「老年をただの余生にしてしまうか、それとも第二の人生にできるかは、好奇心の有無できまる。」と提唱している本があります。
本日紹介するのは、日本女子大学教授、東京大学先端科学技術研究センター特任研究員などを歴任し、現在は作家、宗教学者の島田裕巳さんが書いた、こちらの新刊新書です。
島田裕巳『人は老いない』(朝日新書)
この本は、宗教学者である著者が、「とことん考える、年を取るからこそ成長する」とする “ 老成のすすめ ” の書です。
好奇心は、積み重ねによる「心の新陳代謝」でますます輝き、若さよりも経験がものを言う老年期こそ、その真価が生かされる、と著者は述べています。
本書は以下の9部構成から成っています。
1.老いない道
2.老後は、ない
3.死ぬまで生きる
4.「ご先祖」になる
5.本当の人生は隠居から
6.終活よりも出家
7.子どものこころを失わない
8.老いというチャンス
9.人生には締め切りがある
この本の冒頭で著者は、「老後問題」は新しい問題だ、と指摘しています。確かに、1956年の時点(著者や私が生まれた頃)では、日本人の平均寿命は男性63.59歳、女性67.54歳でした。
定年や仕事を引退してから、何年も経たずに死を迎えるのが平均的な日本人だったので、「老後」の生活や生き方を考えるということが、特別必要なわけではなかった、ということです。
しかし今や、平均寿命は大幅に伸びて、男性80.79歳、女性は87.05歳(2015年)となっていて、これが48年後の2065年には、日本の人口は3割減少するが、平均寿命は男性84.95歳、女性91.35歳になると推定されています。
こうなると、「老後」は30年にも及ぶ長期間になり、この期間をいかに生きるか、という「老後問題」を、私たちは歴史上初めて考えざるを得ない状況になっているのです。
また、「いつから老後をかんがえるようになるか」という問いに対して、本書では「50代に入ってから」という見解を提示しています。とくに男性の場合、50代に入ると急に信仰率が高まるという統計があるそうです。
それまでは宗教になど全く関心が無かったのに、急に関心を持つようになって、お寺参りを始めたりする、と言います。
人生というものは、いつまで生きられるか分からないものから、段階を踏んで予想された道を歩んでいくものに変わった、ということです。
人生90年が普通になれば、人生の道筋が見えてきて、多くの人がその道を確実に歩むようになっているのです。
本書ではその後後半で、次のようなテーマで、「老い」や「老成」について、著者の経験や宗教学者としての知見が披露されていて参考になります。
◆ 民俗学と先祖の話
◆ 隠居とインドの「四住期」
◆ 好奇心と老成
◆ 無縁墓と終活
◆ 出家と仏の世界
◆ 通過儀礼
◆ 老いというチャンス
◆ 信仰の有無
また、この本の最後では、年間死亡者が130万人を数え、ピーク時は160万人と予測される「多死社会」の現状について紹介されています。
さらに、曽野綾子さんの『戒老録』という本で、「自分の老いを戒めるもの」が41歳の時に書かれたと紹介されています。
曽野さんの本からも分かる通り、老いということに立ち向かうとき、信仰を持っているのか、それとも持っていないのかということは、かなり重要な意味を持ってくる、と著者は述べています。
著者の島田さんの経験からしても、不幸な出来事に見舞われたとき、それは自分に対する試練であり、それを乗りこえれば、自分の人生は革新されるという思いが生まれてくる、ということです。
そう思うことができれば、不幸は不幸でなくなり、チャンスになっていくのです。自分を変える、自分を成長させるチャンスになっていくのですが、それは格別根拠があるわけではなく、信仰に近い、というわけです。
そう言う意味で、「老いもまた一つのチャンスである。」と著者は述べています。
あなたも本書を読んで、「老い」や「老成」について考えてみませんか。
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では、今日もハッピーな1日を