「現代のコンサルティング会社を機能させるには、多くのスキルと多様な種類の知性が必要だが、基礎となる能力は常に創造的な問題解決力である。」と述べて、マッキンゼーでは最大の褒め言葉である「完全無欠」の問題解決について解説している本があります。
本日紹介するのは、ハーバード大学、ボストン大学卒業、ローズ奨学生としてオクスフォード大学大学院修了、ボストン・コンサルティング・グループでキャリアを開始した後、マッキンゼー・アンド・カンパニーのパートナー、ティケットマスター・シティーサーチ社の創設代表取締役などを歴任したチャールズ・コンさんと、ニューイングランド大学(オーストラリア)卒業、コロンビア大学ビジネススクール修了、マッキンゼー・アンド・カンパニーの名誉ディレクター、オーストラリア経営大学院学部長を歴任したロバート・マクリーンさんが書いた、こちらの書籍です。
チャールズ・コン、ロバート・マクリーン『完全無欠の問題解決ー不確実性を乗り越える7ステップアプローチ』(ダイヤモンド社)
この本は、著者たちがマッキンゼーで長年実践してきた実績のある方法論をアレンジし、これまでなかった問題解決の体型的なプロセスを紹介するものです。
本書は以下の10部構成から成っています。
1.「完全無欠の問題解決」をマスターする
2.問題を定義する
3.問題を分解し、優先順位をつける
4.作業計画を立てる
5.「経験則」で問題をざっと分析する
6.「奥の手」で問題を深く分析する
7.結果をまとめ、ストーリーで伝える
8.不確実性に対処する
9.「厄介な問題」を解決する
10.優れた問題解決者になる
この本の冒頭で著者は、「複雑な問題解決」は、現代で最も求められるスキルだとして、問題解決で決定的に重要な7つの問いを以下の通り挙げています。
ステップ1:意思決定者のニーズを満たすために、どのように問題を的確に定義するか?
ステップ2:どのように問題をばらばらに分解し、検討すべき仮説を立てるか?
ステップ3:やるべきこと、やるべきでないことの優先順位をどのようにつけるか?
ステップ4:どのように作業計画を策定し、分析作業を割り当てるか?
ステップ5:認知バイアスを避けながら、どのように問題を解決するための事実収集と分析を決めるか?
ステップ6:洞察を引き出すために、どのように調査結果を統合するか?
ステップ7:どのように説得力のある形で伝えるか?
本書の前半では、「完全無欠の問題解決をマスターする」「問題を定義する」および「問題を分解し、優先順位をつける」について、次のポイントを説明しています。
◆ 優れた問題解決とは、プロセスである
◆ 完全無欠の7ステップは、①問題を定義する、②問題を分解する、③優先順位付けをする、④作業計画を立てる、⑤分析をする、⑥分析結果を統合する、⑦ストーリーで語る
◆ すべての問題解決は「ロジックツリー」から始まる
◆ ロジックツリーは、①問題を明確に視覚化する、②全体論的になる、③検証可能な明確な仮説を描ける
◆ 問題の定義を正しく行うことが優れた問題解決は不可欠
◆ 優れた問題定義文はSMART(具体的、測定可能、実用的、関連性、時間枠)で
◆ 問題をより高いレベルに再定義する
◆「デザイン思考」は消費・製品領域で特に威力を発揮する
◆ 問題の分解は、問題の構造を見ることが可能になる
◆ 一般的な問題要素を持つツリーから、検証すべき明確な仮説を示すツリーへ
◆ ロジックツリー構成の重要なMECE(モレなくダブリなく)の原則
◆「優先順位付け」によって少ない労力で速く問題解決する
この本の中盤では、「作業計画を立てる」「経験則で問題をざっと分析する」および「奥の手で問題を深く分析する」について解説しています。主なポイントは以下の通りです。
◆ 作業計画における規範と具体性を高めれば、膨大な労力を節約できる
◆ 分析の順序が正しいことを確認し、最初にノックアウト分析を
◆「1日の答え」を構成する3パートは、①状況、②複雑化、③解決策
◆ 問題解決チームが持っている共通点は、①状況によって階層構造が柔軟に変わる、②チームプロセスについて3つの規範(a.仮説主義・最終成果物志向、b.仮説とデータの往復、c.画期的な考え方を求める)を持つ、③バイアスや誤りを回避するための備え
◆ 問題解決における5ツノバイアス:①確証バイアス、②アンカリングバイアス、③損失回避、④可用性バイアス、⑤過度の楽観
