「私たちは頭の中で、無意識的にナラティブ(物語)を語り続けている。」「頭の中に浮かぶナラティブは私たちの感情をかき立て、個人を、そして社会を突き動かす。」と述べている本があります。
本日紹介するのは、1965年生まれ、『サンデー毎日』記者時代に「最強芸能プロダクションの闇」「少女売春」などをテーマに調査報道、社会部では防衛庁(当時)による個人情報不正使用に関するスクープで2002年、2003年の新聞協会賞を2年連続で受賞した、毎日新聞編集委員の大治朋子さんが書いた、こちらの書籍です。
大治朋子『人を動かすナラティブ なぜ、あの「語り」に惑わされるのか』(毎日新聞出版)
この本は、「ナラティブがいかなる力を持ち、私たちをなぜ、どのように動かすのか」というメカニズムを、著者が調査した記録の書です。
本書は以下の6部構成から成っています。
1.SNSで暴れるナラティブ
2.ナラティブが持つ無限の力
3.ナラティブ下克上時代
4.SNS+ナラティブ=世界最大規模の心理操作
5.脳神経科学から読み解くナラティブ
6.ナラティブをめぐる営み
この本の冒頭で著者は、「日本語で『語り』というと『物語』の意味が抜け落ちてしまうし、『物語』というと『語り』の要素が失われてしまうので、専門家の間では両方の意味を含むナラティブという英語をそのまま使うようになった」と述べています。
本書の前半では、「SNSで暴れるナラティブ」および「ナラティブが持つ無限の力」ついて、以下のポイントを説明しています。
◆ ナラティブは「脳が持っているほとんど唯一の形式」
◆ 脳はできるだけエネルギーを使わなくてよい方に行く
◆ インセル(非モテ)による無差別殺人
◆ 陰謀論ナラティブと被害者ナラティブ
◆ 殉教者ナラティブとAIで「潜在的テロリスト」をあぶりだすイスラエル
◆ 人間の「人生物語産生機能」
◆ 論理科学モードとナラティブモード
◆ WBC勝利で語った栗山監督の「大谷翔平物語」
この本の中盤では、「ナラティブ下克上時代」および「SNS+ナラティブ=世界最大規模の心理操作」について解説しています。主なポイントは次の通りです。
◆ マクロナラティブ(社会・国家)に対抗するマイクロナラティブ(個人)
◆ 宗教2世が語る「毒親」
◆ 心を飛ばす「ナラティブ・トランスポーテーション」
◆「選挙はストーリー」
◆ ナラティブに感染させたケンブリッジ・アナリティカ事件
◆ 心理的に操作されやすい人「ローハンギングフルーツ」
◆ 狙われる「神経症的傾向のある人」
◆ 情報戦を制す「先制」と「繰り返し」
◆ ロシア式=トローリング(荒らし)+ サイバー攻撃
◆ 共感の反対は「無関心」
◆ 米国防総省の「ナラティブ洗脳ツール」開発
◆ 中国の「洗脳権」をめぐる闘いとTikTok
本書の後半では、「脳神経科学から読み解くナラティブ」および「ナラティブをめぐる営み」について考察しています。主なポイントは以下の通り。
◆ デフォルトモード・ネトワークという「ぼんやる」
◆ 温かくてダークな「共感性」
◆ 孤独な脳は人間への感受性を鈍化させる
◆ 脳内の「連想マシン」が操作される
◆「人は物語を生きている」
◆ 書くー自分史はメーキング・オブ
◆ 読むー足りない情報を脳が補う
◆ 聞くー他社の話から未完のパズルのピースが見つかる
◆ ナラティブ・ジャーナリズムというジャンル
◆ SNS時代の社会情動(非認知的スキル)
この本の締めくくりとして著者は、「脳には足りない情報を補う性質がある。情報を伝える手段には『活字』『音声』『映像』などがあり、情報量が少ないほど、想像力はかきたてられる」という、東京大学大学院総合文化研究科の言語脳科学者である酒井邦嘉さんの言葉を紹介しています。
あなたも本書を読んで、不安や怒りを煽り、社会を分断する「情報兵器」にもなるナラティブについて学び、「語り」に狙われ、惑わされないように注意していきませんか。
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では、今日もハッピーな1日を!【3274日目】