単にうまく話すための方法ではなく、社会人として身につけるべきコミュニケーション能力を向上させるための基本的な事柄を体系的にまとめて解説している本があります。
本日紹介するのは、1959年東京都生まれ、システムエンジニアとして大手企業に勤務する傍ら、1989年、株式会社話力総合研究所インストラクター就任、以降、主任講師、理事、指導部長として多くの企業、団体で話力、ビジネスコミュニケーションの講師を務め、現在は一般社団法人話力総合研究所を設立、理事長の秋田義一さんが書いた、こちらの書籍です。
秋田義一『一生使える話し方の教科書 成果が上がる』(現代書林)
この本は、話力総合研究所の顧問・永崎一則の「話力理論」に基づき、若手・中堅・マネジメント職・経営者など、幅広い人たちがコミュニケーション能力を向上させるための書です。
本書は以下の10部構成から成っています。
1.話すことについて考えてみる
2.仕事で成果を上げるための「話力」の磨き方
3.職場で好意的な人間関係を築くために
4.話は「話し手」と「聴き手」の共同作業
5.「感じよく」「正確に」「わかりやすく」
6.傾聴力を磨け
7.ビジネスコミュニケーションの要は説明力!
8.効果的に知らせる報告のしかたを磨け
9.説得力を磨け
10.人を育てる称賛と忠告
この本の冒頭で著者は、日本経済団体連合会(経団連)が毎年行っている「社員採用時に求める資質」についてのアンケート調査において、「コミュニケーション能力」が16年連続で第1位になっていることを紹介しています。
続いて、日常や職場の問題の原因の多くは「コミュニケーションエラー」で、それは「話し方の問題」と「聴き方の問題」であると指摘しています。
本書の前半では、「仕事で成果を上げるための『話力』の磨き方」および「職場で好意的な人間関係を築くために」について、以下のポイントを説明しています。
◆ 成果を上げるための「話し方」(表現力)と「聴き方」(聴解力)を合わせた「話力」
◆「話力」は「心格力」+「内容力」+「対応力」
◆「心格力」とは、温かさ、やさしさ、思いやり、誠実さなど豊かな人間性の基礎となる力
◆「心格力」を高めるには、①話力の原則を実践、②人から学ぶ、③良い習慣を持つ、④忠告してくれる人を大切にする、⑤反省しコツコツ改善
◆「内容力」とは、想像する力、まとめる力、構成する力、判断・選択する力の総合力
◆「内容力」を高めるには、インプットと自分なりに整理し考えをまとめてアウトプット
◆ 「対応力」とは、相手の知識・知識・興味・理解力・意見・立場に応じて話し、相手が話しやすいように聴く力
◆「対応力」を高めるには、①場数を踏んで場慣れする、②問題意識を持って他人を観察し具体的な方法をつかむ、③他人からアドバイスを受ける、④原則を守る
◆ 無意識に相手を無視しない
◆ 好ましい態度が良い関係を築く
◆「思えば思われる」返報性を意識してみる
◆ 好意を持ちやすい条件を生かす
◆ 温かい関心を持って、やさしい気持ちをことばで伝える
◆ 相手の話をよく聴くことが良い関係を築くカギ
◆ 相手の価値を認める「ほめ上手」になろう
◆ 肯定的に受け止め、心を開いて接する
この本の冒頭で著者は、「職場で好意的な人間関係を築くために」、「話は『話し手』と『聴き手』の共同作業」および「『感じよく』『正確に』『わかりやすく』」をテーマに解説しています。主なポイントは以下の通り。
◆ 聴く気にさせる技術は、①聴こえる声で話す、②相手の都合を考えて話す、③注目させる、④予告する、⑤確認しながら話す、⑥相手を知り、相手に対応する
◆ 話の効果は聴き手が決める
◆ 効果を上げる話し手の技術は、①目的を意識して話す、②効果を予見して話す、③必要の法則を守る、④態度に気をつける、⑤ことばづかいに気を配る、⑥すべての原則を守る努力をする
