「さまざまな調査で、自営業者の幸福度はサラリーマンより一貫して高いことがわかっています。収入が不安定でも『人間関係を自分で選べる』ことは、それを補って余りある魅力があるようです。」と述べている本があります。
本日紹介するのは、1959年生まれ、2002年国際金融小説『マネーロンダリング』(幻冬舎文庫)でデビューし、数々の著書でベストセラーを連発している作家の橘玲さんが書いた、こちらの書籍です。
橘 玲『不条理な会社人生から自由になる方法 働き方2.0vs4.0』(PHP文庫)
この本は、日本のサラリーマンはむかしもいまもずっと会社を憎んでおり、過労死するほど働いているもののまったく利益をあげていないという「不愉快な事実」を出発点にして、「日本人の働き方はこれからどうなっていくのか?」「急速に変わりつつある世界で同のように生き延びればいいのか?」を考えている書です。
本書は以下の7部構成から成っています。
1.はじめに 「未来世界」と「前近代的世界」に引き裂かれて
2.生き方・働き方が衝撃的に変わる未来
3.前近代的な身分制社会・日本
4.会社や管理職はなくなるのか?
5.「未来世界」で生き延びる方法
6.誰もが知っていながら報じられない「労働者」以前に「人間」としてなんの権利も認められない非正規公務員の現実
7.おわりに 日本の未來は明るい
この本の冒頭で著者は、「働き方」を以下の通り定義しています。
◆ 働き方 1.0 年功序列・終身雇用の日本的雇用慣行
◆ 働き方 2.0 成果主義に基づいたグローバルスタンダード
◆ 働き方 3.0 プロジェクト単位でスペシャリストが離合集散するシリコンバレー型
◆ 働き方 4.0 フリーエージェント(ギグエコノミー)
◆ 働き方 5.0 機会がすべての仕事を行うユートピア/ディストピア
本書の前半では、「生き方・働き方が衝撃的に変わる未来」および「前近代的な身分制社会・日本」について考察しています。主なポイントは以下の通り。
◆ テクノロジーの性能爆発(=スーパーノバ)により人間の適応能力を超えてしまった
◆ 労働やスキルをシェアする社会でフリーエージェント化が進む
◆ 未来世界に向けて突き進んでいて、働き方だけでなく生き方(人生設計)が変わる
◆ サービス残業はグローバルスタンダードでは「奴隷労働」
◆ おかれた場所で枯れていく日本の終身雇用と身分制社会
この本の中盤では、「会社や管理職はなくなるのか?」について、次のポイントを説明しています。
◆ グローバリゼーションによる格差効果は「エレファントカーブ」で以下の4点がわかる
①世界の最も貧しい人は、あいかわらず貧しい
②新興国の経済発展によって分厚い中間層が形成された
③その反動で、グローバル化に適応できない先進国の中間層が崩壊した
④先進国を中心に(超)富裕層が大きく増えた
◆ 所得も資産も正規分布ではなく「べき分布」(ロングテール)する
◆ 一部の富裕層と大多数の貧困層に社会が分裂する「バーベル経済」に
◆ 未来世界でプラットフォーマーが大規模化し、会社も管理職もなくならず、フリーエージェント化する
◆ 6つの階層化する働き方に
①資本家:年収3億円超
②フリーエージェント: 年収3000万円~3億円
③スペシャリスト: 年収1500万円~3000万円
④管理職(ブルシットジョブ): 年収500万円~1500万円
⑤バックオフィス(マックジョブ): 年収300万円~500万円
⑥ギグワーカー(機械・移民と競争): 年収300万円未満
本書の後半では、「未来世界で生き延びる方法」について、著者の見解を紹介・解説しています。主なポイントは以下の通りです。
◆ 人生100年時代に最も重要なのは、好きなこと、得意なことを仕事にすること
◆ 富を増やす方法は3つだけ(➀人的資本を大きくする、②人的資本を長く運用する、③世帯内の人的資本を増やす)
◆ 生涯現役なら「老後問題」そのものがなくなる
◆ 夫婦共働きの効果は大きく、人生100年時代の人生設計は「長く働く、一緒に働く」以外にない
◆ 専業主婦は2億円損をする
◆ 人生は「選択の連続」だが、ただ一つ選択できないのが「人間関係」
◆ うつ病の原因は「自分の能力を超える仕事」
◆ 好きなこと、楽しいことならどれほど長時間労働でも苦にならない
◆ 尾原和啓さんの予測するIT革命による「3つの変化」(『どこでも誰とでも働ける』より)
①社会やビジネスがいっそうインターネット化する
②これから仕事で活躍できるのは、プロフェッショナルだけになる
③会社と個人の関係が根底から変わる
◆ ギブしても減らない「知識」と「人脈」を先にギブする
◆ 会社を離れると「ギブ」できるものがなくなってしまう人は稼げない
◆ 人と人を繋ぐことは「負けないギャンブル」
◆「ゼロサムゲーム」ではなく「プラスサムゲーム」で先にギブするのが最強の戦略
◆ 中国ビジネスのハブとなった邱永漢
◆ ふれ合いが多すぎることが「ソロ化」を招く
◆ 定年後再雇用は人的資本のムダ使い
◆ 人は誰でもいずれ人的資本を失って一人の投資家になる
◆ 未来世界で生き延びるには、会社に所属しているときでも「フリーエージェント」と考えて仕事をすること
この本は、技術革新による働き方の変化に関する様々な書籍をバックボーンとして参考にして引用しながら記されており、その知見はとても参考になります。私が興味深く感じた参考文献を以下に挙げておきます。
この本の巻末には、「誰もが知っていながら報じられない『労働者』以前に『人間』としてなんの権利も認められない非正規公務員の現実」というテーマで、文庫版特別寄稿が掲載されています。とても興味深い日本社会の格差問題の核心が分かります。
本書で提唱している人生100年時代の働き方や人生設計についての考え方は、私が2冊の近著で提唱している「定年ひとり起業」による生涯現役と全く同じコンセプトです。ぜひ以下の拙著を併読いただくと理解がさらに深まります。
この本の締めくくりとし手著者は、以下のメッセージを記しています。
「専門的なスキルを使って『生涯現役』で働けば、年収300万円としても、60歳から80歳までの20年間で6000万円、『生涯共働き』なら総世帯収入は2人で1億円を超えます。一方、定年退職者は年金以外の収入はゼロです。日本でも経済格差が社会問題になっていますが、ほんとうの『格差』は65歳以降に生じるという当たり前の事実(ファクト)に、これから誰もが気づくことになるでしょう。」
私の考え方と100%同じです。そのための会社員なら誰でも実践できるソリューション(解決策)が「定年ひとり起業」なのです。
2022年4月20日、YouYubeチャンネル「大杉郡のYouTubeビジネススクール」【第226回】不条理な会社人生から自由になる方法「働き方2.0vs4.0」にて紹介しています。
ビジネス書の紹介・活用法を配信しているYouTubeチャンネル『大杉潤のyoutubeビジネススクール』の「紹介動画」はこちらです。ぜひ、チャンネル登録をしてみてください。
では、今日もハッピーな1日を!【2731日目】