◆ バイアス軽減のアプローチ:①チームメンバーの多様性、②複数のツリーや分割フレーム、③仮説に疑問符を追加、④バイアス排除のブレーンストーミング、⑤下振れシナリオと死亡前死因分析、⑥優れた分析手法、⑦データソースの拡大
◆ 創造性を高めるために、ロールプレイングで外部の視点を取り入れる
◆チームリーダーからの合図や行動:「リーン」(細身)、「アジャイル」(敏捷)、「スクラム」(フレームワーク)の原則
◆ 分析作業は、問題レバーの大きさと形状を確認する要約統計とヒューリスティック分析から
◆ 分析の近道の「11のヒューリスティック」:①オッカムの剃刀、②「大きさの程度」分析、③パレートの法則、④複利の成長率、⑤S字曲線、⑥期待値、⑦ベイジアン思考、⑧類推による推論、⑨損益分岐点、⑩限界分析、⑪結果の分布
◆ 3つの問い:誰が何を、どこでどのように、なぜ
◆「根本原因分析」と「5回のなぜ分析」は、問いを利用する問題解決ツール
◆ 複雑な問題解決には、洗練された分析ツールとその使用方法を知る
◆ グラフ化、視覚化、要約統計をs通じてデータを完全に理解する
◆「奥の手」を使う9ケース:①データを視覚化する、②回帰分析、③ベイズ統計、④実験、⑤自然実験、⑥シミュレーション、⑦機械学習、⑧クラウドソーシング、⑨ゲーム理論
◆ 高度なツールを使う前に、定評のあるヒューリスティックに基づいたショートカットを
本書の後半では、「結果をまとめ、ストーリーで伝える」「不確実性に対処する」「厄介な問題を解決する」および「優れた問題解決者になる」について考察しています。主なポイントは以下の通り。
◆ 統合作業は、分析作業でバラバラになったものをまとめ、新しい洞察をもたらす
◆ 恐ろしい「不安に満ちた知識のパレード(APK)に陥らないように、ロジックツリーのピラミッド構造を使い、説得力のあるストーリーに整理する
◆ 状況ー観察ー解決と言う「1日の答え」の構造をストーリーの出発点に
◆ 意思決定ツリーで、いくつかのストーリー構造を試す
◆ ストーリーボードを使って、スライドの組み合わせ、スライドの全体、水平論理と一貫性を確認する
◆ 不確実性は、最も難しい問題に共通の特徴
◆ 不確実性に対処する6つの行動:①情報の購入、②ヘッジ、③低コストの戦略オプション、④保険の購入、⑤悔いのない手段、⑥大きな賭け
◆ 興味深い5つのケーススタディ:①将来のキャリアをどのように選ぶべきか、②老後のためにどれだけ貯蓄すればいいか、③鉱山を買うべきか、④新規事業を立ち上げる、⑤パシフィックサーモンの保護
◆ 本当に長期的で不確実性の高い戦略には、戦略全体を可視化し、管理するための変革の理論マップと戦略ポートフォリオのマトリックスが必要
◆ 問題の中には、複雑なシステムの一部で、複数の原因や多くの利害関係者が存在する「厄介な問題」がある
◆ テロ、気候変動、ホームレス、肥満などが「厄介な問題」と呼ばれている
◆「厄介な問題」でも問題解決の7ステップは有効
◆ 困難な問題では、システムによる解決策、外部性を問題の内部化すること、問題の新しい切断方法を見つけることが有効
◆ 優れた問題解決者になる10のポイント1:問題を理解するために時間をかける
◆ ポイント2:問題定義文から始める
◆ ポイント3:ツリーでいくつかの切り口を試す
◆ ポイント4:可能なかぎりチームを使う
◆ ポイント5:優れた作業計画に適切な投資をする
◆ ポイント6:要約統計、ヒューリスティックス、経験則から分析を始める
◆ ポイント7:「奥の手」を恐れず使う
◆ ポイント8:分析と同程度、結果の統合とストーリーの説明にも力を入れる
◆ ポイント9:7ステップのプロセスを反復し、ときには圧縮・拡張する
◆ ポイント10:どんな問題も恐れない
この本の巻末のは、補講「独学者のための問題解決ワークシート」が掲載されていて、実践に活用できます。
本書は、マッキンゼーで最も読まれた「伝説の社内資料」を書籍化して公開したものであり、マッキンゼー名誉会長のドミニク・バートンや、グーグル元CEOのエリック・シュミットも絶賛する、あらゆる問題に使える「完全無欠の問題解決」のガイドです。すべてのリーダーやビジネスパーソンに心から推薦します。
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では、今日もハッピーな1日を!【2909日目】