「どうしたら『考える組織』をつくることができるのか?」多くの日本企業・組織が直面する課題は、煎じ詰めると、この問いに行きつきます、と述べている本があります。
本日紹介するのは、1964年生まれ、立教大学大学院文学研究科教育学専攻修士課程修了、ロンドン・ビジネススクールSEP修了、大手私鉄会社勤務を経て、2000年よりグロービスに参画、グロービス経営大学院教授の吉田泰文さんが書いた、こちらの書籍です。
吉田泰文『ファシリテーションの教科書:組織を活性化させるコミュニケーションとリーダーシップ』(東洋経済新報社)
この本は、「ファシリテーションとは何か」を論じた後、優れたファシリテーターになるための2大要素である「仕込み」「さばき」を骨格に、大きく2部で構成されている書です。
本書は、「仕込み」および「さばき」の2部に分けて、以下の11項目から成っています。
1.ファシリテーションー変革リーダーのコアスキル
2.議論の大きな骨格をつかむ
3.参加者の状況を把握する
4.「論点」を広く洗い出し、絞り、深める
5.合意形成・問題解決のステップファシリテーションを実践する
6.発言を引き出し、理解する
7.発言を深く理解する
8.議論を方向づけ、結論づける
9.対立をマネジメントする
10.感情に働きかける
11.ファシリテーションは「合気道」
この本の冒頭で著者は、「ファシリテーションは、さまざまな思考とコミュニケーションの力を総合して実践することが求められる高度な技術です。」と述べ、「しかし、正しい理解に基づいて訓練を繰り返せば、誰でもその能力を向上させることができます。」と続けています。
本書の序盤では、「ファシリテーションー変革リーダーのコアスキル」と題して、「ファシリテーションとは何か」を論じています。主なポイントは以下の通りです。
◆ ファシリテーションはリーダーシップ発揮のための中核スキル
◆ ファシリテーションはコミュニケーションスキルを超え、「リーダーシップのあり方そのもの」に1つの重要な方向性を指し示すもの
◆ 組織メンバーの「腹落ち感」を生み出すファシリテーションがが大切
◆「腹落ち」とは「目的と理由」を深く理解し、「具体的なあるべき姿」を自ら描き、「ワクワク感や当事者意識」を持てるレベルまで納得すること
◆ ファシリテーションは難易度が高く、事前に充分な「仕込み」と、議論の場で参加者の思考を適切に導く「さばき」の技術が必要
◆ ファシリテーターには、「問題解決」「構造的な話の理解」ができる思考力が必要
◆ ファシリテーターには「人の可能性を信じ、意欲、能力、知恵を引き出す」という基本姿勢が不可欠
◆ ファシリテーター型変革リーダーが求められている
この本の前半では、「議論の大きな骨格をつかむ」「参加者の状況を把握する」「論点を広く洗い出し、絞り、深める」および「合意形成・問題解決のステップファシリテーションを実践する」について、次のポイントを解説しています。
◆ ファシリテーションの「仕込み」とは、「議論の出発点と到達点を明確にする」「参加者の状況を把握する」「議論すべき論点を洗い出し、絞り、深める」の3点を行うこと
◆ ビジネスでの合意形成とは、①目的共有、②アクションの理由の共有・合意、③アクションの選択と合意、④実行プラン・コミットの確認・共有の4ステップ
◆ 参加者の状況把握とは、①認識レベル、②意見・態度に加えて、参加者の特徴と相互関係を押さえておくこと
◆ 論点は「広げる」⇒「絞り込む」⇒「深める」の順番で進める
◆ 頭の中に「論点の地図」を持っておくのが「仕込み」のゴール
◆ 最初に「場の目的」を共有する
◆ 問題解決の思考ステップ:問題意識の明確化(What)⇒ 問題箇所の特定(Where)⇒ 真因の追求(Why)⇒ 対策の立案・実行(How)が大切
◆ 問題意識の明確化では、あるべき姿と現状のギャップを明確にする
◆ 原因を考えることは難しく、広げて、絞り込み、深めることで探っていく
◆ アクションの選択と合意では、基準を決め、実行プラン・コミットを忘れずに
本書の後半では、「発言を引き出し、理解する」「発言を深く理解する」「議論を方向づけ、結論づける」「対立をマネジメントする」および「感情に働きかける」について説明しています。主なポイントは以下の通り。
◆「さばき」の技術とは、参加者の意見を引き出し、適切に導くための技術
◆「さばき」においては、ファシリテーターは主役ではなく控えめな言動を
◆「発言を引き出す」⇒「発言を理解し共有する」⇒「議論を方向づける」⇒「結論づける」が「さばき」の基本ステップ
◆ 発言を引き出すには、ファシリテーターが「ほんとうに聴きたい」という姿勢を
◆ 発言を理解し共有するのは、①発言を聴き理解する、②発言を受け止めたことを発言者に示す、③理解を確認する、④参加者全員が発言を理解できるようにする、という基本動作を繰り返す
◆ ファシリテーターは「発言を深く理解する力」を訓練し、高めておく
◆「深い理解」のためには、演繹的・帰納的な議論で根拠づけられる「議論の三角形」を
◆ 発言の欠落部分を問いかけて確認していく
◆「今ここで議論すべきかどうか」が最大の判断基準
◆ 議論の方向は「広げる」「深める」「止める」「まとめるの4つ
◆ 議論をまとめる、結論づけるときは、決まったことと決まっていないことを明確にし、「条件つき合意」を形成する
◆ 意見の対立の背後にある「対立の理由」を明確にする
◆ 対立に対処するのは、それぞれのメリット・デメリットを認識させ、バランス良く考えられるようサポートする
◆「判断基準の違い」が対立の原因なら、目的やあるべき姿に立ち返って合意を引き出す
◆ 対立の背後にある感情に気を配る
◆ 議論の初期段階で、創造的・活発・安心感がある雰囲気づくりを
◆「ネガティブ」や「無関心」という感情を表に出させて、感情を刺激する
◆「集団」の進化ステップは、「烏合の衆」⇒「対立」⇒「団結」⇒「変革」
この本の締めくくりとして著者は、「ファシリテーションは合気道」であるとして、ファシリテーションの「2つの道」を次の通り提示して説明しています。
1.しっかりコントロースする
2.極力コントロールしない
前者では、「スピーディーに結論が出る」「話がずれる/混乱するリスクが少ない」というメリットがある一方、「参加者が自分の意見が十分に反映されない」「進め方が強引という反発される」というデメリットが存在します。
一方、後者では「自分の意見が十分に反映された」「納得のプロセスで決定事項に高いコミットメントが得られる」というメリットがある一方、「議論に時間がかかる」「コントロールを失うと泥仕合になる危険性」というデメリットも出てきます。
ファシリテーションの究極の目的は、上記のどちらの道があることを認識し、どちらも選択・対応できるようにして、最終的には、「ファシリテーターのリード、コントロールがなくとも、参加者自らが生産的な議論の場を創造し、実りある議論ができる」ことです。
そういう意味で、「ファシリテーションは合気道」であるということです。
あなたも本書を読んで、組織を活性化させるコミュニケーションとリーダーシップの中核となる「ファシリテーションの本質とスキル」を学び、実践してみませんか。
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では、今日もハッピーな1日を!【2912日目】