書評ブログ

『仮想空間シフト』

「仮想空間シフトというのは誰もが手に入れられる武器であり、むしろ旧態依然とした縛りから解き放たれ、進化した未来を手に入れられるためのものになる」と述べている本があります。

 

 

本日紹介するのは、1970年生まれ、京都大学大学院工学研究科応用人工知能論講座修了マッキンゼー・アンド・カンパニーでキャリアをスタートし、NTTドコモ、リクルート、グーグル、楽天など多くの企業で様々な業務を経験しているフーチャリスト尾原和啓さんと、1970年生まれ、慶應義塾大学文学部哲学科、同大学院文学研究科美術史学専攻修士課程修了、電通、ボストン・コンサルティング・グループ、コーン・フェリー等で企業戦略策定などに携わったのち、現在は独立研究者、著作家、パブリックスピーカーである山口周さんの対談を書籍化した、こちらの新刊新書です。

 

 

尾原和啓・山口周『仮想空間シフト』(MdN新書)

 

 

この本は、「仮想空間シフトの本質を言語化して伝えることで、アフターコロナの世界で進化できる人を一人でも増やしたい」という著者・尾原和啓さんの思いによって作られた書です。

 

 

 

本書は以下の8部構成より成っています。

 

 

1.はじめに

 

2.仮想空間シフトがもたらす未来図

 

3.仕事が変わると暮らしが変わる

 

4.人間と社会が変わる

 

 

 

5.人生が変わる

 

6.国家や行政が変わる

 

7.これからの世界を生き抜く10のアクション

 

8.「何者かへ」のなり方が変わる

 

 

 

この本の冒頭で著者の尾原さんは、「新型コロナウイルスという未知の脅威によって全く新しい社会に変化した、というわけではなく、もともといずれはそうなるはずだった未来の姿に、少し早く強制的に進化させられた」というのが適切な理解だと述べています。

 

 

 

続いて、仮想空間シフトがもたらす未来図について、尾原さんと山口さんの対談という形で、次のようなポイントが具体例を示しながら指摘されています。まずは仕事が暮らしを変えるポイントです。

 

 

◆ 仮想空間シフトにより、仕事→暮らし→社会→人生→国家(行政)の順で変わってくる

 

◆ Z世代の価値観がスタンダードになっていく

 

◆ リモートワークからリゾートワークへ

 

◆ 仕事選びの基準は「好き」「できること」に

 

 

 

◆ 仕事をエンターテインメントに

 

◆ モチベーションを高めるイシューの提示がポイント

 

◆ より多く、より遠くに繋がることで安定は生まれる

 

◆ アフターコロナで断層ができる

 

 

 

次に、人生が変わることについて、以下のポイントが挙げられています。

 

 

◆ 仮想空間上で仕事をするデジタル・アイデンティティを変幻自在に持つ(自分の役割、係)

 

◆ 複数に依存している方がリスクは低く安定する、複数の収入源を持って人生のポートフォリオをつくる

 

◆ ライフワークとライスワークを分離させる

 

◆ 試行回数を増やす、とにかく打席に入ってバットを振り、自分の得意(代替が効かない適材適所になる場所)を見つける

 

 

 

本書の後半では、国家や行政の変化について、次のようなポイントを説明しています。

 

 

◆ 住む場所が自由になり、東京集中から地方分散へ

 

◆ 仮想空間シフトは環境問題を解決する

 

◆ 輸送コストが下がり、地産地消が進む

 

◆ 価値観デバイド(断層)が起きて、仮想空間が主になる「Z世代の価値観」に一気に近づく

 

 

 

この本の終盤で著者の尾原さんは、「これからの世界を生き抜く10のアクション」として、以下の具体的なプランを提示しています。

 

 

1.境界性領域を作る

 

2.ナメすぎず、ビビリすぎない

 

3.アジェンダを設定する

 

4.仕事に意味合いを作る

 

5.共感できる人と組む

 

 

 

6.ライスワークとライフワーク、リスクとリターンのバランスをとる

 

7.問題提起に敏感になる

 

8.問題にきちんと向き合う

 

9.階段のステップを小さくする

 

10.変化を前向きに受け入れよう

 

 

 

また対談の最後には、任天堂のゲーム「スプラトゥーン」で遊ぶZ世代が持つ、複数のアイデンティティを持って使い分ける価値観がこれからの時代には大切だと指摘しています。

 

 

 

宇宙飛行士の試験の時に実施される「閉鎖環境テスト」において、何が起こるか分からない宇宙空間で、リーダーシップとフォロワーシップの切り替えを見ていることを紹介し、何が起こるか予測がつかない現代では、全ての人に求められる資質と解説しています。

 

 

 

最後に、「おわりに」で著者の一人・山口周さんが紹介している「アイスランド沖のヘイマエイ島の火山噴火時に起きた島民の人生追跡調査」は示唆に富んでいて印象的でした。

 

 

 

詳細はぜひ本書をお読みいただきたいのですが、1973年1月に起こったヘイマエイ島の火山噴火の溶岩流によって家を失った島民のうち、受け取った補助金を使って家を建て直すのではなく、島外へ出て行って新たな仕事と生活を選択した島民が42%いて、その生涯収入が島に残った人々を大幅に上回ったということです。

 

 

 

噴火という「短期的には不幸な契機」によって、「この後、自分はいかにして生きるべきか」という問いにしっかりと向き合い、自分の人生を考えて行動した成果だということです。

 

 

 

あなたも本書を読んで、コロナショックという人類史上に残る大きな出来事を契機に、「知の高速道路」に乗れる時代の新しい生き方・働き方として、「仮想空間シフト」について考え、新しい生き方を実践してみませんか。

 

 

 

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では、今日もハッピーな1日を!【2460日目】