができる「必要の政治」とは?

 

5.人間の違いではなく、人間の共通性に想いをはせてみませんか?

 

 

この本ではまず、現在の日本で、「格差社会」がなぜ作られたのかを分析しています。

 

 

日本では、「税への抵抗」が他の先進国と比べても群を抜いて強いのですが、それは、殆どの人に「受益感」がないためです。

 

 

日本では世界でも最も「小さい政府」になっていて、要するに税収も公務員の数もあまりに少ない、ということです。

 

 

そして、生活に欠くべからざる必要なサービスについても、日本ではすべて自己負担で確保しなければなりません。

 

 

例えば、医療介護教育(子育て費用)についても、すべて、「自己責任原則」です。

 

 

こう述べると、政治家や公務員のムダ使いが批判されるのですが、本書では、増税によってもっと税収を増やし、サービスを拡充する「大きな政府」にせよ、と提言しています。

 

 

とくに特徴的なのは、今まで低所得者に限定されていたサービスを、中高所得者も含めて全国民に拡大せよ、と主張している点です。

 

 

それは「生活に必要なものすべて」ということで、医療、介護、教育、住宅など、私たちの生活に最低限必要なサービスについては、基本的に税金で面倒を見る、という仕組みです。

 

 

高所得者でも、医療費、介護費、子育ての費用が無料になるなら、公的サービスに対する「受益感」があるので、税金を払うことに抵抗がなくなります。

 

 

その代り、低所得者にも、所得税を負担してもらい、また消費税の税率を欧州並みにアップして税収を大きく増やさなければなりません。

 

 

それでも、格差は縮小して、すべての人が助け合い、安心して暮らせる社会になる、と著者は言います。

 

 

とくに大きいのが、中間層も含めて、老後生活の将来不安がなくなることです。

 

 

必要最低限の生活に必要なもの医療介護住宅も、公的サービスで殆どがまかなわれるならば、将来に対する不安が消えてなくなる、と本書では主張しています。

 

 

そうした政策こそが、「必要の政治」というものだ、と本書では述べています。

 

 

本書では、ほんとうに困った人が受けている「生活保護」についても、制度の適用を受けるには、「恥ずべき暴露」をし、自分がいかに貧しく無能力で生活に困っているかを、親族すべてにさらけ出さねばなりません。

 

 

20~30代の生活保護受給者の自殺率は、非受給者の5倍以上にのぼり、日本の生活保護の利用率は、先進国中最低水準ということです。

 

 

現在の日本は、財政悪化の名のもとに、サービスの削減ばかりが議論され、ムダ使いの犯人捜し弱者の袋叩きを行う社会の風潮になっています。

 

 

もともと本書は、駒崎弘樹『働き方革命-あなたが今日から日本を変える方法』(ちくま新書)に紹介されていた、井手英策さんの考え方を学ぶために手に取りました。

 

 

また、本書のもとになった共著本の『分断社会を終わらせる-誰もが「受益者」という財政戦略』(筑摩選書)も併せて読むことをお薦めします。

 

 

あなたも本書を読んで、「大きな政府」による、「必要の政治」について学んでみませんか。

 

 

 

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では、今日もハッピーな1日を

 

 

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