◆ 態度は話の効果を左右する
◆ 話の効果を上げる表現の三原則は、①感じよく、②正確に、③わかりやすく
◆「感じよく話す」とは、①肯定的に話す、②明るく話す、③聴き手に不快を与えないように「快く」話す
◆「正確に話す」とは、①筋道を立てて話す、②具体的に話す、③共通の意味にとれることばを使う、④共通の方法を用いる
◆「わかりやすく話す」とは、①わかりやすいことばを使う、②わかりやすい発音・発声を心がける、③わかりやすい言い方を意識する
◆ 聴解の三原則は、①感じよく、②正確に、③反応を示して
◆ 話は全身で聴く(目・口・手・足・態度・表情・頭・心)
◆ 聴けない原因は、①人間的な原因、②心理的な原因、③内容的な原因、④外在的な原因
◆ 傾聴の心(➀目的を意識、②メリットを自覚、③聴く準備、④メモを取りながら、⑤考えながら、⑥質問・確認・複唱・念押し)を持つ
本書の後半では、「ビジネスコミュニケーションの要は説明力!」、「効果的に知らせる報告のしかたを磨け」および「説得力を磨け」について説明しています。主なポイントは次の通りです。
◆ ビジネスコミュニケーションの6大要素は、①指示、②依頼、③説得、④報告、⑤称賛、⑥忠告で、すべてに共通するのが「説明」
◆ 効果的な説明のしかたは、①予告する、②順序を正す、③わからせるための具体的な工夫をする、④十分に伝わっていないようなら、視点を変えてみる、⑤確認しながら話す「質問する・質問させる」、⑥まとめをする
◆ 説明の受け方は、①何をわからせようとしているのかを「正確に」つかむ、②段落ごとの要点をつかむ、③部分と部分、部分と全体との関係を考えながら聴く、④主要なことばや例を聴き逃さないように聴く、⑤わからないことは質問する
◆「報告」は、相手が知りたがっていること、自分が知らせたいことを正確に、簡潔に、タイミングよく「知らせる」こと
◆ 報告は、5W3Hを把握し、報告点をしっかり押さえること
◆ 報告点とは、相手が知りたがっていること、自分が知らせたいこと
◆ 報告のしかたは、①予告する、②報告点を先に言う、③経過や理由は後で話す、④自分の考えは断って話す、⑤必要の法則を守る
◆ 報告のポイントは、①先入観を持たずに最後まで傾聴、②要点を押さえ、結論をつかむ努力、③質問・確認・念押し、④ねぎらいの言葉
◆ 人生は説得の連続
◆ 説得力を高めるために「心格力」を磨け
◆ 説得は「内容力」で勝負せよ
◆ 説得には「対応力」を生かせ
◆ 作戦を立てよ、道具を持て
この本の締めくくりとして、「人を育てる称賛と忠告」について説明されています。主なポイントは以下の通り。
◆「称賛」と「忠告」は、人材育成のための機能
◆ 相手基準でほめるには、①事実を具体的に、②タイミングよく、③オーバーにならない、④相手の気づかない点、⑤間接的に
◆ ほめられ上手になるのは、①素直にお礼を言う、②やたらに否定しない、③調子にのらない
◆ 情熱と冷静の間で叱れ!
◆ 効果的な忠告のしかたは、①比較しない、②追加忠告しない、③すりかえない、④追いつめない、失望させない、⑤忠告後に気をつける
◆ 叱られたら、①感謝の気持ちを持つ、②素直に詫びる、③やたらと抗弁しない、④責任回避しない、⑤合理化しない、⑥強がりを言わない
最後に著者は、「話力理論を伝える技術を磨くこと」を」目指すとして、次のメッセージを届けています。
「話力を広め、話力を深め、話力を磨く」
あなたも本書を読んで、一生使える成果が上がる話し方が身につく「話力理論」を学び、実践してみませんか。
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では、今日もハッピーな1日を!【2663日目】