書評ブログ

『自営型で働く時代 ー ジョブ型雇用はもう古い!』

「一人でまとまった仕事をこなす自営型は、企業にとって生産性向上と人材不足対策の切り札になるかもしれないし、エンゲージメントの高さはリテンション(人材確保)につながる。また勘や熟練を活かしマイペースで働けるところは、シニア層の活用にも適している。」と述べている本があります。

 

本日紹介するのは、兵庫県出身、日本における組織論の第一人者として著作のほか、マスコミでの発言、講演なども積極的にこなす、同志社大学政策学部教授(大学院総合政策科学研究科教授を兼任)、経済学博士太田肇さんが書いた、こちらの書籍です。

 

太田肇『自営型で働く時代 ー ジョブ型雇用はもう古い!』(プレジデント社)

 

この本は、新たな働き方のモデルとして、なぜジョブ型ではなく自営型なのか、自営型の絶対的な優位性はどこにあるのか、その恩恵を企業、個人、社会が得るには何を、どう変えていくべきかについて、具体的な事例やデータを盛り込みながら説いている書です。

 

本書は以下の7部構成から成っています。

1.日本企業の病根はどこに?

2.ジョブ型への幻想

3.自営型という新たな選択肢

4.台頭する自営型社員

5.日本企業の「強み」とは何か

6.自営型でこそ生かせる日本の「強み」

7."ジャパンアズナンバーワン"の復活へ

 

この本の冒頭で著者は、「ビジネスや労働の世界でもいま、メンバーシップ型かジョブ型かという観念的な二分法の陰で、新たな第三の働き方が静かに、しかし急速に広がっている。」「雇用かフリーランスか、言い換えれば組織に属しているか否かにかかわらず、半ば自営業のようにある程度まとまった仕事を一人でこなす『自営型』と呼ぶべき働き方である。」と述べています。

 

さらに「自営型の働き方」として、次の3つの形グラデーションとして示しています。

◆ 自営型社員

◆ インディペンデントコントラクター

◆ 完全な独立自営

 

本書の前半では、「日本企業の病根はどこに?および「ジョブ型への幻想」ついて、以下のポイントを説明しています。

◆ 日本低迷の原因はメンバーシップ型雇用と共同体型組織

◆ イノベーションの芽を摘む組織風土とくすぶる不公平感

◆ ジョブ型にはちはだかる厚い壁(転職・既得権・人材育成)

◆ ジョブ型からイノベーションは生まれない

 

この本の中盤では、「自営型という新たな選択肢」「台頭する自営型社員」および「日本企業の強みとは何か」について解説しています。主なポイントは次の通りです。

◆ コロナ禍で加速した雇用からフリーランスへの潮流

◆ テレワークが業務委託の活用を促す

◆ 退職者をネットワークでつなぐアルムナイ制度

◆ 増加する副業からの独立

 

◆ 組織は仕事をする場としてのインフラに

◆ 分業制から「一気通貫制」へ

◆ 一気通貫の非効率をITで解消

◆ 建築・不動産業界の「担当者一貫責任管理システム」や「一人屋台」

 

◆ AIに淘汰されない能力は市場評価が高まる「個人特殊能力」

◆ 知的熟練(小池和男)と知識創造(野中郁次郎)と擦り合わせ(藤本隆宏)

◆ イノベーションにはダイバーシティが必須

◆ デジタルを超えるアナログ的能力

 

本書の後半では、「自営型でこそ生かせる日本の強みおよび「"ジャパンアズナンバーワン"の復活へ」について考察しています。主なポイントは以下の通り。

◆ 異質な知識、多様な経験の統合

◆異質性に基づくチームワーク、専門能力や個性の相互作用でイノベーション

◆ フリーランスのエンゲージメントは高い(石山恒貴の研究)

◆ 仕事の成果・生産性=「能力」×「意欲」

 

◆ 内発的モチベーションのキーは「自律性」

◆ 自営型で「やる気の天井」を突き抜ける

◆ 仕事や人生を自分でコントロールできるということ

◆「能力」と「意欲」が相乗した「人間力」

 

◆ 自立型は幸福度が高い

◆ 自由裁量因子(自分の考えや意思で仕事を遂行)は幸福度の重要因子(前野隆司)

◆ 公私分離から公私融合へ

◆ 自営型の働き方は、能力発揮+モチベーション向上+幸福度アップ

 

◆ 自営型社員とフリーランスが入り交じって緩やかに連結する組織

◆ ジョブ型が定着していない日本でリープフロッグを

◆「自営型社会」のモデルは、北欧諸国や地方の農村部

◆ 大学の学ぶためのインフラに

 

◆ 労働市場を通した柔軟な人の移動による生活安全保障(=フレキシキュリティ)

◆ 地方移住者と地元民との仕事がらみのコミュニティ

◆ コワーキングスペースによる「C&C」

◆ 45歳以上の社員が独立を視野に入れる人事制度の導入

 

本書で提唱している「自営型」の働き方は、拙著『定年ひとり起業』シリーズ3部作(自由国民社)で提唱した生涯現役の働き方『50代お金の不安がなくなる副業術』(エムディエヌコーポレーション)で提案した「戦略的副業」共通のコンセプトであり、強く共感しました。

 

この本の締めくくりとして著者は、近未来のシナリオとして、「自営型はどう広がるか」について、3つのシナリオを紹介しています。

1.雇用から独立自営への切り替えが進む(業務委託や請負への切り替え)

2.副業から独立自営へというパターンが一般化する

3.雇用されて働く自営型社員が増加する

 

あなたも本書を読んで、「自営型」で働く時代に対応した生き方を学び、実践していきませんか。

 

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では、今日もハッピーな1日を!【3315日目】